――作品紹介―― モダン・タイムス
ヒュパティア「作品紹介、3回目ね」
カズミ「唐突だけど、みんな「雨降り袖」って知ってるかな」
エル「本当に唐突だな。そもそも何の話だそれは」
奏「
エル「よく知ってるなそんなこと」
奏「漫画『王様の仕立て屋』を読みましたから」
エル「漫画の知識なのか…………しかも、スーツを作る漫画なんてあるのか」
奏「まあ、エルさんはどちらかというと、スーツよりゴスロリの方が似合うと思いますわ」
エル「…………それなら、竜舞もダークスーツにカッターシャツが合うのではなかろうか」
奏「言ってくれますね」
(スタッフの笑い声)
ヒュパティア「で、その
カズミ「普通スーツってさ、皺ひとつなくピッシリしてる方がカッコいいじゃない? まるで板金板を貼りだしたように堂々としていて、肩もきっちりしてて」
ヒュパティア「ふつうはそうね。商談なんかの時によれよれのスーツを着て行ったら、足元みられるわね」
カズミ「けれども、敢えて皺を出して全体的に柔らかく作ることで、野暮ったさが消えてむしろ余裕があるように見えるって、なんだか不思議じゃない?」
エル「確かに俺みたいなやつが着ても似合わんだろうが、三日月が着ればいい感じなんじゃないか」
カズミ「ありがとう。まあ、そんな感じで、小説でも完璧できれいな作品だけじゃなくて、雰囲気が暗かったり、薄汚れていたり、難解だったり、そんな欠点をあえて特色にして、全体的な完成度を高めるのも、重要だと思うんだ」
――――今回のテーマ――――
『A Dustland Fairytale ~ゴミ溜めからの逃走~』
ドクター・KC 様:著
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884861019
ヒュパティア「ファンタジー、時代劇と来て、次はSFなのね」
カズミ「このお話は、近未来の退廃的なアメリカ都市を舞台にした、サイバーパンクものだね。元エリートだったヒロイン――サラは、ユニーと呼ばれる高性能ヒューマノイドを率いるクラブに勤めていたところで、元技術者だった主人公――ダグと出会う。栄光を失った二人は、ごみ溜めと呼ばれるこの街で、どうあがいていくのか―――――」
エル「こういった、昔ながらのロマンスは久々に目を通したな。まあ、昔とは言っても、そう何十年も前のことでもないけれど」
奏「作者がこの作品を最後まで読んだ感想が「映画化決定!」だそうですよ。その気持ちは、よくわかりますね。なにしろ、全体的にミュージカルのような雰囲気がありますからね」
カズミ「ウエストサイド物語のような王道の恋愛ものや、アップルシードのようなサイバネティクスな世界観が好きな人には、特におすすめだ」
ヒュパティア「技術の進歩があっても、人間の強さと弱さ、醜さと美しさが放つ、一瞬の輝きは変わらない……読んでいてそう感じるわ」
エル「で、冒頭の雨降り袖とこの作品の関連性ってなんだよ」
カズミ「悪く言うつもりはないんだけどね、最近のカクヨムの作品はやや単調になってきたかなって思うんだ。でもそれは、小説を書き始めるときは自分が書きやすいものからっていうのがあるんじゃないかと思う」
奏「作者の処女作は、別サイトでかつて連載していたエルさんが主人公のお話でしたね」
エル「戦記物だったが、今思うと碌なものではなかったな。それから紆余曲折を経て現在ここに書いているが、そこに至るまで結構いろいろ書いていたりする」
ヒュパティア「だからこそ感じるのよね。この作品みたいに、退廃的な雰囲気や、一見魅力的ではなさそうな主人公を活躍させるお話が、いかに書くのが難しいかって」
奏「まあ、どんなお話が書きやすいかは結局人それぞれだと思うのですが、経験が浅いうちはキャラの作り方に慣れていませんので、主人公はかなりの高い能力を持たされていることが多いです」
エル「そこから脱却して、本来は魅力的には見えないキャラを、一瞬でも輝かせられるか…………これがなかなか難しいと思うぞ」
カズミ「それこそまさに
ヒュパティア「なるほどね。世界観もそうだけど「綺麗に作る」よりも「綺麗じゃないのに読める」ほうが技術がいるわ」
奏「ネットが張り巡らされ、自由を失った街と、捨てられたものの中に希望を見出す“丘”の住人達。人間のしぶとくたくましい生きざまを描いた、見事な作品だと私は思います」
カズミ「現代の巌窟王と言われた奏さんが言うと、迫真さが増すね……」
エル「また、なんといっても物語の最後がインパクトが絶大だったな。これぞまさに、古き良きアメリカ映画の幕引き、エンディングは人生の数あるオープニングの一つだと誰かが言っていたが、まさしくそのとおりだろう」
ヒュパティア「やはりこういった作品は、すべてを細かく書いてはいけない。夢のようにぼやけた世界を、勢いに乗ったまま走り抜ける。そんな爽快感が、たまらないのよね」
エル「ちなみにだが、この作品のタグの一つに「ハヤカワ」とあったのが印象的だった。ハヤカワと言えば、ハヤカワ文庫が思い浮かぶだろう。本屋泣かせの独自規格だが文字が読みやすく、有名作品も多い」
奏「洋書の翻訳を読みたいと考えている方にはぜひハヤカワ文庫をお勧めしますわ。最も、此処を読んでいる方、でまさか「幼年期の終わり」や「夏への扉」を読んでいない方は、まずいないと思いますが…………「メカ・サムライ・エンパイア」はなかなか面白いですよ」
ヒュパティア「第3回目は、これにて閉幕ね」
エル「今回はずいぶんとあっさりした話し合いだったな」
奏「この手の作品は「どういった内容だったか」ではなく「どんな感じに読めたのか」を伝えていければと」
カズミ「じゃあ参謀本部も、次の作品はSFでいってみようか。ちょうどスタッフが未来人だし」
(「ヽ(°▽ °)ノ 」のカンペ)
エル「はるか昔に、カズミが出てくる作品とどちらを連載しようかと考えた挙句、結局没に終わった「アレ」のことか?」
(「(´・ω・`)」のカンペ)
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