X デー→10/10推敲完了
「後で悪いが野営地まで来てくれ」
そう言った後ドワーフ軍団は野営地まで戻って行った。
「…………お前がしたいようにすれば良いが、色々と教え過ぎじゃねえか?」
ヤルが口を開いた。
「刀の話はまだしも戦闘方法や戦術はことによったら…………。
お前、最悪やつらと『剣を構える覚悟』ちゃんとあるんだろうな?」
「まさか? 彼らが俺の敵になるなんてあり得ないだろ。」
「やっぱり考えて無かったか…………。
本当お前甘チャンだな。
確かにこの鉱道内でお前とドワーフがぶつかる、その可能性は薄いだろ。
でも鉱道を脱出した後は?
もし彼らドワーフが王族の奪還に成功したら……?
その後彼らがどういう行動に出るとお前は思うんだ?
彼らを縛る虫は、お前のおかげ駆除可能となっているんだぞ。」
(彼らの行動原理は目には目を、歯には歯を……だったな。だとしたら……)
「受けた恨みを返そうと動くだろうな。取られた土地も取り戻そうとする筈だ。」
「そう言うことだ。
その時お前はどちらの立場に立つつもりなんだ?
人類側なのか?ドワーフ側なのか?
まあ、まだあと最低一年はある。それまでに良く考えておくんだな。」
「一年?」
「お前の虫退治方法は寒い時期しか使えまい?
もうすぐ春だぜ?
初冬に動き始めたとして準備が整うのは早くて次の春だろう。
冷石を使うって手もあるが流石に数を揃えられまい。」
(冷石?名前からして冷やす効果のある石か……。)
「それと、今回何故オーガ討伐にボロスが加わらなかったのか。その訳も考えておくんだな。
それじゃ言うこと言ったんで俺らも戻るわ。お前に頼まれた調べものもあるんでな。」
そう言ってヤル達も部屋から去って行った。
そして俺は一人部屋に残された……。
️□◼️□◼️□◼️□
一人になり、ヤルが最後に残した言葉を考える。
(『何故ボロスがオーガ討伐に加わらなかったか』か……。
それは……
オーガ討伐よりさし当たって重要な案件があったと考えるのが、まあ妥当だな。
ヤルと何か俺の居ないところで話したいことがあったとか?
…………
いやいや……
それはいくらでも他に機会はある。
無さそうだ。
だとしたら……?
ヤル達全員の戦闘能力を見たかった?
何の為に?………………)
身体に訳もなくゾクッと寒気を感じた。
(他に何か話した内容でヒントになるものは?
話しの中で何か違和感を感じたところが何かあったはず……
考えろ考えろ考えろ)
………………
暫く考えているうち違和感を感じたセリフを思い出した。
(確かヤルは
『確かにこの鉱道内でお前とドワーフがぶつかる、その可能性は薄いだろう……』
と言っていた。
何故『俺達とドワーフ』ではなく、『俺とドワーフ』なんだ?)
そこにヒントが隠されている気がする。
(そもそも彼らドワーフにとってヤル達の存在ってなんなんだ?
同盟者…………?
いやいや
どちらかと言うと、一時的に手を組んだだけの間柄だろう。
魔石をミスリルと交換で手に入れる、言わばギブ&テイクの存在でしかならない。
それに出自も片や披占領民、片や義賊と言え犯罪奴隷……だ。
人数的にも片や数十人、片や数百人と開きがある。
今は鉱山からの脱出と虫駆除方法の秘密共有という状況下で一時的に手を結んでいると考えるのが妥当だろう。
じゃあその関係が崩れたら?
…………
今回ドワーフは
脱出の為の魔石を自分達で確保できる目処がついた。
そして脱出も、ヨゴレ達の手を借りずに自分達で行える目処がついた…………
だとすると?
ヨウズミ?
しかもヤルと俺は『虫の駆除方法を彼らが手に入れたこと』を知っている……
キケン?
ならどう考える?
後顧の憂いを無くす為に
キエテモラウ……
なるほど……ヤル達の戦力評価が必要となる訳だ……。
俺がドワーフに良かれと思って動いた行動の結果がこんな結果をもたらすなんて……)
その考えにたどり着き俺はぞっとした。
(だとしたら?いつ彼らは行動に出る?
考えろ考えろ考えろ……)
(彼らの行動規範は……
『恩には恩を……仇には仇を』だ。
ならばヤルが報酬を受けとるまでは大丈夫の筈。
他に何か時期を絞り混む為のヒントはないか……
そうだ……
彼らは俺を害するつもりは無いはず。
ならば、俺がヤル達と離れて行動しているタイミングを狙うと見て大丈夫か。
ならばX デーは……
鉱山崩落前の報酬渡しのタイミング、俺が何らかの事情でヤル達と離れている時だ。)
(ヤルのこと、ここまでは考えに到って、すでに何らかの手段を考えているはず。ならばあとはその時俺がどう行動するか……それだけか。
重い……)
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