吾輩は三毛猫である
五十音 順
女性化する身体
第1話 僕におっぱいが…
僕は、この春から男子校に通う「普通」の高校生だ。
勿論「普通」と言っても、誰にでも多少は「普通」じゃない部分が存在する。
僕にとっての「普通」じゃない部分…それは、男なのに胸が膨らんでいる事だ…。
「普通」だった僕は、去年の今頃、乳首がむず痒く感じ、触ると痛い「しこり」がある事に気が付いた。
やがて乳首の「しこり」は腫れ始め、乳首と乳首の間隔が外に向かって広がり始めた。
よく見ると胸部全体が乳首を先端に、尖るように外に向かって膨らんでいた。
僕は体の異変が怖くなりネットで調べてみると、それは「女性化乳房症」と呼ばれる病気だと分かった。
女性化乳房症は、僕くらいの年代の男子には珍しくない症例で、体内のホルモンバランスの異常が原因で発症し、症状自体は一過性のもので放置しておけば自然に治ると書かれていた。
僕は安心した。
しかし、半年が経過しても、僕の胸の膨らみは一向に縮まる気配はなく、それどころか、円錐状に尖っていた膨らみが丸みをおびてきた。
更に、僕の小さかった男の乳頭は、直径と突起が共に1センチくらいの大きさに肥大化し、盛り上がった乳輪も3センチくらいの直径となり、まるで哺乳瓶の吸い口のような形状になっていた…。
僕は、女性下着メーカーのサイトを参考に胸囲を測ってみると、膨らみの下の胸囲が67センチで、最も膨らんでいる部分の胸囲が78センチもあり、僕のバストはA65というサイズに該当することが分かった。
僕の胸の膨らみは、女性の基準で見れば貧乳の部類に属するが、僕の裸は貧弱な上半身や、大きく丸いお尻との相乗効果で、男には見えない状態になっていた。
こんな体、親にも見せられない…。
僕は大きく隆起した乳首に絆創膏を貼り、タイトなTシャツで胸の膨らみを潰し、その上から大きめの服を着て体形を偽装していた。
しかし最近では、薄い生地のシャツでは、胸の膨らみを誤魔化しきれなくなっていた。
それは、走ったり階段を昇り降りすると、肥大化した胸が揺れるからだ。
僕は揺れる胸を固定する為に、百均で買った腰用のサポーターを胸に巻いて乳房を押し潰す事にした。
体の異変を親にも知られたくなかった僕は、サポーターを洗濯する事が出来ず、三~四日置きにサポーターを使い捨てにしていた。
僕は必死に胸の膨らみを隠し続けたが、ある日、同じクラスの大島が
「お前…胸に何か巻いているのか?ブラジャー?」と聞いてきた。
僕は突然の指摘に動揺したが、動揺したのは僕だけではなく、周りのクラスメイトたちも動揺していた。
どうやら、僕の胸の異変に気付いたのは大島だけではなく、クラスの全員が気付いていて、僕に胸の話をする事は暗黙のルールでタブーになっていたようだ。
大島は空気の読めない奴で、思った事を直ぐ口にするタイプだった。
僕は凍り付いた空気を解凍するために
「ホルモンバランスの異常で、一時的に胸が腫れる病気なんだ」
と明るく答えると、友人たちは堰を切ったように、僕を質問責めにしてきた。
「入学式の時から気になっていたけど、それっておっぱいだよな?」
「本当に一時的?」
「身体測定の時、偶然見たんだけど…その胸もっと大きいよね?潰してるの?」
「俺なんか、便所でお前のチンポを確認するまで、本気で女だと思ってたし…」
男子校の生徒にとって、おっぱいは最も関心のあるモノだったようで、中には胸を触らせて欲しいと言う奴までいたが、僕は触られると痛いという理由で彼らの要求を却下した。
僕の胸の膨らみは、既に誤魔化しきれない状況になっていた…。
僕は意を決し、体の異変を親に打ち明けると、母も僕の体の異変に気付いていたようで、男でも乳がんになる危険性があると言い、僕を病院に連れていった。
僕は大きな総合病院で色んな検査を受ける事になった。
上半身裸になった僕は、診察台に寝かされ胸にジェルを塗られると超音波を発生する器具で胸を押し潰されたり、マンモグラフィーという器械で胸を押し潰されたり、触診で胸を押し潰されたりした。
僕の敏感な乳首は、その都度、涙が出る程に痛んだが、そんな事より複数の病院スタッフに膨らんだ胸を見られる事の方が精神的に苦痛だった。
また、僕の異変は胸だけの筈なのに、何故か男性器の診察まで行われた。
胸が膨らんでいるから、本物の女だと疑われたのかな…。
他人に金玉をゴリゴリと触られるのは気持ちの良い事ではなかった。
そして、血液の採取をされた後に、精液の採取までされる事になった。
僕の異変は胸部なのに、なんで下半身の検査ばかりするのだろう?
病院の小さな個室に案内された僕は、女性の看護師さんからフタ付きのコップを渡され、オナニーをするように言われた…。
個室で一人になった僕は、緊張でアソコが中々大きくならなかった。
僕は若い看護師さんから
「あの子、今オナニーしているんだ」
と思われていると考えるとアソコが疼き出し、勃起していないのに射精してしまった。
僕は変態かもしれない…。
やがて精液の採取が終わった僕は、自分の精液の入ったコップを若い看護師さんに差し出した。
すると看護師さんは
「カップは、そちらの棚に置いてください」
と言って微笑んだ。
恥ずかしい…。
そして、最後に精神科のお医者さんの診察も受ける事になった。
どうか、僕が変態だという診断結果が出ませんように…。
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