デッド・オア・キス

0話 『プロローグ』

　普段は静寂に包まれているヴァルエスト大陸中心部に位置する森。

　 しかし、今日に限って森は喧騒（けんそう）を極めていた。

「助けてくれー！！」

「こんな化物、手に負えるか！！」

　 などと鎧を纏った男達が、一目散に逃げていく。

　 ――何が原因でみなが逃げていくのか

　 ――それは1人の少女であった。

　 白のワンピースだけを纏った少女である。一見なんの変哲もない普通の少女と思われるかもしれない。

　 しかし、そう思い手を出したら最後、その人は"殺される"。魔力を使い、火を使って殺し、水を使って殺し、風をつかって殺す。あらゆる魔法（マギア）を使って人を殺す。

　 そんな危ない彼女は巷ではこう呼ばれていた。

　――マギアビースト、と。

　マギアビースト。

　かつて、マギアゲールが行われていた時代、突如として現れた女の子。それぞれの大陸でも生まれ今は大陸のどこかで眠っていると思われている。

　 しかし、そんな危ない少女の進撃を止める者が決まった。

　 名はエーベルト・カールマー。魔法について経験、知識なしの三流ザーヴェラーである。

「俺にこんなことできんのかな⋯⋯」