ギルドマスターは異世界に行っても忙しいようです

@0728summer

プロローグ

「おい、ユート今からカラオケに行かないか?」

 遠くからユートがいつも聞いている声が聞こえた。大学の講義も終わり、早く家に帰ろうとしている時にユートは誘いを受けた。


――何で、こんな日に誘うんだよ。


 ユートは心の中でそう呟いた。そして、相手に向かって言った。


 「ごめん無理、今日はしたいことあるから」


 今日はユートが待ちに待ったメトロポリスというゲームの最新アップデートの日だ。

 ――メトロポリスとは自分の好きなキャラクターを3体までカスタマイズし冒険するというゲームだ。VRの一人プレイ専用ゲームのため、出てくるキャラクター達は全員AIなのだがその性能は人間と変わらない領域まで達しているため、人気を博している――

 ユートは、アップデートしたメトロポリス早くプレイするため、誘いを断った。

 

「じゃあ、俺、もう帰るから」

 

 ユートは相手に言った。そして、机の上の荷物をリュックの中に片付け始めた。

 

 「また、ゲームかよ。なら仕方ないな。程々にしとけよ」


 ユートは余計なお世話だと思ったが、口に出さずに教室を出た。


――そんな事よりも早く帰らないと。


 全力で走ったが赤信号に引っかかった。

 早く帰りたかったがこればかりは仕方がないと思ったユートは、メトロポリスのアップデート情報を見るため、スマホを開いた。そこにはレベル上限解放やその他の色々な情報が記載されていた。


――なるほど、レベル上限の解放かこれは予想通りだな。


 ユートがそう思いながら、メトロポリスのアップデート情報を読んでいると、横の人がユートに向かって叫んだ。


 「おい、そこの君危ない!」


 ユートは、スマホばかりに気を取られていたせいで周りの声が聞こえなかった。 ユートがようやく異変に気づいたのは、暴走したトラックが目と鼻の先に近づいていた時だった。その時にはもう、手遅れだった――。


*  *  *  *  *


 ユートが目を覚ますと、上下左右が真っ暗なよくわからない空間に立っていた。ユートは周りを見渡して首をひねった。ユートの頭の中はすっかり冷え切っていた。ユートは自分でもなぜここまで落ち着いているのかわからなかった。


――俺は、死んだんだよな? ここはどこだろう?


 ユートがそう思っていると、疑問に答えるように道と立て看板が現れた。ユートは立て看板には――どちらかに進めどちらかが天国もう片方が地獄そう書かれている――と書かれている。


――地獄か天国かを運で決めるのか。こういうシステムになってるんだ。なるほどね。


 どちらにしようか決めていると、足跡で描かれた道が浮かび上がるように現れた。

 天国も地獄も行きたくなかったユートは、どこか懐かしい気がするこの道に進むことに決めた。そしてユートはその道をどんどん歩いていった。


――この道どこまであるんだろう?


 ユートが心配になり始めたとき、歩いている道の先に針の穴ほどの光が見え始め、ユートは安堵感と興奮のため走り始めた。どんどん走っていくと光が大きくなっていき、そしてユートを包み込んだ――。


――まぶしい!


 ユートはそう思ってぎゅっと目を閉じた。


ーー確実に何かが始まる。


 ユートは心の中でそう思った。

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