旧約の世界 伝道者の書

第82話わたしはこのむなしい人生において、もろもろの事を見た。～

（原文：第７章15,、16）

15 わたしはこのむなしい人生において、もろもろの事を見た。

そこには義人がその義によって滅びることがあり、悪人がその悪によって長生き 　することがある。

16 あなたは義に過ぎてはならない。また賢きに過ぎてはならない。

　 あなたはどうして自分を滅ぼしてよかろうか。

人の世には、様々な事例がある。

正義の人と称された人が、その正義を貫くことにより、滅亡してしまう事例。

悪徳の人と称された人が、悪知恵を働かせて、天寿を全うする場合。

しかし、伝道者は次のように語る。

自ら考えた正義を過信すべきではなく、理論を過信すべきではない。

元々、人間の正義と理論などは、手前勝手なもので、不完全なものなのである。

自らの手前勝手な不完全な正義と理論に拘泥し、自らを滅ぼすなどは、神の意思に反することである。

自らが「正義」と信じすぎること、この「理論」が正しいと信じすぎること。

そこに過信が生まれ、謙虚さを失い、その「正義」と「理論」に従わない他者を排撃するようになるし、その「正義」と「理論」を実践できない自らをも責め立てることになる。

「不完全」であっても、「生かされている」ことに、まず感謝すべきなのかもしれない。