翡翠/真理
「く、空間固定魔法?」
「うん、空間固定魔法と時間停止魔法ね
そうだなぁ……せっかくだから、リギルたちにも教えてあげようか」
メルはそう言うと結界を解除して拘束魔法を受けたままのエルナたちに近づき、魔法を解除するのと同時にリギルの毒を抜いておく
暫く体の中の魔力を乱されていたエルナたちは少しふらついたものの、一分もすればすっかり調子を取り戻した
「さて、どこから話そうかな」
疲れたのかふわぁと欠伸をしながらそう話始めるメルからは、さっきの戦闘中のような覇気はなく、いつもの眠たそうな感じがする
そのギャップにリギルたちは苦笑した
まぁ、今更なにを言ってもメルの眠そうな感じは変わらないのだが
「そうだなぁ……じゃあまずか、魔法について僕なりの解釈を話すこところから始めようかな
魔族のみんなは暇かもしれないけど、すこしでも知識欲があるんなら聞いておいたほうがお得だよ」
「余計なお世話だ!」
「そっか。じゃあそっちが何喋ってもこっちには聞こえない魔法かけとくね
邪魔されても嫌だし」
メルはそう言うと、息をするように魔法を行使する
なお、
「魔法について、ですか?」
「そ、魔法について」
おそるおそるといった様子でメルに問いかけるスハルに、メルは頷く
「そもそも、魔法って言うのは何かわかる?」
「魔力を燃料として様々な事象を起こすこと。魔力の量と魔力に与えたイメージで起こる現象の内容と規模が確定する」
「さすがスハル。だいたい正解だよ
そう、魔法というのはイメージを魔力に与えることで成立するんだ
なら、どうして属性や適性なんてものが存在するんだろうか
イメージでどうにかなるんなら、属性の範囲外のこともできておかしくないよね?」
メルのその問いかけに、誰も反応できなかった
答えなんか知らないし、そんなことを考えたこともなかったのだ
考え込むリギルたちだが、メルはすでに答えを持っていた
「なんで属性の範囲内のことしかできないのか
それは、そもそも魔力が万能ではないから
魔力というのは確かに僕たちのイメージで何をするか決めるけど、何でもできるわけじゃないのはこれが答え
まぁ、詠唱なんかはイメージでは再現しきれないものを補ってくれたり、イメージを省略してくれたりするんだけど、それはいったん置いておこう
魔力が万能ではない。これはどういうことか。例えば、時間を計る魔法なんかは創れないし、敵だけ自動で迎撃するなんて便利なことはできないよね?
なんでこれができないかって言うと、単純に魔力にそんなことをする機能がないから
魔力には『燃やす』『液体を操作する』『気体を操作する』『固体を操作する』『凍結させる』『形を変えて伝える』『放出』『吸収』『元に戻す』『力を与える』って機能しかない
今言った機能のことを僕たちは『火属性』『水属性』『風属性』『土属性』『氷属性』『雷属性』『光属性』『闇属性』『回復属性』『身体強化』って呼んでるんだけどね
あ、燃やすとか操作とかはある意味『力を与える』って言う意味では同じだから、火と水と風と土は基本属性って呼ばれるんだ」
そこまで話すとさすがに疲れたのか、ふぅっと息を吐くメル
メルがそうしている僅かな間に、リギルたちは必死で話の内容を理解しようとする
だが、そもそも天才肌のメルはその考える時間の必要性があまりわからないので次々に話してしまう
まぁ、そもそもメルが魔法オタクなせいもあるのだろうが
「つまり、個人が使える属性って言うのはいわば、『魔力に命令できる内容』のこと
魔力にイメージを与えると魔法が使えるって言うのは、魔力ができる範囲で機能を使ってるから
まず、ここまでが魔力と魔法の話ね
で、さっき魔族と僕が使った時間停止魔法と空間固定魔法の話をするよ
さっきの理屈で言うと、時空に干渉する魔法はないかもしれない
でも、僕と魔族は確かに使った。それは、何でだと思う?」
「……凍らせた?」
「大正解!さすがリギル伊達に年食ってないね」
「言い方に気をつけろ!」
「ごめんごめん
で、凍らせたっていう話だけど、正確には『時間を凍らせ』て『空間を固定した』が正解かな?空間のほうを止めたのは土属性の応用ね」
「じゃ、じゃあもしかして他の属性でも時空に干渉することができる!?」
「おお!ミルファがアホじゃない!
その通りだよ!
光と闇と回復、身体強化以外は時空に干渉できるんだ
具体的に言うと、火属性をうまく使うと『ある地点とある地点の距離』を燃やすことで空間転移ができて、水を使うと『時間の流れ』を動かせる。風は『空間』そのものを動かして、土は『空間』を固定する。氷は『時間の流れ』を凍らせて、雷は『時空』を超えて情報や魔力を伝えることができるってこと
僕がついさっき魔族の時間停止魔法に対応したのは、水属性で時間を無理やり動かすっていう魔法を、雷魔法で数秒後に伝えることで時間を止められた後に効果が発揮されるようにしたから
これで、時空の操作に関する話は終了」
メルの展開の早く新たな情報が多い話についていくのはかなり難しいが、優秀なクランメンバーは何とか理解できていた
まぁ、所々わかりにくいところもあるのだが
「じゃあ、何か質問はありませんか?
別に、今話した以外のことでもいいよ~」
完全に魔族のことなど眼中にないといった様子のメルは呑気にそんなことを言う
まぁ、当の魔族も今のメルの話に唖然としているせいで魔法を使ってやろうとかといった考えはなくなっているので問題はない……はず
「じゃ、じゃあ、オイラから一つ聞いてもいい?」
「おお、アルが質問って珍しいね。いいに決まってるじゃん」
「……メルさんの『夜霧』は、どういう原理なんですか?オイラも、使えるようになりますか?」
刹那、その場の空気が完全に包まれる
それも当然だ
むしろ、メルが最強と謳われる所以の一つである『夜霧』の正体が聞けるかも知れないというのに緊張しないほうがおかしい
全員の熱い視線を受けたメルは、悪戯っぽく笑ってこう答える
「使えるも何も、君たちはもう使うための下準備が大体終わってるよ?」
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