金沢旅行記
中田祐三
前書き
年齢を重ねると動くことが億劫になってくる。 二十台前半と後半の五年間では
同じ年数でもその濃さと貴重さは段違いだ。
最近子供の頃に大人たちが言っていた言葉。
「若いっていいな~」
が身に染みてわかってくる年齢になってしまった。
鬱屈とした十台、二十代前半を過ぎてやっと自分の自由に使える金が些少なりとも出てきたこの数年間で自分自身がもう若くないことを認めざるを得なくなった。
それは肉体的な理由だけではなくいわゆる内面的や世間的な意味でもだ。
『若者の情熱の源は無知と未知で出来ている』
『若さゆえの蛮勇が許されるのは彼らが社会的に未成熟の立場という特権階級に所属しているからだ』
大人になるのはとても悲しいことだ。
世間と責任を背中に乗せ、人生という一本の縄の上をユラリユラリと歩かされている気分になる。
ドロップアウトという名の元に縄を降りてしまえば、限りなく自由ではあるけれど進む先は文字通り暗闇の中にあり見失わずに進むことが出来る人間は一握りだけだ。
結局誰もかれもがそうせざるを得ないのだ。
俺も君も彼も彼女も。
けれど人間である以上譲れないこともある。
それが今回の祭りだ。
今までに二回参加している。
2012年(これについては『パパのドキドキぼんぼり旅行』に詳しく書いてある)
2013年は祭りの最中に雨に降られ、傘を無くしてしまったので仕方なく公園の無人管理事務所の軒下で一人だからと音楽を聴きながらノリノリで踊っていたら女子中学生に不審な目で見られた後に本気ダッシュされて逃げられるという二十台最後にして最大のトラウマを抱えることになった。
実は今回の祭りに参加は当初する気はなかった。
世間と会社内での評価に負けて、頭を垂れようとも思ったがやはり心の底から湧き上がる衝動には勝つことが出来ない。
それゆえに早期の解雇予測とパワハラ脅迫にもめげず『わがまま』と『有給休暇のごり押し』(『』内の言葉は会社側からの視点です)によって今回の旅が実現した。
だが恐ろしいことに出発前夜のこれを書いてるいまでさえ『休暇』は確定していないという事実をここに記さなければならない。
もしこれをあなたが読んでいるのなら……それは私が人間としての尊厳をもって『休暇』を守り通したという証に他ならない。
それほどまでに私にとってこの祭りと元になったアニメは素晴らしい作品だったと言うことを改めて書いておきたいと思う。
さて冗長となったのでここらでシリーズのプロローグを終わらせるとしよう。
次回『旅費で生活費が本気でやばいけどそれを忘れてはしゃぎ続けるアラサーな僕』にご期待ください。
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