―機動史伝アクセリア―

篠原 章

Prologue

 俺の名はチヒロ。北原チヒロ。地球から来た。先に言っておこう。普通だ。数学が壊滅的だが、英語は父親に海外を連れまわされた影響で結構喋れる。なので偏差値は数学と英語の間をとって普通だ。


 遅刻や欠席もほとんどしない。趣味はアニメ鑑賞で、流行りものは大体視聴する。今の流行りは、既にオワコンの兆しが見えているアイドルじゃない。今、時代は異世界だ。(これもオワコン? いやそんなわけがない)


 俺はそう今、異世界を夢見ている。電車にひかれたり、ビルから飛び降りたりして死んだとき異世界に転生するあれだ。どうせ行くならケモ耳娘にドラゴン、巨大な怪獣とかそういうのがいる世界がいい。しかし残念なのが実際に電車に轢かれに行ったり、ビルからスカイダイブする勇気はなかったことだ。


 だけど偶然、本当に奇跡的にも俺は電車に轢かれて俺は異世界に行った。いや行ってしまった。だが、そこが俺の夢見た場所だという保証は、そうどこにもない。そんなことを俺は向こうについてから初めて考えた。


何でそんなこと考えるかって? そんなの簡単なことだ。


「衛生兵!」

「クソ、アームズだ!また来るぞ退避しろ」

バスター個人携帯用対戦車榴弾もって来い!」


 炸裂した榴弾のコンポジット炸薬が、ヘリコプターだった残骸から漏れ出すジェット燃料に引火して、真夜中の闇に赤い光を揺らがせる。その燃焼する匂いと硝煙が鼻腔に入り込み、否応無く俺の感情を刺激する。


そう、ここは戦場だ。










 

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