第18話、腐女子先生、興奮する
普通科のモノクロカラーのでっかい校舎に入り職員室へ……向かいたいんだけど、場所わかんないのに行けないよな。
という訳で近くを通りかかったあの女の子達に職員室の場所を聞こうか。
「トモちゃん髪飾り変えたの?可愛い~!」
「えへへ、たまにはいつもと違うおしゃれしたくて……似合うかな?」
「うん、すっごい似合うよぉ~!私も欲しいなー。おそろにしない?」
「うん、じゃあ今度一緒に買いに行こうよ!」
「やったあ!もっとおしゃれして彼氏つくってやるぅ!」
なんだか盛り上がってる会話に割り込むのは気が引けるけど、ここは勇気を持っていざ出陣。
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど、職員室ってどこにあるかな?」
俺が近付くとこちらを振り返り俺の顔を見上げる女の子二人。そして何故か視線が合ったとたん顔を赤く染めた。
「ああぁあの……しょしょ職員室ですよね!?そそそそれならこの階の右端の部屋が職員室です!あ、あそこの部屋です!」
しゅばっと指をさしてくれたからすぐに分かった。一言お礼を言って職員室へ向かおうとしたが、女の子二人に振り返った。
「ごめんね、さっきの会話聞こえちゃった。君みたいな可愛い子にはすぐに彼氏できると思うよ」
ああやってはしゃぐ女の子って可愛いよね。一生懸命可愛くなろうとする姿は誰でも可愛い。だから思わず言ってしまった。以外と恥ずかしいな。
「それだけ。じゃあね!」
恥ずかしさで今度こそ本当に職員室への道を小走りする。
あ、廊下は走るなって書いてある。歩かなきゃな。
慌てて小走りから徒歩にチェンジした俺の耳には「ああいう人彼氏にしたい…」という呟きが聞こえたが、廊下には男子もいたため誰か好きなやついるんかなぁくらいにしか思ってなかった。
職員室までは短い距離なのですぐに着き、ドアにある貼り紙を見たらノックをするようにと書かれていたのでノックをして入る。
今まで空間と空間の間を仕切ってたのはふすまばっかりだったから、こういう今どきなドアは初めてだ。
コンコン!
「し、失礼します」
職員室の中は机がびっしり並んでいて、その上には書類等の紙が散乱している。整った机の上にも紙が揃えられている。
朝だからか教師は皆だるそうに書類を手に取り仕事を進めている。
「あの、編入生の柳 爽です。担任の先生はどなたですか?」
目上の方には敬語。嵐武様相手だとつい無礼講になっちゃうけど、先生方にはきちんと敬語使って話す。
先生方は俺の存在に気づき、チラリと横目で見るも自分のクラスの生徒じゃないからかすぐに視線を書類に戻す。
あれ、まさか担任の先生今いないの?どうしよう。俺どうすれば良いの!?
「あーーーっ!!君が柳くんね!?ごめんねー、今行くからちょっと待っててっ!」
奥に繋がる部屋から高めな声が聞こえてきた。声を聞くだけで明るい女性だということはすぐに分かった。
良かった、担任の先生いた……いなかったら俺多分ここで立ち尽くしたままになってたわ。恥かかなくて済んで良かった。
何かしらの機械の音を除けばそれなりに静かな職員室の奥にある古びた扉を開けたのは身長がかなり低く童顔な子どもみたいな女性だった。
女性は俺を見つけるや否や手をブンブン振って合図しながらこちらに小走りで駆けてくる。
い、いや、そんなにちぎれそうなくらいブンブン振らなくても分かるから!あーホラ隣の先生に思いっきり直撃してんじゃん!痛がってんじゃん!迷惑行為は止めましょう。
「ハァイ♪君の所属する1年1組の担任の納賀 歩(のうがあゆむ)よ!これから一年間よろしくね~!」
声の通り明るく元気な活発そうな女性の先生だ。俺も改めて自己紹介する。
「柳 爽です。これからよろしくお願いします」
ペコリとお辞儀をすると「仲良くしよーねー」という言葉とともに手を握られた。
友好的な先生だ。嬉しい。
「じゃあ教室まで一緒に行こうか!準備するね」
机の上に置いてある紙やらファイルやらを手にして素早く職員室を出る納賀先生に続いて歩く。
「初登校遅刻の上に三日間の謹慎……学園長から聞かされたときはびっくりしたわよー!しかも霊能科のあの南雲くんが深く関わってるっていうじゃない!」
「はあ、まあ……」
「聞いた話じゃあ南雲くんのお気に入りで期待の未来の陰陽師らしいじゃない!どお?感想は」
「お気に入りじゃありませんしなんで俺が陰陽師になるのか知らないですがただの友達です!どんな噂ですかソレ!?」
「編入初日に妖怪討伐に引きずり出されて巻き込まれた挙げ句陰陽師の道に連れてかれそうになってる近いうち霊能科に転科しそうな南雲くんお気に入りの子って噂が立ってるよ」
「霊能科に転科とか間違ってもないですから!てか後半捏造されてる!!」
教室までの短い廊下に能賀先生の高いヒールの音が響く。……高いヒール履いてこの小ささだったらヒールなしならいったいどれくらいの身長なのだろう。
プレートに「1年1組」の文字が書かれている教室の少し手前まで来ると、納賀先生が決心したような真剣な目を向けてきた。
え?え?なんすか?急にそんな畏まられると緊張しちゃいますよ。俺何かしたかしら?
「南雲くんともっと仲良くなる気はないの?」
「……………はぁ?」
俺の胸元の少し下から上目遣いで目を爛々と輝かせている納賀先生の姿があった。何その期待の眼差し。
「もっと仲良くなって友達以上の関係になろうとは思わないの?ねぇどうなの!?」
興奮気味に鼻息を荒くして顔を近付けさせて問う先生の質問の意図が分からなかった。
友達以上……ってことは親友とか?
「友達以上!?友達で充分ですよ!それ以上の関係を築いたらこっちが持ちません!!」
「持たない……!?まさかあなた達そういう関係になりたいの?そのときは逐一報告して!!私大好物!!」
「あれ?」
なんか話噛み合ってない気がする。
「つかぬことをお聞きしますが、友達以上というのは親友ですよね?」
「何言ってんのよ!同性愛よ同性愛!!ホモ男子萌えよキャーっ!!」
恐る恐る聞くと予想だにしなかった返答が。
つか興奮してる。目ぇ輝いてる。すげぇキラキラしとる。
「聖職者が何言ってんだよ!!」
明るく元気な担任の先生は腐女子なるものだそうです。
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