異常図書XR1[水難事故報告書████年████月████日]

分類:伝承災害

人気推定値:測定不能

状況:封印

発見時の脅威:水難事故の惹起/赤

現在の脅威:水難事故の惹起/黄


作品の概要

 ████年████月████日に██████████のプールで発生した水難事故の報告書。


異常の発現

 報告書が閲覧されると████日に██████████のプールで███████する水難事故が発生する。

 水難事故を防ぐための行動は基本的に失敗するものと思われるが、まったく不可能というわけでもないようである。


発見と対応

 ████年████月、██████████のプールで立て続けに5件の水難事故が発生し、4人が死亡、1人が救急搬送されたことから、地元警察が異常図書事件の可能性を考え、我々に調査を要請。

 最初の事故を受けて、██████████では監視を増やす、点呼を徹底する、水中確認を繰り返し行うなど、再発防止策を強化徹底していたにも関わらず、さらに4件の事故が発生していた。


 死者が出た4件の事故では、事故発生から遺体が発見されるまでに約18時間かかっており、この間、家族までもが行方不明になっていることに気付かなかった。詳細は音声1を参照。

―――

音声1 3人目の犠牲者████の母の証言

「正直、わけがわからないんです。████が家に帰ってきて、いつものように話をして、晩ご飯も、朝ご飯だって一緒に食べました。食べたと思ってたんです。

 なのに、いきなり警察から電話がかかってきて、████が死んだって、それも前日の昼に……信じられませんでした。私も主人も確かに████と晩から朝まで一緒だったんです。食事の材料は3人分使っているし、食器だって全員分乾燥機に入っていました。

 でも遺品として渡された████の荷物の中には、洗っていない弁当箱が入ったままで……もう、何がなんだか」

―――

 他にも「犠牲者と一緒に遊びに行った」「犠牲者と一緒に食事をした」と話す者がいたが、カメラなどの映像記録がこれを否定する一方、購入されたチケットや食品などの数は犠牲者を含んでおり、さらに何者かによって消費されている。

 包装などから同一の指紋様痕跡が検出されており、特異知的生物の関与があったか、召喚事象が発生した疑いがある。


 いずれの遺体も発見時、死後経過時間は18〜22時間と推定された。しかし遺体は異常性の影響下にあった可能性が高く、文字通り遺体発見の18〜22時間前に死亡したとは限らないことに留意せよ。

 関係者に█████を中止しなかった件について尋ねると、中止する選択肢があったことに、その時初めて気付いて混乱している様子だった。

 伝承災害の特徴が見られることから、異常図書事件と推定して調査を開始。伝承災害用識別コード、XR1を割り当てる。


5件目の事故

 伝承災害によって引き起こされた事故であったはずだが、その場にいた████が水没した被害者を発見。救命に成功した。当時の様子についての証言は音声2を参照。

―――

音声2

「なんていうか、不思議でした。皆プールの中ではしゃいでいるのに、████君の周りだけ、急に穴が開いたみたいに人がいなくなって、████君が、エスカレーターに乗ってるみたいに水の中に沈んでいったんです。

 潜水して遊んでるのかなと思ったんですが、全然上がって来なくて、さすがにマズいんじゃないかと思って████に声をかけたら、途端に皆████君が沈んでいるのに気付いて大騒ぎになって、救急車が来ました」

―――

 ████が伝承災害の影響を受けなかった理由は不明であるが、████一家は██県からの転入者であり、父親が海運会社に勤務しているため、金刀比羅宮(水難除けで有名)の信者である。また████と被害者は恋愛関係にあり、その過程でなんらかの魔術的防御を実践していた可能性もある。

 他4件ではこれに類する特徴を持つ関係者はおらず、異常図書XR1には、魔術的防御が有効な可能性がある。

 しかし、実験はできないこと、むやみに護符の類を置くと、伝承災害の記憶を強化し、異常図書XR1の再制作に繋がる恐れがあることから、プールを利用可能な状態で封じ込めを行うのは危険性が高いと判断した。

 水道設備の劣化を理由として注水配管を閉鎖し、プール内への注水、立ち入りを禁止。


異常発現の原因

 ████年████月████日に██████████████████████する事故が発生したという情報を報告書に書き込むと、異常図書XR1の複製として機能するものと思われる。

 そのため異常図書XR1内の日付は桁数まで秘匿するため改変、黒塗りする。

 また水難事故の詳細をここに記述することは厳禁である。何が報告書として扱われるか判然としないため、念の為これ以外の媒体に記述することも禁止する。

 対照用の情報は特別秘匿指定とし、所定保管庫に適切な数に分割して保管している。

 これらの異常性が発現する原因は不明。

 魔術的防御が有効と思われることから、事故現場となったプールの所在地に超常存在の伝承があるものと思われたが、資料の散逸、毀損が激しく、████年以前にさかのぼることができない。

 原因の解明はほぼ絶望的である。


現状

 十分な封印状態を維持できているが、伝承災害は常に再発の恐れがあるため、現在の脅威は黄に設定しておく。

 伝承災害検知器[岩戸の司書]による監視を継続。

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