春に恋して、夏に焦がれた私たち
落合 咲香
第1話 出逢い
私は、
「おかえり、紫音!部活、決めた?」
「ただいまぁ。うん〜…気になってる部活はもうあるよ。
「私も!なんとなく良いなぁって思ってる部活はある!今日はその部活の見学行って帰ろうと思ってる」
「おー、そっか!了解了解。今日は別だね。私もちょうど気になってる部活、見に行こうとしてたから良かった。それで笑実、気になる部活ってどこなのッ」
「んふふふ〜ど・こ・で・しょ・う!」
ーーキーン コーン カーン コーンーー
笑実のもったいぶった話し方を超えた回答をしようとした時、予鈴がなったので、また後でねと席に戻った。
「はぁーーーん。やっと授業終わったね。紫音がどぉうしても気になってそうな顔をさっきしてたからさ。」
仕方ないなぁ、やれやれという雰囲気で一番前の席から一番後ろの私の席まで、わざわざやってくる笑実の相手をしながら帰り支度。
「あぁー、うん。たしかにもう、どおおぉうしても気になってたわよーう!」
「でしょ?そうだとおもったー」
「いや、待って、ボンちゃんやないかい。が欲しいじゃん、今のは。」
「ボンちゃんって誰よーう!」
「ワンピース読み直して来て。それで?なんの話だっけ。」
「ああ、そう、私が見学にいく部活の話。弓道部に行こうと思ってる。どう?びっくりした?」
ニコニコ、びっくりしてほしそうな顔でこっちを見てる笑実に私は、
「へー!あぁ!そうなんだ!意外!もっとなんか、バスケ部とか、バレー部とか?ガツガツいくタイプの運動部かと思った。」
「でしょー!実は私、高校は弓道とか、武道系?って言うのかな、古き良き的な運動をしてみたかったんだ。とくに落ち着きのない私が弓道なんて向いてないと思ったけど、心を落ち着かせて大人な女性になる、一つの道かなぁなんて思ってさ。紫音は?結局今日行くところは何部?」
「私は、高校生になったらずっとやろうって決めてた絵を描きたくて、、、。だから、美術部。」
授業前から続いていた闘いに、ようやく終止符を打てた私達はお互いの良き出会いを願いながらバイバイをした。
ファイッオー、ファイッオー、ファイッオー
ファーイトファイトー、ファーイトファイトー
イチ、ニ、サーン、ニーニッ、サーン、サン、ニッ、サーン
廊下を歩いていると、グラウンドで練習をしている部活の多くが見えた。
私たち、一年生の南棟の三階から渡り廊下を歩いて、二年生の塔をそのまま通り抜ける。そして、北棟へと繋がる渡り廊下を渡り、階段で一つ上の階へ登る。社会科準備室、音楽準備室、音楽室、書道室、の前を抜けると美術室にたどり着く。
随分長い距離を急ぐ気持ちで、テンポ良く歩いて来たからか、単純な緊張かは分からないが、確実に心臓の音は大きかった。
息を、吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、ドアを三回ノックした。
ーーコン、コン、コンーー
「………」
もう一度、ノックをしてみる。
ーーコン、コン、コンーー
「………」
「…………っはぁっはぁっはぁ…」
息を吸ったままだった。
3度目のノックをしたがやはり、返事は無く、意を決して、滑りの悪い扉を両手でガラガラと大きな音を立てながら開けた。
そこには、絵を描いている女性が居た。
「失礼しま…す」
「…………」
元気よく入ったものの、語尾はかなりしぼんだ音量になっていた。
そこには、少し猫背で、キャンバスに向かっている、女性がいた。
何を思って描いているのか、何を見て描いたいるのか、素人の私には到底わかることではなかったが、彼女が一心不乱に絵を描いているその空間に釘付けになった。
彼女の集中が切れた時、初めて私に気づいてくれた。
「!?!?!?」
「あ、突然すみません…。見学希望で来ました。一年六組の
「よく喋るね。そんなに褒めてもらえたってなにもでないよ?私はすみれ。二年六組の田中すみれです。紫音ちゃん、ようこそ美術部へ!」
どうやら、未経験者でも入部可能らしい。
すみれ先輩の、絵を描いている時と話す時の空気の差にギャップを感じた。柔らかい雰囲気と、嫌味のない言葉遣いに意外性を感じずにはいられなかった。
入部は即決だった。
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