第25話、言葉の裏は針千本

 所変わって白帝学園食堂。


 前回説明しそびれたから今更だけど説明します。


 改めてここは食堂。しかも霊能科と普通科が混合してるこの学園唯一の食事の場である。


 ざっくり言っちゃうと校舎がお隣さんなもんだから間に建てちゃおーってな軽い気持ちで建てられたのだとか。これ学園長談ね。


 そしてこれも学園長の余談。霊能科と普通科は仲良くない。というかすこぶる仲悪い。見た目は犬猿の仲だとは思えないって言ったら一部始終を見れば分かるとのこと。


 只今隣には轟木がいて、一足遅く注文をとりに行った高築を待ってる状態。轟木に話しかけても見事なスルースキルを駆使されて俺可哀想になってきたため事の真相を確かめるために周りをチラチラ気にしてる。


 ……………が。


「やっぱ仲悪いって訳じゃないと思うけどなぁ」


 ケンカも何もない平和そのもの。学園長の言ってたことが嘘なんじゃないか?


「霊能科と普通科の生徒がケンカしてるとこなんて見かけないし、仲良しとまではいかなくても仲は悪くないよな?轟木」


「いんや、一部ではめっちゃ仲悪いぞ」


「うぉっ!?高築!いつん間に隣に!?」


「飯冷めるぞー。早く食え」


 びび、びっくりした……轟木のいる方を向いたら高築がいた。何このドッキリ。轟木は高築の隣に移動していた。


「で、なんだよ急に。霊能科と普通科が仲悪いとかなんとか聞こえたけど」


 炒飯を頬張りながらたずねてきた高築。俺も冷めてきつつあるラーメンをすする。


「学園長とゲームしてる最中に世間話してたんだけどそのときに聞いたんだ。本当なの?」


「あれ見れば分かる」


 すっと指をさす方を見やる。


 そこには霊能科の制服を身に纏う女子生徒と普通科の制服を身に纏う女子生徒達が屯していた。


 両者の会話に耳をすませる。


「あら、普通科の皆さんこんにちは。今日も鍛練かしら?」


「こんにちは。ええ、そうですよ」


「力のない者は大変ねぇ。毎日鍛練なんかに時間を費やさないと力を得ることができないんだもの」


 訳:力のない役立たずの足掻く姿は滑稽ねぇ。


「そうですね、木野さん達のような代々その力を受け継がれる立派な家の出ではないので、日々の鍛練がものを言うんです」


 訳:親の七光りが偉そうに言うなよ。人の努力を踏みにじんな。


「あらあらごめんなさい。私、力を身につけるための基礎中の基礎の鍛練はしたことないから理解に苦しむわ」


 訳:基礎に努力が必要とかどれだけ低レベルなのよ。笑っちゃうわ。


「そうでしょうね、あなたみたいな陰陽師の血統の家に生まれた人には一生無縁な言葉ですよね。良いですねぇ元から力のある人は。生んでくれた親に感謝しなきゃ」


 訳:黙れ努力知らずの親の七光り。


「そうね。でもそれも総じて私の実力、ということだもの。嫉妬されないか心配だわ」


 訳:七光りで結構。負け犬の遠吠えもほどほどにしなさいよ。



 なんか、丁寧な言葉遣いの裏に刺々しい本音が入り交じってる気がするのは気のせいかな。


「な?オブラートに包んだ悪口のオンパレードだろ?」


 気のせいじゃなかった。


「俺ああゆう女同士のドロドロシーン好きなんだよね」


 まさかのカミングアウト!


「ええぇっ!?あんな醜い争いが好きとか頭おかしいんじゃね!?女の子達が争ってるの見てらんないじゃん!」


「だから良いんじゃん。無理に着飾って可愛く見せてるぶりっ子よりありのままの醜い姿をさらけ出してる女の方が可愛く思えるね」


「ちょ、おま、醜いはないだろ醜いは……」


 女子全員を敵にしかねない発言をぶちまかしたぞコイツ。


「まーとにかくあんなん日常だから気にすんな」



 結論。


 霊能科と普通科の生徒は判りにくいケンカを繰り広げてましたとさ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る