第9話 先輩であり親友でもある人が道を違えた時
放置したエリーであったが次の日には全部忘れたようだったので思い出させ
てあげた。聞きたい事もあったしね。
「エリー、昨日俺の部屋に入ってきた時に見た事覚えてる?」
あっ!という表情になり言った。
「神様2人にあんな事させるなんて一体あんたなんなの!」
「むしろ俺が聞きたいんだけど。クロエ様以外の神様って誰も知られてない
はずじゃなかった?」
「
衝撃の事実だった。クロエ様以外の神様って人に接触してこないんじゃなか
ったの! おもいっきり接触してるじゃん!
「言ってもどうせ誰も信じないし発表もしなかったのよね」
「確かに」
みんなが知らないものを証明する事は難しい。特に対象が神様だし。
よし、なんとか膝枕とかなでなでされてた事から話題をそらす事ができた。
ついでに聞き忘れてた事を聞いておこう。
「エリーが既に取得してたスキルってどういう効果だったの?」
「大魔導と詠唱ね! これ昨日教えてもらった方法で見ればいいのよね。
ちょっと待ちなさい!」
目をつぶってスキルを見ているのかな。
こうやって目をつぶって物思いに
綺麗なんだよね。普段の性格はすごい直情的だけど。
「大魔導は魔導の発展型で詠唱は詠唱関連のデメリット軽減って書いてあっ
たわ! よくわからないわね!」
「両方とも魔法に関するスキルみたいだね」
「わたしが初めてアリス様にお会いした時に大魔導がどうとか言ってた気が
するわ!」
エリーは本当に頭が良い子なんだろうか。
「忘れるとこだったわ! ロック! あなた神様2人になんて事させてるの!」
こういうところで頭が良い
さん、神様は「人」ではなく「柱」で数えるのですよ。
俺もなんでいつもああなるのかわからないため誤魔化し続けるしかなかった。
「理解はしたけど納得はできないわね!」
「俺にもよくわからないからそういう事にしておいて」
しばらくしてこの話題から離れてくれるみたいだった。エリーは俺の部屋を
見回している。
「それにしてもロックって武器持ち過ぎじゃない?」
俺が泊まってる宿屋の部屋にはあちこちに武器が置いてある。武器コレクター
と言っても過言ではないと思う。
「これ全部使えるの?」
「もちろん。俺用のサイズにしてもらったオーダーメイド品もあるよ」
俺はまだ成長期が終わってないみたいで身長や体の大きさが少しずつ大きく
なっている。そんな俺では大人用のでかい斧や大剣は扱えない。
だから顔見知りの鍛冶屋にお願いして少し小さめで俺でも扱えるサイズの物
を作ってもらったんだ。
顔見知りになった理由も俺が武器コレクターで毎日のように店に顔を出して
たからなんだ。
「良い職人さんだから今度エリーにも紹介するよ」
「それは助かるわ! わたしの杖って学院時代から使ってたから少し痛んで
きてるのよね」
「それじゃ少しの間次のダンジョンへ向けての準備期間にしようか。予約し
たスキルを取得して初心者ダンジョンで連携の練習もしよう」
「わかったわ! その慎重さ、ロック本当に前衛なの?」
「この武器の山を見てどう思う? 紛れもない前衛でしょ」
エリーは部屋を見回しながら、
「えぇ、そうね……」
半笑いだった。
みんなにオススメされてすぐに予約できたスキルは3種類、隠密、鉄壁の壁、
即死回避だ。
これはもうスキル名を聞いただけで重要性がわかる。
ギルド職員さんもダンカンさんもジャックにもこれをオススメされた。事実、
デスれない俺はこの3つのスキルに助けられていくのだががこの時の俺はまだ知
らない。
俺がいろんな人に有用なスキルを聞きまくってたせいで戦闘狂になったんじゃ
ないかと心配された。
ジャックが一番酷かった。
「ロック! お前がそんなに戦闘を欲するようになっちまうなんて……。きっ
とあの女に
「いやいやいや。エリーは全く関係ないからね」
「そ、そうか……。俺にも話せないように呪いをかけられたんだな」
「どうしてそうなった」
「俺に任せておけ。必ずロックの呪いを解かせてみせる!」
エリーにめちゃくちゃボコられてた。もうやめたげてよ。デスらないように回
復させながらとか酷過ぎるよ! お願いだからもうデスらせてあげて!
ジャックの勘違いも酷かったがエリーの対応はもっと酷かった。笑い声をあげ
ながら魔法を撃ち続けるなんて……。俺も気をつけよう。
エリーにスキルを覚えさせていったら最凶になってしまう予感がした。
数日間をかけ予約した3つのスキルをエリーと一緒に取得した。
隠密は名前の通り隠れ、密かに行動する事を可能にするスキル。
鉄壁の盾は防御と魔法防御と状態異常耐性を少しずつ上げるスキル。
即死回避は即死攻撃を受けた際少しだけ体力を残し死なないスキル。
この3つのスキルはどれも成長型スキルらしい。オススメされたのも早めに取
得する事で成長を見込める事とその汎用性からだ。
例えばこの前取得した警戒と今回取得した隠密をエリーに使わせる。そうする
と周囲の敵を事前に察知し、敵から隠れたまま魔法で
一人でなんでもできちゃうんだ。これはつまり俺がいらない子になっちゃう。
エリーには黙っておこう。絶対に。
そんな裏技的な使い方をせずにパーティーとして正攻法な戦い方の練習を初心
者ダンジョンで繰り返した。
冒険者パーティーに魔法を使える者がいる事はほぼない。少なくとも俺は聞い
た事がない。安定した仕事がある魔法使いが冒険者になる事はないからね。
俺は本当に運が良かったのだろう。目の前のエリーを見ながらそう思う。
「どうしたのよ? さっさと次の敵を探すわよ」
「わかったよ。エリー」
「本当に変ね。 どこか具合でも悪いなら回復させるわよ?」
「俺がいつもエリーには感謝しているって事さ」
首を
「もっと感謝してもいいわよ!」
と、ニッコリ笑顔を浮かべた。
俺は本当に、本当に運が良かった。
ただトラウマを植え付けたジャックには謝った方がいいと思う。あれ以来ジャ
ックはエリーを見かけると「ヒィッ」と声を上げ逃げるようになった。
エリーがいない時に話しかけたらエリーの事を「エリー様」とか呼んでるし。
おかしな事に目覚めてないよね!?
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