異邦人



知らない街で

私は知られていないだれかになる

知らない道の

自販機のコーヒー

無理をしたブラック

舌は嫌がる

夏はかしましい


炎暑の白昼に

あなたの機嫌は夕立

ほとぼりがさめるまでの逃避行

知らない川を見下ろして

コーヒーをなめる

すべて飲みきれそうにはなくて

でも川を濁すのはしのびない


結局あなたは

私を抱けば晴れるのだし

それでつじつまが合うなら

私は別にいやではないし

遠回りはしないでほしいと

思ってみても気持ちはそらぞらしくて

飲みきれないコーヒー

薄めるミルクなんてないから

ひとくち

儀式をくりかえして

大人になってみたり

子供にもどったり

この忙しさはなんなのだろう


夏はかしましく

知らない街で

知られていないだれかになって

後悔は飲みほせない

コーヒーをひとくち




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