擬人化大戰 ――アマデウス・プリティ――

ゆきまる

 

――導入


 謎の奇病によって人類が地球上から絶滅して幾星霜。

 無人の荒野と化した地球では、神々が自らの信仰をより多く集めるため、次なる星の覇者を決める戦いを開始した。

 多くの陣営に分かれて数多あまたの万物より無限の”擬人化姫アマデウス・プリティ”が神々の手によって生み出されていく……。

 永遠に続くかと思われていた戦闘と殺戮。だが、その戦いもついには勝ち残った七つの陣営によるバトルロイヤルへと収束していった。

 火・水・風・土・金・光・闇。それぞれの神の寵愛を受け、次なる時代の支配者となれるのはただひとり。

 いま、地球の未来を賭けた最大最後の戦いが始まる――――。


 

――擬人化姫(アマデウス・プリティ) 一覧



【プリンセス・”V8(ブイエイト)”】


 朽ち果てた多くの車両が放棄されている新大陸のスクラップ工場。

 打ち捨てられた車の中より生み出された、鋼鉄の体とFRPのドレスをまとった機械の姿を持つ擬人化姫アマデウス・プリティ。火の神アグニの息吹によって背中に搭載された八気筒エンジンが唸りを上げる。手にした武器は心臓として移植されたレーシングカーの外装から作り出されたバンパー刀、『ステンレス・エッジ』。

 戦いの初期で重要な電装系を破壊され、一度は敗退する。その後、意思を持つAI自動車、キッドによってまだ可動している自動車工場”ラジエーターオータム”に運び込まれ、壊れた回路にキッドのAIを移植し、さらなるチューンナップを施された。大改造の末、【V8ターボ(ブイエイトターボ)】となって戦線に復活する。

 武装は様々な特車車両の力を自身と合体して思い通りに使いこなす『スーパービークルモード』。



【”海月姫(くらげひめ)”】


 海を司る水の精霊神、豊玉姫(とよたまひめ)の力を得て、海中から出現した擬人化姫アマデウス・プリティ。半透明の色とりどりな衣を幾重にも組み合わせた姿をしている。武装は硬い魚の骨を釣り針のように鋭く加工し、錨をつなぐ鎖で相手を捕縛する『フィッシャーマンズ・アンカー』。基本は水中や海上のみを主な戦場としていたが、水の中から引きずり出されて戦いに敗れる。力尽き海底へ沈んだ後、『神格向上』により主神が玉依姫(たまよりひめ)となって新たに復活。擬人化姫アマデウス・プリティとしての姿も【光海月姫ひかりくらげひめ】に変化する。

 再生後は自家発電能力を備え、『フィッシャーマンズ・アンカー・ボルトショック』で敵を拘束したあと、さらに電撃を与えられるようになった。衣装にも電飾が輝き、その光の残像で相手を惑わすような戦術を編み出していく。



【フロイライン・”ロケッティアX3”】


 遺棄された大陸のミサイル基地。一度として撃ち出されることなく格納サイロに閉じ込められたままの大陸間弾道ミサイル。そこから空を駆ける女神ワルキューレによって生み出された擬人化少女アマデウス・プリティ。主神と同じく、白いドレスに腕や肩、胸を守る防具を着けた格好で、頭の兜には小さな白い羽が生えている。

 背中にロケットパックを背負い込み、空中を自在に飛び回る。得意技は高所から一方的に敵を蹂躙するガトリングショット、『ウンターネーメン・バルバロッサ・アヴェンジャー』。空を飛ぶという利点によって最強であると自負していたが、他の擬人化姫アマデウス・プリティとの戦いで姿を消した相手に死角から狙い撃ちを受けて墜落した。

 その後、ワルキューレたちの『ヴァルハラ・リコーリング』によって復活。新たに【ロケッティアX3ブリュンヒルデ】として蘇る。

 生まれ変わった後は背中に担いだロケットパックがなくなり、純白の白い翼でより自由に空を駆け巡るようになった。武装は顕現した他のワルキューレたちとともにかざしたランスで襲いかかる『ヴァイス・ランツェンレイター』。



【百獣の女王・”ルッキオーネ”】


 人類が絶滅した世界でアフリカの大地を支配するライオンのリーダー、レオシルバ。その仔でいつか新たな王の妻となる運命の雌ライオン、ルキオ。

 医療の神、アスクレピオスによって擬人化姫アマデウス・プリティ、『ルッキオーネ』へと進化する。

 ライオンの毛皮をまとった少女の姿で素肌にはトラバルモチーフの模様が描かれている。手にした武器は象牙の槍だが、その力は触れたものの傷をたちどころに癒やす『ホワイト・スネイク・ヒーリング』。

 彼女自身は武器によって他の擬人化姫アマデウス・プリティを傷つけることは避けている。戦闘方法は己の肉体だけを頼りにした肉弾戦オンリー。その結果、遠距離からの一方的な攻撃によって傷つき、ヒーリングの治癒によってなんとか戦い続けるが、ついには力尽きた。

 アスクレピオスはルッキオーネの破れた心臓を取り出し、代わりに黄金に輝く、”獅子王の心臓ライオンハート”を移植した。新たなる力でふたたび立ち上がった少女は、【ルッキオーネ・ブライトハート・イル・レオーネレクス】として蘇る。純白に輝くライオンの毛皮をまとい、新たなる力、すべての動物たちの能力と生き物を自在に操る『パーク・オブ・ソロモン』で戦いに復帰する。



【くノ一・”駆逐忍者フブキ”】


 ランドヒノモトにて長らく闇の一党と激闘を繰り広げてきたオボロ流忍術。

「野を駆け、闇を逐電する者」と謳われた駆逐忍者の里。いまは使う者がいない忍者の武具がひっそりと隠されているだけだった。破壊と滅びの神、夜刀神やとがみが一本の忍者刀から擬人化姫アマデウス・プリティ、【ニンジャ・デストロヤー・フブキ】を生み出す。

 赤い忍び装束に身を包んだフブキはオボロ流忍法を駆使して、多くの擬人化姫アマデウス・プリティと死闘を繰り広げていく。だが、一度は倒したはずのライバルたちが復活によって新たな力を得るに従い、戦況は少しづつ厳しくなる。ついには忍術をすべて暴かれ、あわれフブキは帰らぬ人となった。

 だが、夜刀神はようやく死を迎えたフブキの体からすべての血を抜き、自らのものと入れ替えた。強すぎる神の血によってふたたび目覚めたフブキは、もはやまともな意識を残しておらず、本能のままに目の前の敵を討伐しようとする【討伐忍者(ニンジャ・クルセイダー)・モウフブキ】として蘇った。

 能力は夜刀神の血を利用して土の中から砂鉄を集め、それを刃に変える『無限錬成・血飛沫丸』。忍び装束は夜刀神の血が活性化してモウフブキになると赤から黒に変化する。また目が血走り、真っ赤になる。



【電脳王女・”ホワイト・シャイン”】


 人類が地上から消失以後、放棄されたネット上のアバターから雷神ユピテルによって具現化された擬人化姫アマデウス・プリティ

 主神ユピテルによって失われた電力を無限に蕩尽とうじんすることが可能。

 ランドヒノモト最大のネットワーク、コンコンコンピューターの『金毘羅ネットワークシステム』のチュートリアルアバターで、巫女装束を意識した白いノースリーブのシャツと赤いミニスカート、腕と足はむき出しの状態で、足元は白い地下足袋を履いている。クセの多いオレンジ色の髪をポニーテールにまとめ、目尻の釣り上がった大きな瞳が印象的なアバター。全体的に子供っぽい容姿となっている。

 戦い方は”金毘羅ネットワーク”の投射映像ホログラフィックシステムで相手を幻惑させつつ、3Dプリンターで製造された様々なモデルの火器で攻撃する『MAINCRAFT』。もっとも、手にした”光線銃”や”レーザーブレイド”といった玩具のエネルギーにはすべて主神ユピテルの雷が使われている。

 電源用のコードとコンセントを狙われ、電力を遮断された状態で一旦は敵に倒される。その後、ユピテルによって『神格化』を受け、【ホワイト・シャイン・ルナティックモード】として再臨。体格が大人びて衣装の色が黒くなり、髪型がツインテールになる。ハイテンションな笑い声で敵を威嚇しつつ、軌道上に浮かんでいる金毘羅ネットワークのシステムリンク衛星『KIZUNA』を利用して相手の位置を常に把握する。必殺技、『コラボレーション・オールショット』は数多くのアバターをホログラムで再現し、同時攻撃を敵に加える。



【ゾンビーメイデン・”ミカ・ロースト”】


 いまも地球上の大地に埋葬されることもなく、放置されたままの人類の死骸。

 かつての星の支配者達はやがて土に還るまでの時を静かに待っていた。

 冥府神ヘルがそのうちの一体、長い髪の女のミイラから創出した擬人化姫アマデウス・プリティ。土気色の肌に左右で分けられたウェービーヘア。ピンクのキャミソールとインディゴデニムのホットパンツというラフな出で立ちで戦いの場に赴いていく。

 【小麦色ローストのミカ】の呼び名通り、死人であるにも関わらずアクティヴに行動していくタイプ。手にした武器の『マジカル・チェーンソー・エッジ』を振り回しながら多くの擬人化姫アマデウス・プリティたちと戦い続ける。

 素材となったのが人間の死骸であるため、戦闘能力は決して高くない。傷つくたびに体中からドス黒く変色した血のような体液を辺りに撒き散らしていく。当初こそ返り討ちとなって何度も退散するが、ミカの体液に汚染された大地はその下にある埋められた人間たちの肉や骨から”不死の集団”を蘇らせる効果を得た。

 戦うたびに手勢を増やしていくミカの能力、『バブルヘッド・リビングデッド』に他の陣営は危機感を共有し、最初に倒すべき相手として一時的に協力していく。



【大地の娘・”ガイア”】


 擬人化大戰に介入を試みる、大地母神の化身。他の擬人化姫アマデウス・プリティのように神の御業みわざによって生み出されたものではなく、彼女自身が星の意思として実体化した存在。人類が絶滅した原因も自滅と同時に、彼女があえて助けようとはしなかったせいである。

 傷ついた地球を守るため、人類の痕跡を花と緑ですべて消してしまうのが目的。そのせいで次なる星の支配者を決める擬人化大戰を常に混乱させようとして動く。

 戦いの現場に花の中から出現し、自らが作り出した『タルタロス・ユニット』と呼ばれる各種の魔導機械、ヘカトンケイルシリーズやサイクロプスシリーズなどを地下から繰り出して戦闘の邪魔をする。擬人化姫アマデウス・プリティたちは最初、彼女を自分たちと同じ存在であると認識していたため、決闘の最中に乱入してくるガイアを忌々しい卑怯者と見ていた。

 基本的には擬人化姫アマデウス・プリティを倒すつもりはないが、地球の環境を汚す【ミカ・ロースト】だけは排除のために自ら協力を申し出る。暴走状態に陥り、無限にゾンビの大群を召喚する『バブルヘッド・リビングデッド・オーバードーズ』に対して、自身も最大級のタルタロス・ユニット”タイフォン”を投入。大地を覆うほどのゾンビたちをタイフォンでまとめて捕縛し、地球外へと送り出した。


 

――物語の結末


 【ミカ・ロースト】は無防備になったところを他の擬人化姫アマデウス・プリティによる連携攻撃を受けて地上から消滅した。これにより、残る陣営は六つとなる。

 ミカの脅威が去った後、少女たちはふたたび星の覇権を巡って戦いを再開した。

 それは擬人化姫アマデウス・プリティの命令者である神々が、この地球上でより強く力を得ようとしていたからだ。苛烈な戦闘の結果、各々がさらなる能力を獲得して、もはやガイアが放つタルタロス・ユニットさえ彼女たちの敵ではなくなってしまう。地上に残された多くの生命を巻き込みながら戦闘はより一層、激化の様相をたどっていく。

 ガイアはゾンビの大群とタイフォンを宇宙に送り出した力をふたたび使う。

 今度は擬人化姫アマデウス・プリティたちをさらに遠くの宇宙、地球とよく似た環境を持つ惑星”ホロウ”へと強制転移させた。

 ホロウの大地に突如として出現した擬人化姫アマデウス・プリティ

 だが地球から遠く離れた場所では、もはや”神に愛されし者アマデウス”ではなくなってしまい、普通の人間として生きていくしかない。

 こうして、未知なる大地に解き放たれた少女たちは、この星の新たな種として根付いていく。

 転移にすべての力を使い果たしたガイアは地球の中心で長い眠りに着いた。

 擬人化姫アマデウス・プリティを身代わりにして争いを続けていた主神たち。彼らも星全体が休眠していく中、次第に神としての力を失っていく。

 最後に地球は白い氷に包まれた姿となって宇宙を漂う。



――終了

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擬人化大戰 ――アマデウス・プリティ―― ゆきまる @yukimaru1789

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