第2話 氷上黎人

 僕が事件の真相を探ろうとした次の日、いつものように学校で過ごした放課後。先輩たちと一緒に所属していた二次元愛好会の活動室に入った。そこには先輩たちの死亡事件によって、暗くなっている愛好会のメンバーがいた。

 ここにいるメンバーたちはみんな事故現場の写真を見ている。だからこそ嘘だと思って逃避することもできなかった。もっとも、僕は合成写真のような違和感を覚えているのだが。

 この暗く重い雰囲気の中で、昨日の僕の決意をみんなに話そうかと考えた始めたときだった。突如として入口の扉が開いて、知らない顔の男が入ってくる。

「この同好会ですよね。ついこのまえ呪いのゲームで取り殺されたという先輩がいるところは」

 僕らがその答えを口にするよりも、愛好会のメンバーそれぞれの反応の方が早かった。

「だったらなんだっていうだよ!」

 普段は滅多に怒らない愛好会員の人が反射的に言った。

「皆さんは事故現場の写真を見ましたか」

 そういって彼は事故現場の写真を胸ポケットから取り出して、長机に置いてみんなが見えであろう中央の場所にスライドさせる。

「これは明らかに合成写真です。一見騙されるように作られていますが、細かい部分で見ると荒が大きい。僕でも作れます」

 彼は携帯端末を取り出すと、動画のアプリケーションを開いて、似たような画像のメイキングを見せた。この動画を流しているときに、どういう観点から合成写真なのかという理由を彼は述べていた。

「つまり彼らは生きている可能性がある。そこで、この件に関して一緒に調査し共に真相を探ろうとする人はいますか?」

 男は愛好会のメンバーを一人ずつ見ていき、最後の僕で視線が止まる。その視線に答えるように僕は告げる。

「僕は君に協力するよ。最初に事件を聞いたときから違和感があったんだ。それに写真を見てからもどんどん強くなって、君の話を聞いて確信した」

 そのあと男は右手を差し出して、握手を求めてきた。

氷上ひかみ黎人れいとだ。氷上でいい」

「僕は山賀歩武。山賀って呼んで」

 お互いに自己紹介を終えたところで、僕たちに声がかける。

「あの、お尋ねしますが、具体的にはどうやってこの事件を調べるつもりなんですか」

 おそるおそるといった感じで、彼女は話しかけてきた。あまり話したこともなく、地味な印象を今でも持っている少女だ。確か児玉こだま弓夏ゆみかさんだ。

「答えは単純だ。俺たちもオーバードフレームをやって大会で優勝すればいい」

「それでもし、ゲームの呪いで死んだらどうするの?」

「そのときはそのときだ。噂が真実だったということで、それで終わりだ」

 氷上の言葉を受けて、不安がる愛好会のメンバーたち。確かに僕も考えなしのような印象を抱いたが、だからといって僕には高名な霊能力者の知り合いもいないし、代化案を思いつくこともできない。

 そもそも霊的現象がこの世に存在しているのか、そして今回の事件に影響しているのかもわからないけど。

「何かのリスクを背負わず、何かを得ることはできない。少なくとも俺はそう思っている。このリスクを背負う覚悟がない場合は、最初から参加するのはやめたほうがいい」

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