ぷつり、と切れた音がした
理解、してしまった。
自傷だと、理解してしまったからこそ、もう止められない。
左手から伝わってくる、ヒリヒリとした快感に身を委ねる。
何処かでぷつり、と何かが切れる音がした。
それはきっと、焦りや不安で。諦めたんだと思う。自傷に対する不安を断ち切ってしまった。つまり、ストッパーが壊れた。
多分僕はこれから血が出るまでやってしまうことが増える気がする。なんか、落ち着くんだ。
自傷という言葉は嫌いだし、止められない自分はもっと嫌い。でも、そこから放たれる快感を知ってしまったのなら、多分もう止められない。
カッターや剃刀なんかに手を出すつもりはない。肉が切れるのって痛いから。痛覚がかなり麻痺しているとはいえ、肉の中まで麻痺してる訳じゃない。表面しか麻痺してないから、爪で充分。下唇を噛むのもある種の精神安定剤であるから多分無理。口の中噛むのは流石に血出て来て怖くなったから止めたけど。
血は怖い。自分の中に蔓延るおぞましいものが血液となってドロドロと流れ出す気がするから。だから血が出ることはあまりしたくない。
だから、多分どの行為であれ、血が出たらそこまでなんだろう。血さえ出なければ自分を傷付ける。
物に当たって怒られるくらいならば自分を傷付ける。きっとその方がお金もかからない。女が自分の体に傷をつけるなんて、とか言われるけど、僕のことを好きになるような人なんて、誰もいないよ。両親でさえ愛せないような禍つ子を好きになる人なんているわけないじゃないか。こうしてひっそりと自分を傷付ける快感に身を委ねることしか出来ない。自殺する勇気もない。いっそ誰でも良いから殺したいという人に殺されたい。でも血が出ない方向でお願いしたいな。血は怖い。憎悪だとか醜悪だとかが止めどなく流れ出るから。
こういうことを書いていると、本当にそろそろ病院かな、とか思う。思うけど、お金は無いし、迷惑かけらんないし。
どうかしてるとは思うんだけど、基本的に誰にも迷惑かけたくない、それだったら一人でやる。っていう思想なのだけれど、死ぬときくらい迷惑かけていいだろ、っていう自分も存在することに気付いた。だからまぁ、最後くらいこっち見てほしいんだと思う。
葬式は遺族の為だよ、自分の為じゃない。どうせ死ぬのなら、今まで僕を愛せなかった両親や、口先だけの褒め言葉を並べてきた親族というものを一堂に会させて、その目の前で結構ショッキングな死に方して二度と脳裏から離れさせないようにしたい。ただそれは出来ないから、そうじゃないのならば誰にも気付かれずに、ただ僕という存在そのものが無かったように消え去りたい。
そんな事を思いながら、左手の傷は増えてゆく。
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