おばちゃんと私とハンカチ

月臣 八雲

第1話

「はぁ…はぁ…っ」

いつもと同じ、二度寝をしてしまった私は小さくなりつつあるランドセルをからって走っていた。

頭では分かってる二度寝をしなければ、朝から猛ダッシュしなくていいし、朝ごはんも食べれる…でも睡魔にはどうしても勝てないのが現実。

「ことちゃんハンカチ!」

不意に声をかけられ後ろを振り向くと田んぼを抜けた先で見守り活動をしてくれているおばちゃんが原付バイクを止めているところがうっすらと見えた。

ハンカチ落としたんだ、取りに行かなきゃ…

そぉ思っていると

「あとから渡すけん急ぎない」

私はまた走り始めた…

少しすると友達もチラホラと見え始め上がり切っている息を整えながら歩き始める。

森の横を通って、田んぼ道。

やっとおばちゃんが見えてホットする。

「ことちゃん今日も二度寝ね?」

と、笑顔で言うおばちゃん。

確かに毎日のように二度寝をしているがそれを面と向かって言われるとやっぱり恥ずかしい。

私は話題を変えようと、おばちゃんの質問には答えず「ハンカチ」と言った

「そぉやったね、もぉ落としたらダメやかいね」

そぉ言ってハンカチを渡してくれた。

それから2年、卒業と同時に家を出るのも早くなり、学校への道も変わっておばちゃんには会うことがなくなった。

小学生の時は当たり前だったおばちゃんとの会話が当たり前じゃないことに気づき少し寂しくなった。

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おばちゃんと私とハンカチ 月臣 八雲 @TukiomiYakumo

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