どうしよう
「取り敢えずいくら交換するんだ?」
「帝都の物価次第だ。」
「悪いが長い間引きこもりだったんでね。最近の物価の価値はしらない。ただ、白金貨は日常的に使われていないというのなら、金貨、銀貨が数枚あれば当座は間に合うだろう。」
「なら魔石15個と金貨7シルバー50を交換してくれ」
「分かった。まず先に魔石をお寄越し。」
ポケットより魔石を取り出しガルダに渡す。
「確かにゴブリンの魔石だ。これはお代の金貨と銀貨だ確かめてくれ」
「いや、良い。そこは信用したいと思う。」
「ふん、全くもって甘っちょろい奴だね。」
ガルダの呟きが聞こえた。
「部屋は……庭師がいたころ住んでいたところが屋敷の裏にまだ残っているはずだ。
レンガ造りだった筈だからね。
そこを好きに使うと良い。
ただ、一言言っておくよ。
お前が妾の知らない時に誰かを連れて来ようと妾の知ったところではないし、それが誰であるかも知りたくもない。分かったね。」
「ああ。」
「それじゃあ、待ってな。今鍵を渡すから。」
そう言ってガルダは鍵をとりに階上へと上がっていった。
(心読みがいる以上必要な処置と言う訳だな。)
しばらくしてガルダが戻ってくる。手には真鍮の大きな鍵と何故か執事服を抱えていた。
「小屋は帝都より戻って来てから見ると良い。それとこれに服を着替えるんだ。」
(何故執事服?)
「早くおし、帝都にいかなきゃならないんだろ?」
(何故帝都にいくのに
執事服に着替える必要があるんだ……?)
謎は深まるのみであった。
◼️□◼️□◼️□◼️□
数時間後着替えた俺は近くの町へと行くことになった。
(そこそこ発展しているな……。)
道ゆく人に尋ね、馬屋へと向かう。
(帝都に行くのに馬が必要だと?しかも二頭。毛並みが良く見栄えが良く出来れば白馬……。
どんだけ要求が多いんだ。)
帝都に入るに当たってガルダなりに何か考えがあるらしいが、理由は一言も言わなかった。
(秘密主義も大概にしろよな)
それでも一応馬屋と思われる店に入る。
入るなり店主に上から下まで舐め回すように見られた。
暫くの後、彼の目にかなったのか揉み手で俺の側に近づいてきた。
「これはこれは、お貴族の方の家令様で?今日は何を用立てましょう。ご令息の為の誕生日の贈り物をお見繕いなら、丁度良い馬が入っております。気立てが大人しく……」
営業トークを延々と始める。
「帝都に向かうのに見栄えの良い馬二頭欲しい」
「左様でございますか……なら、丁度良い馬がいます。どうぞこちらへ」
そう言って小綺麗な厩舎へと案内された。
中に入ると純白の白馬が二頭おり、厩舎の職員三人がかりでブラッシングされている。
「こちらは先だってアミール公爵家で買われた馬の兄弟馬となります。品があって御家の家各を上げる為には最適かと。お値段もこれからのお付き合いを考え破格の50白金貨でどうでしょう?」
「良い馬だが、持ち合わせがない。」
そう言ったところ栗毛のサラブレッドと言って良いような馬へと案内される。
「良さそうだが……値段は?」
「たったの30白金貨です。こいつもお得かと思いますよ……?」
「そのだな……もう少し安いものを……」
「家の家各を低く見られてしまいますよ?ではこちらは……」
「待て。手持ちは今1白金貨と5金貨しかない」
「…………。田舎貴族の家令か……」
亭主がボソッと呟いた。
「ならこちらへ」
並びにあるボロい厩舎へと案内される。
(こりゃ酷い……)
厩舎の環境も酷かったが、馬のコンディションも相当悪そうだった。
「ここにある馬なら希望の値段で譲ってやるよ」
厩舎の中をゆっくり歩いていく。
「こちらはどうだ?大人しくて言うことを良く聞くぞ?」
(年を取ってヨボヨボしているだけじゃ……)
「こちらはちょっと元気ないがまだまだいける。体調さえ戻りゃあお買い得だ。」
(どうみても死にそうだぞ……)
色々案内されていく途中で、俺はある馬の前で立ち止まった。
そこには真っ黒な番と見られる馬が二頭いた。目だけ充血したように赤く俺を睨みつけ、コツコツコツと蹄を鳴らす。
鼻息も異常に荒い。
「おお、お目が高い。この馬は南方から高いお金を出して手にいれたものでして。今回特別に3白金貨でお譲りいたしますよ。いかがですか?この機会を逃したらまずこのお値段で手に入れることは不可能ですよ?
あなた様のご主人もきっと満足され、あなたの評価が格段に上がること間違い無しです。」
「いや……」
「なら、白金貨2枚、2枚でどうでしょう…?」
(やけに勧めるな……何か問題でもあるとか?)
『主、あれはスレイブニルだ。力無きものには決して従わぬぞ』
「店主、俺の目を節穴だと思っているだろう……。
この馬、何人蹴殺したんだ。正直言ってみろ。惚けても良いが無駄だぞ?
いざとなったらご主人様を通じて心読みを呼ぶからな。主を危険な目に合わせる訳などいかないからな……」
店主は真っ青な顔をし、抗弁を試みようとした。
「とんでもない。お客様の胆力ならこの馬さえも乗りこなせるものと思いお勧めしたのです。寧ろお客様以外に乗りこなせるものなどいないと言うのが正しいかと……」
「ほう、俺以外乗りこなせないと?なら俺以外買い手がいないということか?」
「……くそったれの家令め。お前みたいな蛮族を家令に据えている段階でお里が知れるは……。もう良い白金1金貨5で手を打ってやる」
「金貨5だ。」
「分かった分かった。このくそ馬連れてさっさとでて行きやがれ。二度とくるんじゃねぇぞ。それと返品は受け付けないからな。」
そう言って俺から金貨をムシリ取ると店主は馬小屋から出ていった。
(買い叩けたのは良いが……どうしよう。)
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