三十八 誕生日

まさか、フルグルと歩いて、魔導書を買いにくるとは、予想はしてなかったけど、この子どこまで、天才になるのかしら、お母様の太鼓判も押されているし、宮廷魔法使いでもなろうとしてるのかしらね。

「うーん、やっぱり歩くと疲れるな……」

「この体だと体力つけるの限界あるな」

「フルグル、何一人で、ブツブツ言っているの?」

「自分に、体力がないなと実感してました」

 この子何を言っているの? まだ小さいのだから無くて当然なのに、残念がる所がそことは、普通の子供となにかがいつも違うのよね。

「あなた、今日で、二歳になったばかりよ」

「これから大きくなって、体力つけていくのよ?」

「お母様、お言葉ですが、知識は、学べば覚えられますが、体力は、ハイハイとか歩いても限界があります」

 もう少し動けるようになったら、身体強化使って、狩とかいきたいだよね、昔の勘を取り戻さないと、魔法の知識なら勉強すれば手に入るけど、やっぱり……、一年間は、長いな――。

「フルグル、そろそろお店着くわよ」

「あ、すみません考え事してました」

「危ないから気をつけなさい」

「はい」

 これから、少し出もいいから筋トレしようかな、それとも歩く練習を先にして、足の筋力つけるか迷うな。

「フルグル、前――」

「あっ、危なかった」

「そのうちぶつけるわよ」

「ここですね、前に、一度見た事があります」

「前に、お母様の所に、行った時かしら?」

「そうですね、カメッリアお姉様と行った時ですね」

 ぶつかると思ってたけど、瞬時に避けたけど本当に、運がいいのか気づいたのか謎よね。それでもここまで、喜んでくれるなら連れて来て良かったわ。

「お母様、早く中に入りましょう~」

 扉の前に立ちドアのノブを摑み中に入る。中は、薄暗く本が大量に並んでいる。魔道具なども並び豪華な感じがする。

「凄く、豪華ですね、中も広いですけど仕組みが気になりますね」

「おや、いらっしゃい」

「あら、ラウルスさん家の奥さんお久しぶりですね」

「こんにちは、今日は、息子の誕生日で本を買いにきました」

「この赤髪が、息子さん? お嬢さんかと思いましたよ」

「そうなんですよ、よく間違われます」

 あれ、僕て、そんなに間違われた事ないけど、女装した以外で、間違われたっけ……、あっ、あれか――。

「それで、どのような本をお求めですか?」

「フルグル決まっているの本は?」

「そうですね、身体能力系の本を買って欲しいです」

「理論系じゃなくていいの?」

「はい、問題ないです」

 借りてる系の本が、理論系だからどうしてもそっちが、欲しいだよね。これで、筋力の流れとか解れば色んな事が、出来るようになるはずだ。

「息子さんは、決まったようだね」

「それでは、身体能力系の初級を買います」

「お母様、初級ですか!」

「簡単に、身体を動かす方法とかは、初級に載っているけど嫌だった?」

「それで大丈夫です」

「毎度ありがとうね」

「こちらこそありがとうございました」

 フルグル、初級て聞いた途端ショックを受けたような顔をしたけど、内容を聞いたら嬉しそうにしてたわね、良かったわ……これで、カメッリア事も今後あるし、元気でやって欲しいわね。

「それじゃ、いきましょうか」

「はい、お母様」

 こうして、買い物を終わり、自宅へと戻ってくるこれから誕生日をお祝いする為に――。

「ただいま~」

「「「おかえりなさい」」」と三姉妹で、迎えてくれる。

「カメッリア、準備は、終わったの?」

「はい、皆でやって終わりました」

「ロートゥス、マールムもありがとう」

「可愛い弟の為です」

「可愛い弟の為だよ」

 そこは、かっこいい弟の為だよて聞きたかったけど、ま、何か嬉しいからいいや――。

「ピュルガトワール、ヴァイスハイトは、帰って来たの?」

「先程帰って来て、作ったのを付けてもらってます」

「フルグル、カメッリアお姉ちゃん所にいくぞ」

 僕は、そう言って、歩けるのに、抱っこされて、部屋に連れてかれる。後ろからは、姉妹がついてくる状態だった。

「ご飯になったら、呼びますので遊んでいるように……」

「「「「は~い」」」」

「カメッリアお姉様、久々に、お飯事ままごとして遊びませんか?」

「それなら今回は、娘やるよ私」

「フルグルは、お母さん役でよいとして、お父さん役は、ロートゥスでいいよね」

「良いよ、お父さん役」

 何故僕が、お母さん役なのと言っても、いつもの事だからしかたないか、さてと始めるかな?」

「お父さん、仕事行かなくていいの?」

「今日は、休みだよ母さん」

「娘二人も、俺と遊ぶのを楽しみにしてたくらいだぞ」

「あらやだ、一日ずれていたわ、ごめんなさいね」

 こんなお飯事を一時間近くやっている時に、下から声が聴こえてきた。

「はい、フルグル、扉を押してみて」

「よいしょと」

 扉がゆっくりと開く――、そして、中から――。

「「「「お誕生日おめでとう」」」」

「フルグルおめでとう」

「あ、ありがとうございます」

 どうやら、誕生日の準備を隠してたらしく、食卓がきらびやかな感じで、凄く豪華な部屋に変わっている。飾りとかも手作りで、とても綺麗にキラキラ光っている。食事も豪華な感じで、凄く美味しそうな物が沢山ならんでいる……、テーブルの上は、凄く豪華で、夢のような世界だった。

「二歳の誕生日おめでとう」

「ありがとうございます」

「それじゃー、乾杯しようか―――」

――フルグルの二歳に、乾杯―――。

 皆が、ガラスで、出来たコップを鳴らす音が、部屋中に響き渡る――。

 僕も、手で持てるコップを貰って、一緒に乾杯をした。去年よりも豪勢な誕生日だった。

「フルグル、これは、私とお父さんからよ」

 僕は、さっき選んできた魔法書を受け取る。本の重さもあるけど……、嬉しさがこみあげてくる。本当に、ありがとうと心から思ってしまう程に……。

「はい、これお母様から教えてもらった」

「お子様ランチて言う食べ物らしいわよ」

「お婆様も、凄い事をなさる」

「次にあった時は、お礼をしないと」

 お母様が、教えてくれたレシピだけど勉強になったわ、こんな料理もあるなんて、本当に頭が上がらないわね。あんなにも、フルグルが喜んでいるわ、あんな顔見るの初めてかもね。今日が、良い日になってよかったわ。

「フルグルのご飯美味しそうだね」とカメッリアお姉様から言われる。

「僕の食べかけですけど、『あ~ん』しますか?」

弟君おとうとくん恥ずかしい言葉禁止」

「それでも、一口だけ下さい」

 僕は、お姉様の口に、そっと……、お子様ランチを口に入れてあげる。おいひいねと言ってくれたお姉様だったが、その後に、続く様に――、姉妹もお口をあけている。そのまま三姉妹に、『あ~ん』をしている僕だった。

「さて、最後は、ケーキよ」

 真っ白な雪のようなクリームが、載っているケーキ――、果物が溢れるくらい載っている。ゆっくりと僕の前に持ってきてくれた。

「はい、フルグル……」

「ローソク消して」

「ふぅ~」

「あっ、全部綺麗に消えたね――」

「魔法の火と違って、ローソクの火て綺麗だよね」

「私もそう思う」

 そういえば、前世て、お祝い事は、お母様にしてもらえなかったな……、修業が忙しくて――。

「フルグル、どうしたのあんなに泣いた事なかったのに」

「大丈夫?」

「皆に、お祝いされて、嬉しかったです」

「本当に、ありがとうございました」

「やっぱり、まだ子供なのね」

「あなたの涙を見て、何か安心しちゃったわ」

「ほら、ケーキを切るから貸してね」

 お母様が、人数分ケーキを切っていく、人数分綺麗に、切って配っていくのだった。本当に、皆ありがとうと心から思える誕生日だった。

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