すごくおもしろい話を書いた

 すごくおもしろい話を書いた。今までで一番の自信作。これだったら、みんなに読んでもらっても恥ずかしくない。みんながおもしろいって言ってくれる。pvが稼げる。応援コメントももらえる。★だって集められる。レビューもつくに違いない。大絶賛だ。コンテストにだって勝てるかもしれない。書籍化、アニメ化、有名人。そんな夢の膨らむ物語。


 でも、現実は違う。pvは増えない。★なんてもらえない。誰もこの物語に興味がないようだ。そりゃそうだ。無名の作家。おもしろいのかどうかも知らない作品に時間を割いたりしない。読んでくれれば絶対に後悔させないのに。読んでくれさえすれば。読んでくれさえすれば、絶対に。


 だったら、広告を出したらどうだ? 読んでくれないのはプロモーションが足りないからさ。もっと大々的にやればいい。テレビで何て言わない。ネット広告でいいからさ。もちろん金はかかる。それでもネット広告ならば払える額さ。足りなかったら借りてもいい。この物語はすごくおもしろいんだろ。だったら伝えなくちゃ。いずれは書籍化、金は返ってくる。金のことなんて気にすんな。


 ふと、そんなことを考えて、そして気づく。いや、そこまでではない、と足を竦めたことを。そんな大げさなことしなくても。お金を出してまで。もちろんおもしろいとは思っているけれど。でも……。


 あぁ、私は、自分の作品にそこまでの価値はないと思っていたんだ。


 おもしろいと自信を持ちながらも、お金をかけるだけの価値はない、と。そこまでやって、皆に読んでもらうほどの価値はない、と。その程度の評価のものを、私は掲載していたんだ。


 そんなことを考えると、もう作品を掲載できないので、この事実は胸の内の奥の方に押し込めておく。なるべく見えないところに隠して、気づかないふりをして、作品を掲載する。


 すごくおもしろい話を書いた。

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