p19 - 足跡


ぼんやりと過ごす時の中に

なにか忘れた気がしても

なにを忘れたのかさえ

どこへ忘れたのかさえ

思い出せないときがある


いつしかそれさえも忘れてしまう

いつしかなにかも消え去るだろう


人はそうやって

忘れ物をしながら歩き続けるのだ


そしてあるとき気が付くのだ

自分のポケットがからっぽなことに

そして唖然とするのだ

大切にしまっていた宝物が

あんなにも遠くに落ちていることに

今にも消えてしまいそうなことに


人はそれを抱え込み

消えゆく宝物に涙するのだ


涙も枯れ果てからっぽになった人は

ポケットがはちきれんばかりの落とし物を拾いながら

重たそうに引きずるのだ


少しずつだが確実に狭くなる一本道を

ゆっくりゆっくり歩くのだ

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