第35話イクメンに花束を


父がとうとう引退いたしました。


うちの両親は仕事第一主義者でした。

仕事命の人であり、昭和の染み込んだ人でもあります。

父は亭主関白とはちょっと違うのですが、ネイティブの男尊女卑というか、「お茶」と言えば温かいお茶が目の前に出てくるのが当たり前の人です。「お茶くらい自分で煎れたら?」と言うと、真顔で「え?なんで?」と言う人です。

性格はどちらかというと、家族に対してはちびまる子ちゃんの父親、ヒロシのような人なのですが。

ええ、すっとぼけています。

そんな父ですので、育児なんかノータッチ。

でも、今になって後悔しているようです。

子供達に何もしてやれなかった──

今でこそ親になって有り難みが分かりますが、実際子供のころは随分寂しい思いをしました。

子は親になり親の気持ちを知り、親は孫を見て我が子を振り返る。

お互いに想い合えたら、それでいい。

我が子に出来なかった分、孫には甘々のじいちゃんに仕上がった父に、私はある日とんでもないことをしました。



上の子がまだ歩けない頃

実家へ帰省していた私が両親と出かける時に

「じゃあお父さん、上の子ちゃんを抱っこしてくれる?」と抱っこ紐を装着させました。

その時の父の顔が忘れられません(笑)

なんとも言えない顔で抱っこ紐を装着した父親の姿を見て、私はハッとしました。

そうか、お父さんはこんなこと初めてなんだ。

子供を抱っこすることはありましたが、紐を使っておんぶなどは母の役目でした。

パパに抱っこ紐してもらうのが当たり前の私は、何の躊躇いもなく父親に同じ事を頼みました。

途中で気付いたのですが、面白いのでそのまま抱っこしてもらいました(笑)

母も驚いていましたが、面白がってそのまま出掛けました(笑)

父もちょっと面白がっていたので、いい思い出になって良かったと思います。


最近では料理も始めたりして、孫のためにいろいろ作っては送ってくれます。ありがたい。遅れてきたイクメン、頑張ってー!

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