大いなる愛で包み込んで

カゲトモ

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 人それぞれ、その人その人のささやかな幸せの時間があると思う。例えば恋人と視線が合ったときとか、友達と同じ話題で笑った時とか、美味しいものを食べたときとか、風呂にゆっくりと浸かっているときとか。俺の場合は最後の奴。ぐでぇ、としながら風呂に入っている時に何とも言えない幸せを感じる。

 生きていてよかったぁ、ってくらい。大げさかもしれないけど。

「ん~」

 最近は寒くなくなってきたから湯船に浸かるのもぬるま湯にして、スマホで音楽を鳴らしながら長湯したりして。そんなこと休みの日にしかできないけれど。

いつもなら店でバリバリ仕事している時間、夕食も終えて満たされたままぐでぇ、とただ湯船に浸かる。入浴剤のおかげもあってリラックス感百二十パーセント。なんて幸せなんだろう。

本当に、自分、お疲れ様っ。いつも疲れているから風呂に入っただけでこんなにも幸せを感じるのだろうか。どんだけ疲れているってんだ。本当マジで凄くお疲れ、俺。誰も言ってくれないから自分で言ってあげることにする。

「っぷはぁ」

 それから風呂上りの一杯。髪は濡れたままタオルを首にかけてビールを一口。あ~幸せ。あ~美味い。あ~。これも俺にとってのささやかな幸せで。

「最高」

 男の一人暮らしなんてこんなもんだ。風呂に入ってビール飲んで。髪を乾かさなくても怒る人もいない。まぁそれで風邪を引いたら元も子もないんだけど。

 それがある意味一人暮らしの大変さってね。全部の責任が自分にあるから。

「わ」

 こうやって床にビールを零しても自分で拭くしかないんだから。それから飲んだ空き缶を洗うことも。

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