バールのヨウナの物語

軽見 歩

第1話 バールのようなとの出会い

「よいしょっと」


「ガタン」


 とあるカフェバールの倉庫に届いたコーヒー樽を運び終えた、その店の主人”松美まつみ 康太こうた”は、その樽を見ながらニヤニヤと笑いながら言っていた


「ふふふ、やっと届いたね、愛しのブルーマウンテンちゃん。さて、さっそく開けましょうねぇ。スリスリ・・・・」


 などと樽に頬ずりして抱き着いた彼はきゅうに我に返り周りを見渡し始めた


「おっと!こんな事している場合じゃない、もうすぐ開店だ。 えっと、バールは・・・」


 樽を開ける為にバールを探した。バールと言ってもこのお店の事ではなく工具のバールである


「お、あった」


 康太は物陰から、バールの様な赤色の先端が見えたので、それの手を伸ばした


「むぎゅ」


 それに手を触れると、それから声が出た


「ムギュ?」


 それは頭は赤く、その下は暗い青の見事なツートンカラーだ


”あれ、食品を扱う場所置くものだから綺麗に手入れしていたけど、もう古くてこんなきれいな色してなかったはず・・・。錆を落とす為にこの間、磨いたばっかだしなぁ”


 ・・・・などと康太は考えていたが、もちろん問題はそこではない


「ふむ・・・」


 康太はそれを撫で感触を確かめて改めた思う


”サラサラだな。工具の感触がサラサラっていうのはおかしいけど、錆止めの油のせいか?”


 ・・・・などと彼は考えたがもちろん違う


「うう・・・」


「あ」


 頭を撫でられプルプルと震えながらそれは顔を上げた。その下から見上げて来る彼女の瞳を見て、現実逃避していた康太の意識が一気に引き戻され、彼はこうつぶやいた


「バール・・・の・・・・ような・・・・」


 バールの様な女性がそこにいた


「あの? それは私の名前ですか?」


「え?」


 語り掛けてきた、彼女の言葉に驚き手を放し距離を取って、混乱し曖昧な言葉しか返せなかた


「さっき、ヨウナって」


「ああ、えっと・・・」


 彼女は彼の返事を肯定ととらえたのか、目を見開いた後、満面の笑みで言った


「ヨウナ・・・、ヨウナかぁ。ふふ、私、ヨウナです☆」

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