第2話

 まず最初に聞いたのは個体名ユキのイヨ型ユーグレイマン。あ、○○型というのはあたし達の血筋みたいなものね。あたし達は細胞分裂で個体を増やすから、同じ顔が増える。その顔が○○型で呼ばれる部分。試作一号だったあたしがこの子達の母体でもあるということも示している。


 因みにどうやって個体名を見極めているかというと、それはもう服装でしかない。あたし達の髪には葉緑体が結集しているので全員緑の髪をしているという共通点があるものの、姿形は人間とさして変わらないから服を着ることができるのだ。


 あたしは赤を基調とした小袖を着ているし、ユキはふわふわとした淡い桃色のワンピース。胸元には念のために名札も付いている。


「ユキに質問するわ。あたしは雌雄どっちだと思う?」

「どうしたのいきなり」

「ちょっとね。で、どっち?」


 ユキはさして考えた風でもなく気楽に答える。


「まぁ、あたしは雌でいいと思うけど。ほら、着てる服がそれ女物なんでしょ? なら雌じゃないかな」


 そうか、雌なのか。ありがとうユキ、参考になった。

 と、そこで別のユーグレイマンが通りかかる。あたしは感謝の言葉を言うと、慌ててそちらを追った。


◇◇◇


 通りかかったのは個体名・猪狩いかりにしき型ユーグレイマン。日本出身系統の子だ。猪狩の服装は海賊っぽい。錦はあたしの二つ後の系統で、錦本人は鯉っぽい色合いの浴衣を着ている。

 あたしもそうなのだが、日本系統の母体は和服を着ていることが多い。ていうか、母体は作られた国の伝統衣装を着ていることが多いのだ。世界初のユーグレイマンであるあたしも日本系統だからもちろん和服。誇っていいんだよ日本。


「なんだ、イヨさんですか」


 うーむ、海賊衣装と敬語のミスマッチが素晴らしい。


「ねぇ、猪狩。あたしって雌と雄どっちだと思う?」

「は? 何ですか、いきなり。……んー、でも、僕らよりは女よりだとは思いますよ?」


 そう言ったとき、噂をすれば何とやら、ひょっこりと錦本人がやってきた。おー、やっぱり顔は瓜二つ。さすが系統が同じなだけがある。


「何やってるんですか、猪狩とイヨさん」

「ちょっと聞き込み。錦、あたしって雌雄どっちだと思う?」

「は? 何ですか、いきなり。……んー、でも、僕らよりは女よりだとは思いますよ?」


 全く同じ解答で脱力だ。んー、あ、でも。ということはあたしの系統の子の解答があたし自身の思っている答えになる可能性もあると言うことで。


 てことはユキの言葉がいいのかな。錦系統もそう言ってくれたことだし。


 と、思った所にまた一人ユーグレイマンが通る。あたしは最後の聞き込みだと思ってそいつに聞き込みをしにかかった。


◇◇◇


「やっほー、カナメ! 会いたかったわっ!」

「げ、イヨのババア!?」


 きゃほー、あたしらのアイドル・カナメたんみーつけたっ!


 個体名・カナメのユーシス型ユーグレイマンはショタショタな男の子で、服装はチェックのハーフパンツに白のブラウス、シックなジャケットにネクタイというこりゃもうかっこかわいい貴族子弟スタイル。ユーシス自身はイギリス出身系統でカナメによく似た服装をしている。いや、この場合カナメがユーシスの服装に似ているのか。


 ぎゅーっと暴れるカナメを抱え込んでから、あたしは尋ねた。


「ねぇ、あたしって雌雄どっちだと思う?」

「男だ男! じゃなきゃこんなに凶暴じゃ……いでででで、たいむたいむ!」


 なーんだか不穏な言葉が聞こえたので、抱える腕に更に力を込めてみました。ふふふ、もうカナメったらお茶目なんだから。


「まったく、そんなんだから男……」

「なんか言った?」

「ひぃぃぃぃぃぃ! なんでもないっす! イヨは女だっ」


 正直でよろしい。


 さて、カナメからも言質げんちを取ったことだし? これであたしは女ということでいいのかな。


 ふふふ、ということは先生にチョコレートを贈ればよいということで。さてさて、少しでも早くおいしいチョコレートを作って持って行ってあげなくちゃ。



 ところでチョコレートってどうやって手に入れるの?

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