一人称語り

猫田芳仁

1 私

1 私


 フォーマルな一人称であるためか、堅い、まじめな印象。そういった人物によく似合う。あるいは、落ち着いた人物。言い方が悪いが、カタギの一人称。

 もちろん、そうでない人物が使っても。「私」は一人称によるキャラ立ちが弱いので、良くも悪くも汎用性の高い一人称。

 私はそれこそ真面目なキャラクターか、モブかの2択で使う。


2 わたし


 漢字の「私」よりも、キャラクターとしての色合いが強く出る気がする。生きている感じがする、というか。

 こちらも汎用性は高い。優しい女の子から邪悪な魔導士まで。

 私のキャラクターでは、これを一人称とするキャラクターが最も多いと思う。


3 わたくし


 女性ならお嬢様、お姫様の鉄板一人称。語尾はですます調か「ですわよ」が素敵。まっとうに深層の令嬢にするもよし、姫騎士的ななにかにするもよし。私はどっちも好き。お嬢様口調の肉弾戦超強いキャラとか好き。最前線で敵をちぎっては投げちぎっては投げしてほしい。

 男性なら堅苦しい侍従キャラクターに似合う。主人に盲従してよし、小言を言ってよし。「わたくし」を使う高貴な男性キャラクターは、あまりいない気がする。

 

 取り回しの難しい一人称でもある。

 殆どの一人称はひらがなにしても2~3字なのに、これは4字もある。仮に「わたくし」で一人称小説を書くとすると、文章のリズムが狂って仕方がない。キャラクターの性格にもよるが、言葉選びに神経を使う一人称だと思う。


4 ワタシ


 拙作で「信用ならない人物」の一人称として使っていたことがある。

 あるいは、その土地の言葉が不自由な外国人。

 後者の場合、ほかの台詞にもほどよくカタカナを織り交ぜることで外国語訛りや不慣れさを表現できる。


5 あたし


 若い女性。

 別に不良じゃなくても使うイメージがある。

 関西人じゃなくても一人称が「ウチ」ってコがいるのと一緒。

 ……一緒?


6 アタシ


 「あたし」より蓮っ葉。こっちこそ不良娘。

 なげやりで、将来の展望がない、あるいは生きていることに意味を見出せないイメージ。

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