さらばアオイさん

 朝、目覚めるとアオイさんはただの眼鏡に戻っていた。

 ただの眼鏡のアオイさんを掛ける。

 世界がよく見える。

 だけど昨日までの、アオイさんがすぐ傍にいた世界はとても輝いていたのに、まるでその光を失ってしまったように感じるのだった。

「アオイさんとの別れの時はこうしてみたら感動的なんじゃないかって想像したんですけど、どうですか」

「勝手に最終話作らないでくださいよ」

「しかしアオイさんが元に戻ってくれないことには、生活に不便が出るのですが」

 せめて新しい眼鏡は許可してくれませんか。

 とお願いしてみる。

「じゃあ、こうしましょう。家の外では眼鏡を掛けていい。でも家の中では私しか駄目です」

「それで充分ですよ。それじゃあ早速スティーブ十五号を買いに行きましょう!」

「そんなに転売してたんですか……」

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