黒髪と香水

青山えむ

第1話

 クラス会を開いた。高校を卒業して二年、居酒屋に行ける年齢になった。このクラス会で感じた変化は特に女子の見た目だった。

 彼女達はほぼ全員化粧をし、髪型が変わっていた。パーマをあてたりストレートになっていた。

                  ○

 高校時代は髪を結う規則があった。所謂みんなひっつめ髪だった。隣の高校の規則は緩くて、みんなふわふわ髪をなびかせていた。今夜は誰も髪を結ってなんかいない。ロングの髪をふんわりさせたり巻いたり、艶々の髪の毛をさらさらさせたりしていた。

 ファッションも少々大人びていた。私の中でクラスメイトの最新の私服の記憶は、高校三年生の遠足だ。あの時はネルシャツやデニムシャツが流行っていた、揃ったように全員足下はスニーカーだった。二十歳になった今、スニーカーを履いているのは集まった人数の半分程だ。男子ですら、スニーカーを履いていない子が居る。

 洋服は全体的に白っぽい配色が目につく。素材は髪の毛同様ふんわりしている子が多かった。このまま合コンに行けるだろうという服装だ。

 私は無地の白ブラウスにベスト、ハーフパンツに靴下とローファー。髪型は日本女子誇りのおかっぱ頭に黒縁のそれっぽいダテ眼鏡と、高校当時と変わらないいでたちだ。


 女子の一番の変化は、痩せて綺麗になった子が居る。見覚えのない綺麗な子が居たので「誰?」と周りに聞いた位だ。その子は高校一年生の時、私の後ろの席だった子。

 入学式を終えて初めての教室、初めてのクラスメイト達。一番前の席だった私が「ちっ、前かぁ」と嘆いて後ろの席の子に興味が行くのは自然な流れだった。彼女は元々綺麗な顔立ちをしていた。けれどもよく見ないと気づかないだろう。少しふくよかな顔の輪郭と体型がそうさせていた。

 中学時代に顔の綺麗な女の子達に囲まれていた私は、何となく顔の【嘘っぽい】感じと【本当に】の微妙な差を感じ取れるようになっていた。後ろの席の彼女の大きい瞳と色素が薄いハーフの様な雰囲気に「発見してしまった」という気持ちになった記憶がある。


 目立たなかった彼女が見事に花開いた事はちょっと漫画みたいな展開だけれど、想定内だ。高校時代、彼女の美しさに一番初めに気付いたのはきっと私だ。そんな独りよがりな考えを一瞬持ちつつ、自分の見る目の確かさを証明出来た気がした。


 みんなの近況を聞く。家庭を持った子や合コン三昧の子。仕事で早速営業が大変なリーマンやってる子や恋人と上手く過ごしている子など、高校時代と変わらない笑顔と笑い声が絶えなくて嬉しい。

 私はフリーターをして、近頃ライブハウスによく遊びに行っている。高校時代からバンドが好きだったので、クラスメイトからは「外見同様、変わらないね」の言葉を頂戴した。

                  ○

 一次会をお開きにしようという事になり、二次会は? と誰かが言った。ここは飲み屋街ではないので二次会に繋がるお店が無い。普段あまりお酒を飲まない私は【二次会に繋がる】という感覚すら持っていなかった。

 明日は午後からイベントがあるし録り溜めている音楽番組を観たいので私はここで帰る事にした。何人かは次のお店を何処にするか相談していたようだ。

                  

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