第32話changeリツ
抜けるような秋晴れの空
あの浜辺で一人
海をながめながら
サンドを頬張るリツ。
レモネードを飲み干し、立ち上がる。
タクシーに乗り込む
「羽田まで」
国際線ターミナル
ロサンゼルス行きのゲートに消える。
しばらく日本には戻らない。
いつものカフェ
椅子にもたれかかり、遠くを見つめるリツ。
離れたカウンターで
マスターがスタッフと話す。
「リツちゃん
ここんとこずっとあの調子よね」
「えぇ」
「あれは絶対、失恋ね」
「はい」大きく頷く。
カフェの扉が開く。
「いらっしゃいませ」
「あら、リリー姉さんお久しぶり!
ケイちゃんも久しぶりね!」
リリー?
リツが振り向く。
いつかのガタイのいいイケメンがこちらを見ている。
思わず歩み寄る。
「あら?リツちゃん、知り合い?」
「リツちゃん?」
リリーがはっとして、LINEでリツにスタンプを送る。
テーブルに置いたリツのスマホが鳴る。
「花さんから何か連絡ありましたか?」
「ううん、ごめんなさい、ないわ」
うなだれてテーブルに戻る。
「あの女の人
リリーさんとこの人だったんだ」
「来てたの?」
「うん、来てた」
「リツちゃんって
あんないい男だったのね。そりゃ花ちゃんもクラッとしちゃうわよね」
「かなりの色男よぉ。
あんな姿、初めて見るわ」
タカの後ろ姿を見つめるマスターとリリー。
「私たちも
さんざん失恋してきたわよね…」
「うん」
「ほんと、辛かったわよね…」
「うんっ」
リリーが花にLINEを送る
「こんにちは。突然ごめんなさい。
山田さんとリツちゃんに花ちゃんの退所のご挨拶をしようと思います。
何かメッセージがあれば伝えますが
どうかしら?」
しばらくして返信が来る。
「リリーさん、ありがとうございます。
山田さんとリツさんには
「ありがとう」とお伝えください」
「わかりました。
また働きたくなったら
いつでも連絡ちょうだいね」
「ありがとうございます」
リツのスマホが鳴る。
「花ちゃんからです」
「リリーさん、ありがとうございます。
山田さんとリツさんには
「ありがとう」とお伝えください」
リツが振り返る。
マスターとリリーが
両手でハートマークを送る。
リツが親指を立てて応える。
抜けるような秋晴れの空に
飛行機が吸い込まれてゆく。
爽やかな秋風が吹き抜ける。
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