馬を引く者

江鋼 太値

第一幕 葛藤

第1話 馬を引く者VS赤龍

 ここは、世界の北の果てのとある島の中でも唯一人が住んでいるところで、名前は、島の情景が混沌としていることから混沌(こんとん)島(とう)と名づけられました。

 混沌島の人口は、馬約六〇〇匹と人約六一〇人です。その中の一匹の馬とその馬を引く者の話をしましょう。

 時は、紀元前六万年、場所混沌島、二人は島の最北にある屋根に藁の敷いてある二六畳半の五間(一間は、約五畳です。)の家に住んでいます。

 中には、藁を床に敷いた馬小屋と畳が引いてある部屋があります。

 玄関には、造りつけの台所があり、畳が引いてある部屋には、木で作ったタンスとテーブルが一つずつあります。比較的裕福な家です。

 その部屋に一人の青年がいました。

 その日も毎日のように馬にえさをやり、居間でお茶を啜りながら一息付いていました。

 すると、急に外が騒がしくなってきました。ドシーンドシーンという妙な足音が聞こえてくるのです。

 気になって外に出てみると、目の前に身長約10mぐらいの大きな赤い体の龍が立っているではありませんか!!

 馬を引く者は、怖くなって自分の家に行き、荷造りをして馬と一緒に出てくると、二人が家から逃げ出したと同時に家が龍によって踏んづけられてしまいました。まさに間一髪です。

 それから馬を引く者は、馬に乗り、鞭を打ち、猛然と逃げて逃げて逃げまくりました。髪は風をうけて逆立っています。髪は比較的少ないんですがね。

 服は緑の服を着て、顔は、あまり特徴があるわけでもありませんが、目はどちらも二重で、眉毛は細く、鼻は小さく、口は大きく、丸顔で、冴えない顔立ちをしています。外見だけで見ると、40代に見えます。いわゆる中年男性です。

 しかし、そのかいもなく無常にも崖に突き当たってしまいます。二人は逃げられないことを悟り、龍と戦う決意をし、身構えます。とても顔は恐ろしい形相になっています。

 それを見た龍は、

 「ほほう、我に戦いを挑もうというのかぁ。ならばその死という覚悟はできているんじゃろうなぁ。島の人達と同じように喰ってしまうぞ!」

 そうです、龍は、一軒一軒の家屋に火を吐いて、壊し、中の人とその人達が飼っている馬を食べていったのです。村中を探しても、今この島にいるのは、そう彼らだけなのです。そのため、窮地に立たされた彼らには、龍と戦って勝つことしか、生き残る道は残されていなかったのです。

 「戦うしかないと思って戦うことにしたが、勝てる気がしねー。」

 と馬を引く者は頭の中で思いながらも、

 「いざ勝負!!」

 と言っています。

 しかし、武器は何も持っていません。リュックの中にも食料と水と服と馬の餌しか入っていません。                

 なので、勝てるはずもなく、簡単に追い詰められてしまいます。

 龍は、目を見開け、鼻から煙を出しています。そして、二人は死を覚悟しました。龍は、口を大きく開け、二人を食べてしまいました・・・・・・・・・・。

 しかし、二人は食べられてはいなくて、白い衣を羽織って口ひげを蓄えた神によって助けられ、龍の背後に回っていました。

 龍は、口を動かしもぐもぐしていますが、何も口の中にはなく、あれ?と思っています。

 龍の背後では、神が、

 「馬と馬を引く者よ、今のうちに逃げろ。」

 と言っています。

 しかし、馬の主人(馬を引く者)が行こうと馬に言っても馬は何も聞かず、僕はここであんたと一緒に死ぬんだ!とも言っているようです。 主人は、必死に頑張って馬を引こうとしますが、全然引けません。

 それを見かねた神は、強引にこう言いました。

 「おまえたちの姿を私の力で変えてやる。」

 そして、本当に姿を変えられ、このままでは龍に二人とも食べられてしまうので、ついでに異世界へも飛ばしてしまいました。

 いっぽう一人淋しく取り残された龍は、獲物を食い損ねて悔やんでいるようです。

 「う~ん、よし、俺はあいつらを食べるまでは死んでも死にきれん!」

 と心の中に深く言い聞かせ、龍は二人を追うことに決めました。

 さて、このあと龍はどうなったのでしょうか?そして、異世界へと飛ばされた二人はどこへ消えてしまったのでしょうか?

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