こんな図書室は嫌だっ!!

蓮野 志希

プロローグ

いつもと変わらぬ、春の夕方特有の少し肌寒い風が、図書室の広めのスペースを微量ながら吹き抜け、柊木幽は軽く身震いする。

夕方あたりの日光は眩しすぎず、なおかつ暗すぎずで、読書にはうってつけの光源だと言える。

そして放課後まで図書室に残る生徒はほぼ皆無。

ここは、この時間は最高の読書空間だった。


少なくとも前学期までは。


「先輩先輩!! カーテンが、カーテンが!!」

「うをおおおおお、なんで俺は振られたんだあああああ!!」

「うるさい! 実験の邪魔よ!!」


木造の床は水浸し、カーテンはボロボロになり、なおかつ知人たちの近所迷惑になりかねない騒音。

カーテンが破れたおかげで日光はよく入るが、逆にそれが虚しい。本に水が被っていないことが唯一の救いだ。


「ああ、どうしてこうなっちまったのか・・・」

その呟きは誰にも届く事なく、霧散するのみだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る