賢者ではない男からの贈り物
ギア
賢者ではない男からの贈り物
🍖:【肉】
🏃:【走る】
🚨:【ランプ】
⛄:【雪だるま】
🎿:【そり】
🚀:【ロケット】
🍣:【寿司】
🍢:【おでん】
🍲:【鍋】
🍘:【せんべい】
🍥:【なると】
🍥:【なると】
m--)m:【謝罪】
⊂(^(工:【慰め】
( `・ω・´)ノ:【元気】
🐣:【誕生】
🐺:【キツネ】
🐟:【魚】
🐽:【ぶた】
🐹:【ネズミ】
🐍:【蛇】
🐬:【いるか】
🐽:【ぶた】
🐞:【てんとうむし】
🐝:【はち】
🐛:【むし】
🐛:【むし】
🐌:【かたつむり】
✏:【ペン】
💽:【データ】
🎥:【動画】
🎤:【マイク】
🔝:【トップ】
🆗:【おけ】
🆔:【ID】
🆕:【ニュー】
🆚:【ブイエス】
💌:【ラブレター】
💌:【ラブレター】
📧:【封筒】
🆖:【エヌジー】
🌕:【つき】
🍁:【カナダ】
🎒:【鞄】
💘:【胸の痛み】
💖:【慈愛】
💚:【失恋】
❤:【ハート】
✨:【明かり】
❇:【星】
✊:【拳】
🎵:【音楽】
👀:【目】
👅:【嘲笑】
‼:【驚き】
♀:【男】
♂:【女】
やっぱり肉だな、金が入ったらまず肉を食おう。【肉】
走り始めてからあっという間に息の上がってしまったこの体力のなさは、ろくなものを食えていない最近の食生活のせいに違いない。【走る】
冬の冷たい空気の中で白い息を吐き出しながら、現実逃避するようにそんなことを考えていた俺の駆け足を止めたのは大通りに見えた赤く回るランプだった【ランプ】
路地裏に並ぶ民家の1つ、その軒先に立っている巨大な雪だるまの影に咄嗟に隠れる。【雪だるま】
思わず隠れてしまったが、もっとも俺を追っているのは官憲の白黒の車などではなく、そりの入った怖いお兄さんたちが乗り込んだジープだ。【そり】
勝手に借りた金は返さなければいけない、なんてことは分かっているが、ないものは返せないに決まっている、そうだろう、と胸元のロケットを握りしめる。【ロケット】
凍るように冷たいはずの金属の温度が分からないほどに手がかじかんでいることに気づき、寿司職人はネタが温まらないように氷水で手を冷やすんだったか、とどうでもいい雑学を思い出す。【寿司】
どうせ食い物のことを考えるならもっと温かいものにしろよ、そう例えばとおでんが浮かんだのは、通りの向こうにコンビニが目に入ったからだった。【おでん】
まったく、この大みそか、本当だったらあの四畳半のこたつで、来年こそ何かデカいことをやるか、と本気で思ってもいない来年の抱負を内心誓いながら一人鍋をしていたはずだ。【鍋】
見切り品の野菜ばかり入った鍋を空にしたら、重ね着できるだけ重ね着してせんべい布団にしがみつくように横になって朝を待つ。【せんべい】
今年もそんな大みそかになるとばかり思っていたのにな。【なると】
まさか、こんなことになるとは、と自嘲的な笑いを浮かべる。【なると】
私のせいでごめんなさい、という謝罪の声が胸元のロケットから聞こえた気がした。【謝罪】
幻聴だと分かっていたが、慰めにはなった。【慰め】
元気が出たよ、とわずかに湧いた気力に感謝しつつも、幻聴まで聞こえてくるとは、さすがに何か腹に入れないともたないな、と周囲に追手の影がないことを念入りに確認してから、ついさっき目に入った通りの向かいのコンビニへと足を進めた。【元気】
つい一週間前まで西欧の救世主の誕生日祝い一色だったはずのコンビニは、バテレンの祭りなんて興味をもったこともないといわんばかりに大みそかと正月の準備に大忙しの店内になっていた。【誕生】
店の入り口すぐそばに臨時で出されたとおぼしきテーブルには、キツネとタヌキが 描かれたインスタントそばの容器が山積みにされている。【キツネ】
追手を気にして振り返った外の景色はまるで魚の水槽のように暗く冷たく、暖かみの欠片も感じさせない風景だった。【魚】
それで思い出した店内の暖気に気が緩み、下がりそうになったまぶたを必死に押しとどめる。【ぶた】
こんな入り口が一つしかないコンビニでうたたねしていて追いつかれたりしたら袋のネズミだ。【ネズミ】
ただでさえ蛇のように執念深い奴らが相手だというのに。【蛇】
そのとき、いるかどうか分からないほどに気配のない、若い男の店員のいぶかしげな目線に気づいた。【いるか】
確かにコンビニというこの狭い舞台のたった二人の登場人物の片割れだ。【ぶた】
他に客のいない店内、出歩いている人もいない店外、商品を並べきってする仕事もない店頭、無視するわけにも行かないだろう。【てんとうむし】
もたもたして追手と鉢合わせする危険を冒すのはバカバカしい。【はち】
湿った衣類のせいで若干蒸してきた服の中の熱気を軽くはたいて逃がしながら、俺は何を買おうか急いで選び始める。【むし】
調理する必要のあるものを無視して、すぐ食べられるものを探し、飲み物と一緒にプラスチックかごに放り込んだ。【むし】
手慣れた様子でバーコードリーダーを当てているはずの店員の手元が、まるでかたつむりの這うようにもたついている気がした。【かたつむり】
それでもおでんを注文することだけは我慢できず、汁が浸みていそうな大根とハンペンを頼んだ。【ペン】
レジの操作を見ていて、ふと思い出す。そういえば店員は、年齢や性別とか、来店した客のデータを打ち込むんだっけか。【データ】
少し不安になったが、それが理由で追手にバレるわけがないだろう、それだったら監視カメラの動画を確認される心配をするべきだな、と自分の弱気すぎる想像に苦笑いする。【動画】
ビニール袋を手に店外へ出た俺は、もう片手でロケットを握りしめると、今いくからな、と心の中で声をかけた。【マイク】
とっぷりと暮れに暮れた大みそかの闇夜、それも住宅街ということもあってほとんどないことが分かっている人目を、それでも避けるように俺は路地裏を選んで目的地へとおそるおそる進んでいった。【トップ】
菓子パンやペットボトルの飲み物は歩きながらでもそれほど苦労せずに飲み食いできたが、さすがに容器を置ける場所なしにおでんを食べるのは大変だった。それでもなんとか目的地である病院に辿り着く前に食べ終えることができた。【おけ】
病院の敷地内に入る前にゴミを入れたコンビニ袋を放り捨て、前に見舞いに来た時に看護師の控室からくすねておいたIDカードを使って病院の裏口から中に入った。【ID】
入院患者たちが寝ているはずの病室へと向かう前に、まず野暮用を済まそうと病棟ではなく事務室などが並ぶ一階の廊下を静かに進んだ。【ニュー】
キリスト教徒なら呼ぶイエスの名のような、祈りを捧げる何かをもたない俺は、誰の力を当てにするでもなく、見つからないようにするにはただ周囲への注意を怠らないでいるしかなかった。【ブイエス】
しかし宗教家というのはあれだな、届きもしないと分かっているラブレターを毎日、毎週のようにしたため続ける片思いの権化だな。【ラブレター】
その点、俺はもっと直接的に有用なラブレターを持ってきたわけだ、と胸元の札束を服の上から握りしめる。【ラブレター】
茶色い封筒をはち切れんばかりに満たしているそれは、俺の愛を成就させるためには十分な量のはずだ。【封筒】
そのとき、忘れようとして忘れ得ぬジープのブレーキ音が病院の外から聞こえた。【エヌジー】
ツキもここまでか。【月】
止まったかと心配になるほどに高鳴る胸を、おいおい大丈夫か、なだめるようにそう軽くありもしない余裕を持って叩いてやる。【カナダ】
金を奪ったあと、必要最低限な荷物だけポケットに突っ込み、邪魔になる鞄を置いてきたことにあらためて感謝する。【鞄】
息切れのせいか、不安のせいか、とにかく襲い来る胸の痛みをこらえながら一階での用事を済ませると、俺は階段へと走った。【胸の痛み】
慈愛に満ちたあの笑顔の待つ病室へ。【慈愛】
失恋しに行くようなものだということは分かっていた。【失恋】
それでも最後に未練なく死ぬには、あとたった一つ、しなくてはいけないことがあった。【ハート】
目的の階に辿り着いたとき、しかし目的の病室の階に、点いていてはいけないはずの明かりが見えた。【明かり】
その輝きは、キリストの生誕を見届けようと東方の賢者たちが目指した星とはまったく違う、近づいていけない禁忌の光だった。【星】
服の胸元を強く拳で握りしめる。【拳】
滴り落ちる冷や汗と痛む心臓とは裏腹に、俺の心には穏やかな、そうまるで礼拝堂で流れるような音楽が満ちていた。【音楽】
病室から出て来たそりの入った髪型の男たちの目は笑っていた。【目】
しかしその目に浮かんでいた嘲笑の色はすぐに消え失せた。【嘲笑】
かわりに浮かんだ驚きはあまりに余裕を見せる俺の姿にだったのか、外から聞こえるパトカーのサイレンの音だったのか。【驚き】
男たちが俺をどれだけひどい目に遭わせるかは分からなかったが、おそらくは俺がここに来るまでに一階で何をしたかを吐かせるには間に合わないだろう。【男】
女の手術代を手紙と一緒に看護室の控室に置いてきたこと、こいつらが来るであろうことを読んで警察に自ら通報したことを吐かせるには。【女】
賢者ではない男からの贈り物 ギア @re-giant
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