偏差値16 岩山で   古代竜ゲルド

 「はあ?昨日の夜パンドラ様がきたぁ?」


次の日の朝、カグツチさん達にパンドラ様が来たことを伝えた。


「私の所には来てないぞ?」


「俺からカグツチさん達に伝えるように、と。」




「パンドラ様め。私のところに来たら炎でやられるってことがわかってたんだな。チッ。」


チッて。燃やすつもりだったのかな。




「君たちを教えるのに夢中になって忘れてたけど、パンドラ様が最後に来てから約一ヶ月経ってるんだよ?遅すぎじゃない?今から召喚して焼いてやろうか?」


「神様を焼いちゃダメです!」


「そうか?」




「方法がわかったらしいですし、岩山に行きましょう!」


「ふーむ。岩山か・・・」


イハサクさんがなにか考えている。


「その前に畑仕事だね♪」


ミツハさんが盛り上がる俺達に割り込んで笑顔で言う。


「「「「あ・・・・はい。」」」」




いつも修行に行く前に畑仕事を手伝っている。


例えば雑草抜き。


カグツチさんは火で燃やし、ヤマツミさんは雑草を移動させる。俺の場合中等魔法「エア・カット」で切りまくる。


ケイがやる時は・・・体力づくりだと言ってただただ草を抜く。腰に効くそうだ。剣士だし、いいんだがその後俺に変わる時、腰が痛い。無理してんじゃないのか?




土を耕すのもする。イハサクさんが魔法で一気に耕す。俺も魔法の練習でやるのだが、俺がすると耕しすぎて、土がフッカフカになってしまう。加減がわからないんだよな。




水やりもする。基本的にミツハさんがやってしまうのだが、水属性魔法の練習として俺も手伝う。


ミツハさんは川の水を玉にして空中に浮かせ、それを畑まで持ってきて水を撒く。


俺は中等魔法の「ウォーター・ホース」で水を撒く。「ウォーター・ホース」はその名の通りホースで水を撒くように水を出す魔法だ。魔力量を調節することで水圧を調節できる。本来の使い方は魔力量を多くして高水圧の水を相手に当てる魔法だが、水やりに使えるほど水圧を弱くする、魔力量を少なくする訓練をしている。




ヤマツミさんは植物魔法が使えるので、作物の成長速度を上げている。あまり成長速度を上げすぎると作物が疲れ、食べる部分(実の部分など)が小さくなるので適度に成長させている。俺がやったら、植物が肥大化してしまったので、あまりやらないようにしている。生き物を扱うのは難しい。




・・・まあこんな感じで畑仕事をいつも手伝っている。村の人達には大いに喜ばれて、仕事の速さが倍以上になったそうだ。でも、客観的に見ると結構すごい光景だ。この世界の人達は慣れているのだろうか。




「じゃあ終わったし、岩山に行こうか?」


「そうですね。行きましょう。」






村の近くにある岩山は、「ギルガ山」という山で、本当に岩しかない。少し雑草が生えている程度のザ・岩山、という感じだ。




「はあ、はあ・・・ここに何があるんですかね?魔力を減らす方法って何なんでしょうか?」


「こら!ケイ!山を登るくらいで息を切らすな!」


「ええ!この山登るの結構キツイんですけど!」


カグツチさん厳しっ!俺が登るとすぐに息が切れて歩くのが遅くなるのでケイに登ってもらったのだが、流石にケイにとっても疲れるみたいだな。




「ほら!頂上についたら持ってきた弁当を食べようよ!あと半分なんだから!」


なぜかマインもついてきた。ミツハさんとマインだけはピクニック気分みたいだ。


「今日は私も料理を作ったんだからね!」


「マインの手料理ですか・・・いらないです。」


「なぁにぃ~!昔は食べていたのに~!」


「あの時は子供だったからです!今は嫌です!」


喧嘩するな。それよりも俺の魔力を減らすのが先だ。








ーーーーーーーーーーーーーーーー頂上近く。




「あ~~~!!やっと頂上ついた~~!!」


「はぁ・・・はぁ・・・やっと着いたね。」


「でもパンドラ様はここでどうやって魔力を減らすんだろ?」




「・・・ワシに心当たりがある。付いてきてくれんか?」


イハサクさん?


「?はい?」




ちょっと降りてイハサクさんについていくと・・・


「ここじゃ。」


ちょっと開けた場所についた。平らな場所で、広さは修行場の半分くらい。




「この山にこんなところがあったんですね。」


「うむ。たぶんパンドラ様はこの岩のことを言っているんじゃないか?」


「?」


イハサクさんが指差す先に巨大な、横長の丸い岩があった。




「大きな岩ですね。これは何なのですか?」


「ソウタ。触れてみぃ。そうすればわかるぞ。」


「? わかりました。」


近づいて、触ってみると・・・




「うぅっ!?」


力が、抜けるっ!体の中の何かが、吸い取られるみたいだ!手を離すこともできない!


「ぐうぅっ!こ、これは・・・どういうことですかっ?」


「ソウタ、もうちょっと耐えるんじゃ!」


「ちょっとイハサク!何がソウタくんに起こっているのよ!なんなのあの岩は!」


「大丈夫じゃよ。ミツハ。黙ってみていろ。」










「はあ、はあ・・・。」


吸い取られるのが終わった。


「・・・始まる。」


イハサクさんがそう言うと、岩にヒビが入り、ポロポロと崩れだした。


「え?どういうこと?何なの?」




岩の表面が崩れ落ち、中からある生・き・物・が出てきた。






その生き物は、黒く、大きく、翼はコウモリのようだが巨大で、、爬虫類のような皮膚、尻尾が長く、四本脚で何でも破壊しそうな大きな爪を持ち、頭には槍のように尖った角が二本、鰐よりも恐ろしい顔で見ただけで震え上がるような大きな牙を持つ。




「竜ドラゴンだ。岩の中から、竜が。」




その竜は丸くなって寝ていたが、瞳をゆっくりと開き、こちらを見た。




「・・・人間か。・・・お主は誰じゃ。我が眠りを覚ましたのは、お前か?」


ひぃ!喋った!え?俺に話しかけてる?皆は?・・・後ろに離れて隠れてる!いつの間に!


「・・・おい。お前だ。質問に答えろ。」


「は、はい!何でしょう!」




「お前は、何の目的で我を起こした。目的を言え。」


「目的っていうか。岩に触ったら、なんか吸い取られて・・・貴方様が目覚めちゃった、って感じです!」


「・・・何の目的もなしに、我を起こしたのか。・・・。本当みたいだな。・・・いいだろう。少し我と遊ばないか?」


「遊ぶ?」


俺がそういった瞬間、竜が火を吐いてきた。




「うおっ!」


とっさに魔法障壁を出して、防いだ。


「ほう。これを防ぐとはな。これはどうじゃ?」


手で近くにあった大人サイズの岩を投げてきた。


(これは魔法障壁では無理だ!ケイ!頼む!)


(わかりました!)


ガッ!


「お?まともに食らったのう!」






「いいや、食らっていませんよ?」


岩がピシピシと割れる。身体強化で岩を受け止め、割ったのだ。




「ほう?人間のくせにやりおるのう。これではどうじゃ?」


竜は飛び上がった。


「くう!すごい風ですね!」


(あんな巨体が飛ぶんだからな。すごい風になるはずだ。)




「上からはどうじゃ?」


竜は上から水のブレスを吐いた!


(ソウタ!頼みます!)


(おうよ!)


水の量がすごいな。大きめの障壁を張るか。


「大魔法障壁!」


上方向に大きく、厚いバリアを張る。




「ぐうっ!すごい勢いだ。さすが竜のブレスだな。」




水ブレスをなんとか防いだが、


「きゃあ!」


「どうした!」


「水がこっちにも来たぞ!早くやっつけろ!」


そりゃバリアで防いだので飛び散るよ。いや。やっつけろって。あんた達神でしょう?そこでマインと一緒に隠れていないで一緒に戦ってくれません?


「こっちに来て戦ってくださいよ!」


「それはダメだ!お前一人で倒さないと!私達はマインちゃんを守んないとだしね!」


たぶんマインは一人でも大丈夫です。クマ相手に一人で立ち向かえたんですから。神>竜でしょう?俺じゃなくてあんたたちが倒してくれ。






「どこを見ている!我はこっちだぞ!それっ!」


竜は特大サイズの炎ブレスをはいてきた。


「くっ!大魔法障壁!」


っく。耐えきれるか?風による砂埃もひどい。普通竜相手に一人じゃ無理だって!




「・・・うわぁ!」


吹き飛ばされてしまった。風もすごいのに、ブレス攻撃されちゃあ障壁だけでは防ぎきれない。




「どうした。人間よ。その程度なのか?全然反撃してこないではないか。」


したくてもできねえんだよ。風が強いし、あんたが飛んでいるから魔法を当てにくいんだよ!




「さっきから防いでばっかりではないか。お前は弱いのか?」


イラつくなあ。わかったよ。神様達も戦ってくれないし、やりますか!




「・・・・・・・・・!」


空に黒雲を集める。


「ん?黙ってどうしたんじゃ?何もしないのならこちらからいくぞ?フリーズブレ・・・」


気づいていないようだな。


「神魔法、『天御雷あめみかづち』!」




「神魔法?なんじゃ?」




集めた黒雲から天雷を落とす!




カッ!




ドンッ!


あたった!


「ぐわぁ!雷を、落としたじゃと・・・あの短時間で・・・」


ピンポイントで竜に雷を落とせた。


「見事じゃ・・・」


そう言いながら竜は体を黒焦げになりながら地面に墜落した。










「・・・ただ守っているだけかと思っておったが、攻めるのも得意なんじゃな。」


竜は倒れながら俺に話しかけてくる。もう俺に攻撃する気はないようなので治療魔法で回復させている。さすがに雷を食らったら竜とはいえかなりのダメージだろう。


「相手を治すやさしさもあるんじゃな。」




「もうおとなしくなったんだし、治してあげようかな、と思っただけだ。」


「ソウター!もう大丈夫~?」


「大丈夫だよ!この竜は攻撃する意思はないようだから。」




隠れていたカグツチさん達とマインが出てきた。


マインはいいとして、神達、あとでしばく。




「お主たちは何者なんじゃ?」


「俺ははソウタ。こちらは日本の神、カグツチさんたちで・・・」




俺が転生者で、神様達のことを話した。




「ほーう。なかなか難しい話じゃの。転生者に、神達、レアスキルを持った者か。」


「そうだよ。あなたは?」




「我は古代竜ゲルド。齢2000の竜じゃ。」


「古代竜ゲルド!?」


「どうしたの?マイン?」


「ゲルドって、言い伝えにある人類を滅ぼしかけたっていう古龍よ!誰でも知ってるわ!」


「へぇ?」


(そうですよ!ソウタ!500年前に突如現れ、国一つ滅ぼしたって。みんな知ってますよ!)


「へえ?そんな竜がなんでここに?」




「いやあ。アン時はの、イライラしとってストレス発散しようとしたら人間どもに邪魔されての。キレて暴れてしもうたんじゃ。人間にはすまんことをしたの。あれから500年位経ったのかの?」


「ストレス発散?それで国が一つ?」


「あの時は何故か人間のくせにやけに強いのが五人おってな。ムキになってそいつらと戦っておったら周りが火の海になっての。・・・あれ?」




「・・・・・」


神達五人がそっぽを向いている。


「・・・そういえば似とるの。お主達、あのときの人間ではないのか?いや、でも人間はそんなに長生きせんしのう。」


「え?」


「・・・ゴホン。そうです。私達があのとき、あなたと戦った人間、いや神です。」




「そうじゃったのか!道理でさっきからお前たちの顔を見ていてもやもやしとったんじゃ!」


「えええ!?」


「あの時、あなたを止めようとして、戦ったのですが、あなたが強すぎてほぼ互角だった。あの戦いのあと、あなたは力尽きて、街から離れた森で倒れたのです。」


「それをワシが岩で封印したんじゃ。力尽きてもモンスターは魔力があれば復活することがある。それをこの山に持ってきたんじゃ。」


「お前たちじゃったのか!封印か。いやあ、ぐっすり眠れたぞ。満足じゃ。それに目を覚ます前に、体に力がみなぎってのう。目覚めたら体の調子が良くてな、少し戦いたかったんじゃ!」


「たぶん力がみなぎったの、俺の魔力です。・・・それで俺と戦って、カグツチさんたちは隠れてたんですね!」


ジロッとカグツチ達を見る。




「最初は怖くて隠れたんだけど、しばらくしたら思い出して、私達が出ていったらめんどくさそうなんでソウタくん達に任せたんだ。ごめんね?」


「・・・あとでシバきます。」




「いいではないかソウタ殿。お主は強いの!我はお主を気に入った!あれから500年か。人の国もだいぶ変わったであろう。我はこの世界を回ってみたい。お主について、まわりたいんじゃが、いかがかな?」


「え?どうすれば?カグツチさん?」


「・・・まあこの修業が終われば旅をして貰う予定だし、ゲルド。暴れる気はないんだな?」


「ないぞ。それに言っただろう?あの時はイライラしとっただけじゃ。我は元々大人しいぞ?」


「・・・いいだろう」


「カグツチさんがいいならいいですよ。ゲルドさん。」


「本当か!昔暴れてしまった我を許してくれるのか?」


「許す、許さないは、別だけど、カグツチさんがいいって言うし、付いてくるのはいいよ?」


「おお!そうか!では我はこれからソウタ殿についていくぞ!」


「はは、よろしく。」




「だが、竜のままじゃと、人間に恐れられると思うし、不便なのでな、変身魔法を使う。少し離れてくれんか?」


「?いいよ?」




皆が離れると、


「・・・・・・・・・・!・・・!」




「・・・・・!・・・!・・・」


ゲルドは、何かを念じているようだ。


「あっ!見て!魔法陣が!」


ゲルドの周りに紫色の巨大な魔方陣が出た。


「・・・あれは、禁術魔法だ。ゲルドのやつ、種族変更を行うようだ。」


「種族変更?なんですか?」


「今あいつは『竜』だ。それを『人間』に変えようとしている。」


「そんなの、できるんですか?」


「できる。だが、構造が難しく、失敗しやすいし、多くの魔力を必要とするんだ。」


「大丈夫なんですかね?」


「大丈夫だろう。あいつの魔力量はソウタほどではないがすごいからな。」




ゲルドの体が紫色の光に包まれ、光が小さくなった。




「・・・どうやら成功したようだな。」


光と魔法陣が消えると、魔方陣の真ん中辺りに女性が倒れている。変身後のゲルドか。




「大丈夫か?」


駆け寄り、頭を抱き上げる。


「どうしたんだ?」


「・・おお・・。ソウタ殿。申し訳ない。失礼するぞ」


「うっ!」


意識が・・・遠のいていく・・・何かされたのか?・・・ああ、ダメだ。




「完全ふっかーつ!」


ん?ゲルドの声が・・・遠のく。




続く。




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