僕らがアプリで小説を書きたい億千の理由
三文士
第1話 仕事中に小説書くなよ
僕は働きながら趣味で小説を書く、しがない三十路男。
今日も今日とて仕事をサボってはアクセスの伸びない自己満小説をカクヨムに投稿し続ける。
上司A「おーい三文くん。これの件、どうなったかな?」
僕「あっすみません(スマホぽちぽち)まだやってないです」
A「おっ、そうか。頼んだよ。納期までまだ時間あるけど、早めに確認したいから」
僕「りょっす(ぽちぽち)」
〜一カ月後〜
A「え?ちょっと三文くん。何やってんの?」
僕「え?なんですか?」
A「いや、なんですかじゃなくて。例の件、先方から進捗の確認メール送ったのに返信ないって連絡あったよ。なにしてんの?」
僕「いや 笑 進捗っていうか笑笑。まったく進んでないので気まずくてメール返してません」
A「ええ!?」
僕「いやぁ 笑 参っちゃうなあ」
A「え?なんで?なんでやってないの?というかなんで笑ってんの?」
僕「気まずくて 笑」
A「いや使い方ちげえよその言葉。別に便利な言い訳とかじゃねえよ」
僕「え?なんですか急に?パワハラじゃないですか?」
A「いやパワハラじゃねえよ。怒ってんだよ。上司として当たり前に怒ってんだよ」
僕「ええ?そんなAさん豹変上司ですか?勘弁して欲しいなぁ」
A「いやこっちの台詞だよ」
僕「ま・い・ったなあ…(スマホぽちぽち)」
A「というかお前さっきからなにしてんの?なんで上司に怒られてんのにスマホいじってんの?」
僕「あ?コレですか?へへへ」
A「あ?」
僕「実は僕、小説書いてんですよ。今度コンテスト出すんですよ。もう少しで期間終わっちゃうんで、ここ一カ月死ぬ気で書いてるんですよね」
A「え?じゃあ仕事しないで死ぬ気でそんなことしてたの?」
僕「ええ〜そんなことって〜。Aさん、僕がコンテストで入賞したらデビューですよ?書籍化ですよ?先生ですよ?」
A「は?なに?そうなの?知らないけど。関係ないよ。とにかく仕事しろよ」
僕「まあまあそう言わずに。僕の小説読んでくださいよ。僕への評価変わりますよ」
A「いやいいよまじで。いや、いいから。やめろよスマホ押し付けてくんなよ!ヌルヌルしてんだよ!やめろって!」
ヌルンっ
ポチャンっ
A「あ」
僕「うああああああ僕のスマホがあああああピルクルまみれにぃぃぃぃぃぃ」
A「おい。なんか職場が酸っぱいと思ったらお前がピルクル飲んでたのかよ」
僕「いえ、それは僕の体臭かと」
A「なお悪い」
僕「うあ!電源つかない!」
A「ほら。これでようやく仕事に集中できるだろ。早くやれ」
〜四日後〜
帰宅途中
僕「くっそ。マジブラックだぜ。あの会社。四日も拘留しやがって。クソみたいな仕事で。クソ」
僕「それよりスマホだよなあ。ラインとかは復旧できたけど、メモアプリで書いてた小説が復旧できないなんて。くそったれマジでないわ」
僕「やっぱ無料のアプリだな。ま、PCでも書いてたから助かったわ。二千文字くらい損失したけどまあいいだろ。傑作に変わりない」
僕「ん?なんだ?アパートの周りに人だかりが…」
大家「ああ三文さん!ちょうどよかったわ!」
僕「大家さんどうも。なんかあったんですか?」
大「なんかっていうか、アナタの部屋の上の階で大規模な水漏れがあって」
僕「は?」
大「残念だけどアナタの部屋が浸水してるわ」
僕「はあああ?!なんで!?上の階の奴なにしたんですか?!」
大「こちら上の階に住んでるピヒョリレナリ・ボリリーレンさんよ」
ボリ「ヨウ」
僕「そんなコントみたいな名前の奴住んでたんですか?!おい!てか、何やってたんだよ!」
ボリ「水ノ精。ヨンデタ」
僕「は?」
ボリ「水ノ精。マキヨウコ。ヨンデタ」
僕「そんな女優みてえな妖精呼んでんじゃねえよ!」
大「ピヒョリレナリ・ボリリーレンさんは東ポリテキ・セサノムベ共和国の出身なのよ」
僕「うるせえよ!聞いてねえよ!長いんだよ!打つのめんどくせえよ!」
ボリ「トキヨーサバク」
大「冷たいわね」
僕「おかしいだろ。…待てよ!水浸し!?てことはまさか!?」
アパートの階段を全力で駆け上がる僕。鍵を差し込み部屋のドアを開ける。
僕「うあああああ!PCがああああ!」
浸水している部屋。その部屋の隅に置かれた机の上のPC。その真上からピンポイントで水が滴り落ち、PCからは不穏な煙が上がっていた。
僕「なんで!?なんでピンポイントで!?」
ボリ「ソコ。マキヨウコノ場所」
僕「いやここは俺のだよ!ああ!ヤバい!とにかく回収して、使える部分があるかもしれない」
ボリ「ア!イケナイ!今チガウ!ソコハ!フブキジュン!」
僕「は?」
濡れた手でパソコンに触った瞬間、僕は頭に電撃が走りパソコンと共にショートした。白目を向いて水たまりに崩れ落ちる。
ボリ「愚カナ。フブキジュン(電気の精)ノ場所ダト。イッタノニ」
薄れていく意識の中で、僕は夢を見ていた。
背景がピンクのいやらしいモヤモヤした空間を一人でさ迷っている夢だった。ピンクいやらしいモヤモヤ空間が分からない人は是非旧時代のドラえもん映画を見てほしい。そこで分かる。
とにかくその空間をあてどもなくさ迷っていると、不意に人影が視界に入ってきた。
その人影は壁によりかかったまま足を組み、片手の人差し指と中指を立て額にあてて「アディオ」のポーズをしている。
分かりやすくいうとベジータが未来からきた大人トランクスを送り出す時に、クッソかっこつけていたあのポーズだ。
「え?待って?アンタもしかして…」
「オラ!
「木村さん!?」
そのクソカッコつけた顔の濃い胸毛モジャモジャの日系スペイン人は、いつだったかうやむやのまま終わらせたエッセイ小説に出てくる僕の
「俺は女芸人はあらかたイケるし、なんなら尼神のセイコが割と好みなんだが、ユリアンだけはどうしてもダメだ」
「え?なんの話?」
「いや、こっちのことだ。それよりアミーゴ。お前にひとつ聞きたいことがある」
「何?木村さん?」
「お前、カクヨムの専用アプリで小説を書いて投稿したいと思ったことはないか?」
「え?」
僕らの冒険が、二話限定で再び始まった。
次で終わり
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