第11話
ほんの少ししか会えない時間
僅かしか触れられないひととき
あなたの笑顔と温もりを思い、会えるその時の為に生きてる。
それが恋するってことなのかもしれない
私達はせめて、美香が卒業までは誰にも知られてはいけないと細心の注意を払った
彼は仕事が終わるといつもの駅より3つ先の駅で降りる。
私は駅から少し離れた国道沿いのコンビニの駐車場へ車で向かう。
彼が後部座席に乗り込む
「おかえり」
「ただいま」
一瞬微笑み合い、近くのホテルに入る
部屋に入って、やっと、私達は普通の恋人になれた。
でも、それも、数時間だけ…。
「帰らなくちゃ」
「もう?」
背中から抱きしめた裕太の唇が耳朶に触れる
「…うん、だって…あまり、遅くまでは…」
抱きしめる力を強くする彼
「ねぇ?聞いてる?」
「聞こえない」
身体の向きを変えて彼の頭を抱えて髪をといた
「お願い、そんなこと言わないで」
素肌に触れる髪がくすぐったい
「薫、これ、やばいから、
こんなことされて、帰せるわけないだろ」
まだ、冷めきらない身体
両手を押さえつけられ、鋭い目になった彼が荒々しく全身にキスを落とす
抵抗する間もなく、また、彼に溺れてしまう
このまま、あなたに吸い寄せられて1つになってしまえばいいのに
これは夢なのか、現実なのか…
彼に抱かれながら、フワリフワリと遠い世界を彷徨い続けているようだった
ふと、気付くと、私はまた現実に引き戻されてた
裕太を駅で降ろし、急いで実家に帰る
「お母さん、遅くなってごめんね、
しつこい上司につかまって、二軒目まで…」
母に嘘をつくことで作られる大切な時間
偽りと背中合わせの恋愛でも
すごく幸せだった
かけがえのない時だった
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