第7話
解る。
その驚愕はものすごく、理解できる。
普通、自己紹介で「
だが、世の中にたまーに、見た目だけでは性別の判断が付けられない方が本当に極たまーに、いらっしゃるのだ。
そんな希少人材の代表とでも言うべき、隆の性別を見破ったメイド服のエレナさんは、流石はお嬢様付のメイドの鏡だ。
何しろ、独身の令嬢の名誉を守る為、また安全を確保する為には、例えどんな男性とであっても、密室で二人きりにする訳には行かない、それ故に、周囲の人間に対しての観察眼は、達人の域に達していると云っても、過言ではないと言えよう。(変な言い回し。)
男と思われていなかった隆は、orzな体勢でその場にうずくまりたい衝動を抑えつつ、ひくつく笑みを浮かべて、独白気味に言った。
「えぇ、よく間違われるのですが、自分は男ですよ!」
「あぁ、男らしさがちょっと足りないかもしれませんが、男ですとも……」
「……見えないかもしれませんが、間違いなく男なんです……」
自分で言っていてだんだん落ち込んできている隆だった。
しかし、シルビア嬢は、聞かなっかった
「まぁ、それではエレナに同席してもらって、御者を鷹の爪の方に任せるのでは、いかがかしら?」
どうやら、これまでの道のりは、メイドのエレナさんが、御者をこなしていたらしい。
隆の落ち込み様に、どうしたらいいかわからなかったマルコは、これ幸いと、その話に乗っていくことにした。
「あぁ、御者ならうちのダヴィが慣れておりますので、お使いください!!」
そこで、今まで黙っていたマリアが、何故か隆の服の裾をつかみ、言葉をはさんだ。
「……私も、……同席、……する」
「あ、あぁ、そうですか……、……マリアさん、なんで自分の服をつかんでるんですか?」
「……迷惑?」
「いえ、特には……」
そう言うしかなかった隆だった。
「マリアが懐くなんて、初めて見ました」
「すごい珍しいですね」
ダヴィもホセも驚いている。
「まぁ、いいだろう、二人の馬は馬車に結び付けて警戒は前にミゲル、右後ろにハイメ、左後ろに俺がつくフォーメーションで行こう」
「ホセは、いつも通り先行して偵察を頼む」
「「「了解」」」
隣町に行くにはここからだと川に沿って北上し魔の森が見えたところから東に草原を突っ切る事になる。
そこからは川から離れることになるので最後の休憩は道が東に向かう曲がり角のところになる、さっき隆が森から出てきたところだ。
そこまでホセが、先行先駆けして偵察を行い、その後を馬車が並足でゆっくり進む事になるので、道が川から離れるところまでは、4、50分は掛る。
2、30分で息も切らさず走り切った隆は、バグってるのだが、本人が気づいておらず、誰も指摘することも出来ないので、気付かれていないままとなってしまうのだった。
何はともあれ、出発する一行であるが、馬車の中は、何とも言えない空気が流れていた。
進行方向に向かって背を向ける形で、隆とマリアが並んで座り、後ろ側の進行方向を向いた席に、シルビア嬢とエレナさん主従が座る事になったのだが、詰めれば4人は座れる席に、ゆったりと、ほどほどの距離感で、シルビア嬢主従は座っているのに対し、隆とマリアは、席の中ほどに、ピタリとくっついて座っていた。
さすがに隆もおかしいと思ったのか、マリアに尋ねた。
「マリアさん、もうちょっと離れて座りませんか?」
「……マリア」
「え?」
「……マリア、……でいい」
「あー、呼び捨てにしろと? ハードル高いなぁ……」
こくこく頷くマリアはだが、隆から離れようとしない。
気まずい。
何故、こんなに懐かれているのか、判らないし、人前である事も、気まずさに拍車を掛けていたが、かと言って、邪険に扱うのも違う気がして、どうしていいのか全く分からない隆は、途方に暮れてしまった。
「……精霊、……沢山、……綺麗、……暖かい、……安心、……」
「ん? 精霊?」
珍しく、たくさん喋ったマリアだが、やはり隆には、意味が解らなかった。
そこに、馬車に乗ってから、黙って微笑んでいたシルビア嬢から、助け舟が出された。
「マリア様は、エルフでも古い家系の直系に当たる方なので、普段から精霊に親しんでいて、その姿も見えているのですね」
「そして、タカーシ様のまわりには、たくさんの精霊が集まっているので、安心できる、とおっしゃっている様です」
「そ、そうなんですか? 自分のまわりに精霊が? てかエルフ?」
ここでふと気付くが、よく考えなくても隆以外は全員女性だった。
そこで、今までちゃんと見る機会がなかった、女性陣を改めて見てみると、まず、シルビア嬢は、20歳前後の、金髪碧眼で、彫りの深めな顔立ちは、大人びてはいるものの、あどけなさも残り、先ほどから、隆に見せている微笑みも、作ったものではなく、心からの歓待を示していた。
髪型は、多分、左右に三つ編みを結ったあと、それぞれを頭上に回して、重ねて留めた様な、長髪をすっきりとした感じに、纏め上げている。
身に着けている若草色のドレスも、華美なものではなく、質素な、それでいて若い娘さんが着ていても、おかしくない、かわいらしいフリルを、くどくない程度にあしらった、上品な仕上がりのものだった。
全体的には、清楚なスレンダー美人といった出で立ちだ。
エレナさんは、多分シルビア嬢と同い年ぐらいで、緑の瞳のほんわりとした優し気な顔立ちで、服の上からでもわかる巨乳美人さんだった。
栗色の髪を、一本の三つ編みに纏めて背中に垂らして、白のリボンで結び、白いヘッドドレスを付けていた。
服装は
多分、シルビア嬢の護衛も兼ねているのだろう。
そして、隆の隣のマリアさんは年齢不詳の、色白で
日本では見たことがない、金色の瞳、薄い金色に近い白い、いや銀色の髪は、多分、戦闘の邪魔にならない様にする為に、肩までのおかっぱに切り揃えていて、前髪は、眉の高さでぱっつんと切り落としているので、低身長と併せて、お人形さん感が半端ない。
しかし、
この世界でのエルフとは、はるか昔に精霊の血が混ざったといわれる人々の事を指していたので、耳の形では判断できなかったのだ。
服装は紺色のローブを羽織っている為よくは見えないが、時々薄いブルーのワンピースが見え隠れしているように思えた。
そして隆に寄り添っている為、不本意ながら気付いてしまったのだが、この方、お胸が大きくて柔らかい。
馬車が揺れるたびに,ふょんふょんと隆の腕に対して、その豊かさを主張して止まないのだった。
(やべー、マリアさん隠れ柔らかテロリストだー!)
流石に口には出してはいないが、なんだか隆がなにを言ってるのかも、判りたくはなくなってきた。
何はともあれ、本当は色々と聞きたかった隆だが、こんな天極プレイ状態の為、何一つ解決しないまま、ホセが先行していた場所、道の曲がり角まで来てしまった。
ちょっと憔悴した顔で馬車を降りた隆と、それに引っ付いているマリアを見たマルコは、馬車内でどんな状態であったのか想像できたが黙っていた。
そして、火を起こして湯を沸かしているホセに話しかけた。
「ホセ、どんな感じだ?」
「リーダー、それが大人しいもので、一匹も姿を見せませんね」
「それどころか、気配としては、だんだん遠ざかってる様に思えます」
マルコが尋ね、ホセが答えているのは、魔物の気配のことで、ここでホセが馬車の到着を待っている間、探っていると、不思議なことに、魔物達が、だんだん遠ざかって行く気配を、読み取ることが出来ていた。
まぁ、原因は隆が近づいてきていたからなのだが……、そんな事とは知らないホセもマルコも首をひねっていた。
「不思議な事もあるものだな……、だがまぁ、警戒は怠るなよ」
「了解です」
どんな時でも油断はしない、さすがはBランククランのメンバーである。
「聞いてください」
マルコが、全員に話掛けた。
「とりあえず、ここで最後の休憩を取りましょう」
「ここからなら、一本道で森際の町フロンテラまで1時間前後ですし、こんなに遅くなる予定ではなかったので、食料は非常食しか有りませんが、いまホセがお茶を用意していますので」
それを聞いて隆はマルコに声を掛けた。
「食料なら多分、全員分出せますよ? 魔法で」
「…………ま、魔法で? ですか……」
もう驚かないと誓ったマルコだったがそんな魔法は聞いたことが無かった。
「「「「「「「…………」」」」」」」
いや、マルコだけでなく、そこにいた全員がそんな魔法は知らなかった。
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