バラード



それはうつくしすぎて

なんの実感もわかない

愛や恋をつめあわせ

誠実さでラッピングされた

やさしいメロディに

わたしのからだは

きっとふくまれない

ピアノもうたごえも

秘めごとの薄布のかげで

おろかになっていたわたしを

奏でない

それでいいのだろうと

わけもなくまとめる

人としてあるべきところの

境界線はあいまいに揺れて

わたしはところどころで

正直に言えば

はみ出したりもする

組みしかれるうえでは

おろかになっていたほうが

いくらかは賢明だと

思いはすれど

あなたは首がほそいのね

からめてみて

このまま内におさまるのも

悪くはないと思いはすれど

そう遠くないうちに

バラードに染まれずに

はみ出す時がくるはずで

そこにいるのが

だれなのかはわからないけれど

境界線のうちがわから

けものじみたわたしを飼いならすのは

さぞや楽しいことでしょう

やさしい殿方は

おろかなおんながお好きのよう

正直に言えば

そういうのって

わりときらいではないんです


線のそとがわ

いだくはずの腕で

わたしの首をしめてくれれば

なにも迷わず

蹴りとばせるのに




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