第24話
アミルくんが退院したその日、私はサヒラーさんから学校へ通うようにお達しを受けた。学校という体系なのかは分からないが、学びに行けということだ。
しかも、フィナちゃん
不安で寝付けず寝過ごした私は、ミリィアさんに起こされた。その時にミリィアさんが、ワラドを宜しくとくむってきたけどなんの事だか分からなかった。
食後に、緊張した面持ちのワラドくんが迎えに来て初めて、ワラドくんも一緒に学校へ行くのだと分かった。チビも行くの?
「いってきます」
何故か家人総出で見送られた私達は、学校へと向かった。みうは普通に見送り側に居た。
くむくむ村にしては朝の遅い時間な気がするけど、遅刻じゃないよね?っとドキドキしながらワラドくんの後について歩く。
その学校は神社の隣にあった。いや、敷地内なのかな?境内に植えられた木々の、東にあるので夏でも涼しそうだ。
まさに寺子屋って趣ですな。ただ、思ってたよりは大きい建物だ。小屋って言うには大きい。
そろそろ咲き始めた紫陽花に囲まれた学校へ、足を踏み入れる。いやー、なんか緊張する。
拍子抜けする事に中には狩衣を着た、先生らしきおじいちゃん神主さん?が居るだけだった。
「おはようございます。今日からおせわになる夕菜と申します。よろしくお願いいたします」
はっはっはっ、驚いたかお前達!
この最初の挨拶だけは、定型文でフィナちゃんに習っておいたのさ!
「おはようございます。今日から学ばせて頂くこととなったワラドです。宜しくお願いします」
ガチガチに成りながら挨拶するワラドくん。
ワラドくんは護衛半分に付けられたのかと思ってたけど、この緊張の仕方を見るに学校に行ってなかったのかな?
チビが心配そうに、ワラドくんの握りしめた拳をぺろぺろ舐めている。
「ようこそ、話は聞いています。こちらへどうぞ」
「失礼します」
磨かれた深い艶のある板張りの床に、長机が置かれていて、そこに車座を敷いて座る。
「初めまして、禰宜のキャラヒネンです。ユウナさんとワラドさんですね。ユウナさんは異国の地よりいらしたばかりで、言葉が分からないいと聞き及んでおりました。先程は随分とご立派な挨拶をなされていましたが」
なんかゆっくり話してくれてるけど、挨拶と名前位しか分からなかった。
「分かりません、宜しくおねがいします」
重々しく頷いておく。
「先ずは、朝の手伝いを終えた子供たちと、一緒に授業を受けて貰います。その後、理解の程を確認してから午後の授業にしましょう。ワラドさんは
キャラ先生は一気に捲し立てたあと「朝、子供勉強。午後二人勉強」と私に向かって優しく話してくれた。
因みに、後からわかった事だが冬と春は朝が学校の時間で、夏と秋は午後が学校の時間らしい。
「先ずは単語です。語彙がないと説明を聞いても分からないでしょう?少しずつ覚えていきましょう」
固まる私にキャラ先生は「単語覚える、大事」とゆっくりと話してくれた。OK、まずはインプットだよね。
先生はワラドくんにくむくむ星の五十音表記を渡して書き取りを指示した後、目とか眉とか、兎に角体の部位を指しては教えてくれた。
そのうちに、可愛い学生達が元気にやって来た。うちらの違和感半端ないね、うん。
年齢は結構バラバラだね、でも五六歳位の子が一番多くて、小さな子は居ない。一番後の席に移動して授業を受ける。
皆が集まってから始めるんじゃなくて、来た順にそれぞれ課題を出してもらってこなしている。まぁ、お手伝いしてから来るなら一斉に来るなんて無理だしね。それにしても皆嬉しそうに勉強するねー。
「皆さんおはようございます。今日から言葉を学びたいという方が後ろの席で一緒に授業を受けますが、あまり気にせず仲良くしてやって下さい」
ある程度席が埋まったところで、キャラ先生が突然話を振ってきた。
興味津々と言った様子の、キラキラした目が一斉にこちらを向く。
「初めまして、夕菜と言います。宜しくお願いします。」
焦ったけど、何とか定型文を返せた。ワラドくんを肘でつつく。
「初めまして、
「「おーー術詞だって、すげー」」
「先生俺もならいたい!」
「私も、私もーーー」
子供たちがまぁ、大騒ぎ。
他所から来て忙しく働いてたんだから、文字がかけなくてもおかしくないと思うんだけど、やっぱり子供たちを前に字をならいに来ましたとか言い難いよね!
先生が子供たちを宥めるのをバツが悪そうな顔で見るワラドくん。
「良いですか、術を使うには神格に助力を願わねばなりません。その為には、しっかりと言葉を学ぶ必要があるのです。正しい文章を組めないと、術は使えませんよ?皆さん、先ず確りと言葉を学ぶ事です」
「「「はーい!」」」
あの騒ぎをあっという間に収めて、やる気を引き出すなんて先生有能だね。隣のワラドくんもやる気スイッチ押されたみたいで、目が輝いてる。
暫くは真剣に授業を聞いていたワラドくんだったけど、ワラドくんにはやっぱり簡単すぎたみたいで、猛烈なスピードで書き取りを初めた。
私は真面目に聞いていたけど、やっぱり5分の1位しか分からない。ただ、あーこの言葉は〇〇ってことかな?あ、やっぱりそうかも!という発見が度々あって結構楽しい。
1時間位で休憩をして、また授業を3回繰り返してお昼ご飯になった。
なんとお社の方からご飯を持ってきてくれるのだ!お握りと漬物と何かの煮付けで皆大喜びで食べていた。何かの煮付けは子供に出していいのか謎なほど味が濃ゆい気がしたけど、現代社会と違って汗もかくし量を食べないからこれでいいのかな?
ご飯の後は皆で水路で食器を洗って、籠に伏せる。その後のチビちゃんの
休憩の時から注目の的だったけど、大きいし牙見せてハッハしてるので遠巻きにされてた。だけど、そのうちに勇者が現れて撫でたり乗っかったりしても許してもらえることが分かると、どんどんスキンシップがエスカレートして今や不安になるほどだ。
ワラドくんも同じ気持ちらしく、オロオロしながらチビを呼んだ。
「チビ、入れ」
ワラドくんがそう言うと、チビがのそのそ歩いてきてスッと消えた。
えっ?!ど、どこ行ったの?消えたよ?
子供たちも驚いているので、くむくむ星的にもこれはおかしい事だよね?
私が驚いていると、ワラドくんが「チビ、戻る、俺の中」と誇らしげに言った。
えー、チビって物理じゃなかったの?やたらでっかい狼だとは思ってたけど、魔物だったの?魔物って収納可能なの?!
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