異常図書1412-6-8[シンデレラ1010]
分類:人格版画
人気推定値:1560vol(暫定値)
状況:違法コピーの蔓延
発見時の脅威:洗脳/赤 虚偽の記憶の上書き 強い感染力
現在の脅威:洗脳/黄 中度の再拡散の危険
作品の概要
2018年6月、███社から出版された30ページの絵本。タイトルはシンデレラだが、全てQRコードに類似した特異記号1412-6-8-1〜30(表紙に「新開発!! 超現実拡張コードMiracleを使用!!」と表示されている)で書かれており、その内容は明らかにシンデレラではない。
被害者の観察から、30ページの中に少なくとも6話以上収録されているものと思われる。
異常の発現
表紙以外が1ページあたり1つの特異記号で埋められており、異常性を保持している。
これを視認すると、登場人物や小道具の設定は概ね共通するものの、明らかに異常なストーリーを本当のシンデレラだと思い込まされる。
この影響は、シンデレラストーリー、シンデレラタイムなど、シンデレラを含む慣用句の記憶にまで及ぶ。
被害者の約67%がWEBにレビューを投稿しようとするが、これが異常性によって動機付けされたものか、副次的に発生したものかは不明。
レビューを投稿する被害者は、可能な限り異常図書1412-6-8を断片的にアップロードしようとするため、異常図書1412-6-8が自身の拡散を企図しているようにも思える。しかし、異常性によるものだとすると、投稿しない被害者が存在する理由がわからない。
備考
被害者が話すストーリーにも若干の差異が認められることから、特異記号1412-6-8の影響にはブレがあるものと思われる。
発見と対応
WEB監視網が異常の兆候として、デタラメなシンデレラの感想を投稿した記事3件を捕捉。よくあるインターネット大喜利の類であろうと思われたが、念の為異常図書1412-6-8を購入。
この時、購入を担当した職員が誤って取り落とし、その場の4人が被害を受けたことから異常図書と断定。
回収と焼却が即時決定されたが、この直後にWEB上で小規模な大喜利レベルだったものが、SNSのサーバーをダウンさせるほどの「祭」に発展。
異常図書1412-6-8の既成事実化を阻止するため、WEB清浄化手順[クモの巣掃除プロトコル]に従って国内の全回線を遮断。
回収と焼却に先立ち、WEB上に拡散した異常図書1412-6-8の削除とアクセス遮断データベース[閻魔帳]の更新を行った。
異常発現の原因
特異記号[超現実拡張コードMiracle]が原因となっている。実験が危険なため推測になるが、恐らく光刺激の組み合わせによって、脳に幻覚として絵本を認識させているものと思われる。
その構造上、色が変わったり、形が歪んだりすると、完全な効果が得られず、影響にブレを生じるのだろう。
被害者によってアップロードされたもののうち、撮影の失敗や、ファイルの圧縮などにより同一性が72%を下回るものが異常性を示さないこと、絵本自体も影響にブレがあること(閲覧環境の光源色による影響と思われる)等が、この仮説に一定の裏付けを与えている。
現状
絵本の形で流通している異常図書1412-6-8自体は回収と焼却が完了し、WEBも異常図書1412-6-8を検知するとアクセスを遮断する設定が完了した。特異記号の制作者も特定できており、監視体制の構築が完了した。ひとまずの封じ込めには成功したと言える。
しかし、個人のパソコンやスマートフォンの中身までは、所有者がなんらかの事件でも引き起こさない限り検査することができないため、個人宅で家族や友人伝いに感染が拡大する可能性や、コピー本のような形で海賊版が頒布される可能性が残っている状況にある。
下記の特徴を持つシンデレラの感想が発見された場合、速やかに封じ込め処置を行うこと。
・全体的にプロレス風の改変が行われている
シンデレラが新鋭のプロレスラーという設定であったり、継母や継姉とマンション・デスマッチなるルールで戦ったり、魔法使いにドレスではなくマスクとコスチュームを与えられたりする。
舞踏会はプロレス興行のイベントになっている。
・以下のキーワードを含む
以下のキーワードにはブレの影響が見られず、必ず使用されるものと思われる。
[石臼]または[ストーンミル]
石臼砕き、ストーンミル・バックブリーカーのように、シンデレラの必殺技の名前として必ず使用される。
[真鍮のリンゴ]
シンデレラの対戦相手が使用する凶器として必ず登場する。
[マンション・デスマッチ]
シンデレラと継母、継姉が戦う際に必ず採用されるルール。屋敷内のもの全てを使用できるルールらしい。石臼、真鍮のリンゴは、この中で登場する場合が多い。
[毒霧攻撃]
舞踏会編でシンデレラに対して行われる。タイミングは試合前であったり、試合中であったり、ブレが大きいが、必ず行われる。
[白い小鳥]
舞踏会編でシンデレラを助ける存在として必ず登場する。
[チャーミングプリンス・アズーロ]
王子のリングネーム。
王子と戦うパターン、王子とシンデレラがタッグマッチを行うパターン、既にケガで引退しているパターンなど、王子の扱いはブレが大きいが、リングネームは全て同じだった。
文書1412-6-8
███社から我々に送付された手紙。無害化処置した複製をここに貼付する。
―――
このたびは弊社の製品「シンデレラ」が多大なご迷惑をおかけしましたこと、誠に申し訳ありませんでした。本来なら弊社で対応せねばならないところ、異常図書焼却課の皆様に全てお任せする形になってしまったこと、誠に申し訳なく、重ねて深くお詫び申し上げます。
試験用に作ったデータが手違いで入れ替わってしまい、このような不始末に至ってしまいました。取り扱うものの重大さに対する認識の甘さが招いたことと、深く反省しております。
今後はこのような不祥事を二度と繰り返すことのないよう、チェック体制を一新し、いっそう気を引き締めてまいる所存です。
[特異記号1412-6-8-A1]
ですので、はなはだ図々しいお願いだとはわかっておりますが「超現実拡張コードMiracle」に、もう一度チャンスをいただけないでしょうか。
これは本の、表現の革命です。超現実拡張コードMiracleには映画やバーチャルリアリティーをも凌駕する本物の体験が刻み込めるのです。
我々は映画やテレビが登場した時のような革命をもう一度体験するためのチケットを握っているのです。どうか、ご再考いただけないでしょうか。
[特異記号1412-6-8-A2]
―――
謝罪文の形をしているが、特異記号1412-6-8が2つも使用されている。ヒューリスティック検閲エンジンにより、被害を未然に防いだため、特異記号1412-6-8-A1〜A2の影響は不明だが、我々に対する攻撃として送付された疑いがあり、今後も同様の攻撃を行うことが懸念される。
また、監視網の隙をついて送付してきたことから、███社が特異記号1412-6-8を悪用、拡散する可能性が高まった。場合によっては関係者の███も必要になるだろう。
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