第20話

仕事に追われる毎日

2学期に入り、子供達とも打ち解け、やりがいも出てきた


平井先生の消息は依然としてわからなかった




学生時代から付き合ってる彼、隼斗はいつも明るくて私の心をほぐしてくれるような優しい人だった


夜、隼斗から電話が鳴った


「美香!わかったんだよ!」

「何よ、いきなり」

「先生だよ」

「へ?」

「だからー、美香、探してただろ?平井先生」

「えーー!ほんとーー!!」

「うっさいなぁ、声デカい」

「っで、何処にいたの?」

「北海道で教師をやってるって。俺の先輩が教育委員会にいて、平井先生の親友のことを知ってたんだよ」

「そうなんだ。その親友の方と連絡とれるかな?」

「たぶん大丈夫だと思う」

「じゃあ、頼んで!出来るだけ早くよ!わかった?隼斗」

「はいはい。あいっかわらず、美香は強引だよなぁ」



数日後、平井先生が今でも連絡をとっているという親友の今田先生に会うこととなった


一通りの挨拶をすませ、席につくとすぐに

今田先生は穏やかに微笑み、私の顔を見つめた


「彼女の...お嬢さんなんですよね?

以前、平井から写真を見せてもらったことがあったんですが、とても綺麗な柔らかい感じの方でした。

よく、似ていらっしゃいます」


「そうなんですか。私、母に似てますか?」


「はい、とても」


「あの、今日は平井先生のことをお聞きしたくて...。

お呼び立てして申し訳ありません」


「いえ...」


今田先生は少し間をあけて、懐かしそうに話し始めた


「平井はあなたのお母様と別れて、もう、恋愛はいいって、投げやりになってて...見てられませんでした。

何とか落ち着きを取り戻した頃に、幸せになれって、結婚を進めたんです。

あいつのことをとても大切にしてくれる同僚の女性でした。

平井も幸せになるって、薫さんと約束したからって、そうなろうとしました。

でも、幸せにはなれませんでした。

5年後...離婚しました」


「それから、何もかも1からやり直すって、ここを離れたんです」


私はただ、相槌を打つぐらいでどう答えていいか、わからなかった


「あの時、僕はあいつに結婚を進めなければ良かったんじゃないかって、後悔しています。

返って、傷を深くしたんじゃないかって。

平井は今でも、あなたのお母様を思い続けています」


「母も平井先生のことを忘れたことはないと思います。

私はどうしても2人に幸せになってほしいんです。お力を貸していただけませんか?」


「もちろんです」


「ありがとうございます」




今田先生と分かれて、夕暮れ時の街をフラフラと歩いた



平井先生の10年間の日々

どんな思いで生きてきたんだろう

そして、母も...




少し遅れて歩いてた隼斗が隣に並んで、私の手を握った


「美香...大丈夫だって。きっと、上手くいくよ」


「隼斗...」


見上げるといつもの彼の笑顔


「なっ」


頭をポンポンとして、握った手を引き寄せる


はにかんだ横顔を見てるとたまらなく愛しくなって、彼の腕にぴたりと寄り添った


側にいてくれるだけで、こんなにも安心出来るなんて。


お母さんも平井先生のこと、

こんな風に思ってたんだろうな




お母さん...

もう、空を見上げなくていいから

いつも、目を凝らして見つめてた微かな星の光


眩しいくらいに輝く光を私が掴んであげるからね



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