神々の遊戯へようこそ~Welcome to playing of gods geme~

蓬莱汐

プロローグ

 満月が不気味に大地を照らす夜。

 ツリーハウスの屋根上で独り、皐月烽火さつきほうかは月を眺めながら風を全身で味わっていた。

 風になびく銀髪にまとわりついている腐臭。


「最近の勇者ってのは、味気ねえな。こんなんで英雄扱いされるんなら、俺は神かよ」


 彼の住むツリーハウスの下方。遥か下には、勇者と思わしきが散らばっている。その数は十数名。何も、今日だけのものではない。

 毎日のように勇者に狙われる彼は、その度に勇者を地に還してきた。

 産まれた時には、既に才能が開花を済ませていた彼。烽火は未だ敗北というものを味わったことがない。


「神……か。そうだ、神だよ。神なら俺を楽しませてくれんじゃねえか?」


 勢いをつけ、その反動を利用して立ち上がる。

 ふと、下方を見て、勇者の屍に群がり鳴き止まないカラスの中に、珍しい一匹を見つけた。


 ――白い……カラス?


 全身真っ白な羽毛で覆われたカラス。それは、屍に興味を示さず、ツリーハウスに向かって上昇していった。


『お前が……皐月烽火だな』


 白いカラスは烽火の眼前まで迫ると、深く太い声で語りかける。

 質問ではなく、確信を持った、確認のような問い掛けを。


「そうだとして、お前は何だ?」


『私は神使に限りなく近い、ただのカラスだ』


「……何言ってんだ?」


 そんなことを言いつつも、烽火は手を顎におき、まじまじと自称神使を観察する。

 そんな烽火に苛立ちを感じつつも、神使は変わらない声音で告げた。


『おめでとう、皐月烽火。君は参加権を得た』


「参加権……?」


 神使は一拍おき、続けて言葉を発する。


『神々の遊戯場で行われる、とある遊びの参加権だ。もっとも、参加権を持つのは貴様だけではないがな』


「ちょっと待て……把握しきれねえ」


 烽火は頭を抱え、念仏のように自己確認をする。無理もないことだ。

 聞いたこともない単語を織り込まれた事を告げられれば、誰でもこうなるのは必然だ。


『まあ、貴様が理解しようとしまいと私には関係ない。兎に角、移動するぞ』


「ちょ、待てよ!」


 目の前で輝き出す神使から目を隠し、強く瞼を閉じる。同時に激しく風が吹き、ツリーハウスが悲鳴を上げ、雲が吸い込まれていく。



 ***



 次の瞬間、烽火は円卓の前に居た。

 静かに目を開けた烽火は驚愕した。


「なっ? え、は?」


「ここはどこ?」


「なにここ……」


 烽火が感じたことをその場にいる七人の少年少女が、同時に口にする。


「やあ。ようこそ、神々の暮らす天上へ」


 全員が声の方へ首を向けた。

 そこには、金髪碧眼のイケメンが深く腰を掛けていた。














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