第4話 初心者ダンジョンのボス討伐は許可を取りましょう


 この世には魔法がある。

 生まれつき魔力を持つ人しか使う事ができないみたい。その確率は1000

人に1人ぐらいという、多いのか少ないのかよくわかんない数字。


 そうやって魔力を持ち魔法を使う素養がある人は、全員が国の支援で国立魔

法学校に通い将来が約束されている。

 国の魔法関連機関に所属したり、魔法学校で研究者になったりとか。


 街で病気になった子供や老人は死に戻りできない場合がある。誰かが殺して

死に戻りさせるなんてもってのほかだしね。

 そういった人達を少しずつではあるが回復させる事もできる「魔法医師」も

魔法学校を卒業した人の進路の1つ。

 デスれない俺は魔法医師のお世話になるかもしれない。



 俺には魔力はないし魔法を使う事はできない。

 そんな俺はこれから「スキル」の取得を目指そうと思ってるんだ。

 一部の汎用性の高いスキルは取得条件がわかっていて、ギルドで取得講習会

が開かれている。これは有料だし予約制だ。


 今まではデスるだけだし別にいいやと思い取得してこなかったが、ダンジョ

ン探索で死ねなくなった今は絶対に役にたつ。

 早速予約を取りにいった。


 「そのスキルですと一番近い日で3日後になりますね」

 「まだ予約取れますか?」

 「はい、大丈夫ですよ」

 「それじゃ3日後の予約をお願いします」


 3日後で良かった。タイミングが合わないと1月以上待たされる事もあるら

しい。


 「それとロックさん、以前オークションに出品依頼を受けた霊廟スライムの

  レアが落札されました」

 「結構早かったですね! いくらぐらいになりました?」

 「手数料を引きまして金貨23枚と銀貨8枚です」


 思ったよりも高く売れたようだ。ギルド様ありがとうございます!


 「金貨3枚と銀貨8枚だけ引き出してそれ以外は預けておきます」

 「かしこまりました。それではギルドカードをよろしいですか?」


 ギルドカードを渡すとギルド職員の人は手続きを行いに行った。


 このギルドカードは神様の誰かが作った物だと言われている。ギルドカード

の偽造はもちろん悪用もできないらしくどういう仕組みで動いてるのか誰もわ

からないのだとか。

 このカードを持った本人なら世界中どこのギルドでも引き出し可能な優れも

のだ。


 しばらくすると手続きが終わり職員の人が戻ってきた。


 「こちらになります。ギルドカードもお返ししますね」

 「はい、ありがとうございました」


 お礼を言うとカウンターから離れた。

 今日はゆっくりした事もあってお昼を過ぎた酒場はとても混みあっていた。

顔見知りに軽く挨拶しながら外へ出る。

 既に朝食兼、昼食を済ませた俺は初心者ダンジョンへと足を運ぶ事にする。


 少し前はデスれない事の弊害へいがいでまいってしまってたが、クロエ様とのごにょ

ごにょがあってから体の調子がすこぶる良い。思い出すだけでも赤面しちゃい

そう。

 その調子の良さもあって今は初心者ダンジョンのボス討伐を目標にしている。

ダンカンさんにもボスを狙うと話してあり、いつでも討伐に行けるように準備

だけはしてあった。



 初心者ダンジョンは特殊なんだ。最奥まで3階層しかない。他のダンジョン

と違い最奥まで道沿いに狩っていき、ボスで死に戻るというのがセオリー。


 ダンジョンのモンスターというのは不思議なもので自然とリポップしている。

死ぬ時に光る事からモンスターも死に戻りしてるんじゃないかなーとなんとな

く思ってる。

 ただしボスだけは違う。ボスは討伐後ハッキリとした時間はわかっていない

が少なくとも数時間はリポップしない。

 だから初心者ダンジョンでボスを倒してしまうと、ボス討伐後の転移門で外

に戻る事しかできなくなる。

 デスり狙いの初心者はデスれなくなっちゃうんだ。

 さすがに初心者と言えど、あの世界最弱モンスター第一位の呼び声も高いス

ライム相手じゃ100体いても死ねないからね。

 俺も以前はデスる事で体を回復させていたからわかる。初心者が1日でもデ

スれないのはとんでもなくつらい。


 初心者の皆は真面目なもので大抵が朝からダンジョンへ入り早めに死に戻る

人が多い。昼過ぎのこの時間に来たのもそのためだ。


 「ダンカンさん、今日はどんな感じ?」

 「おーロック来たか。今日は朝入った1人だけだからボスいっちまってもい

  いぞ」

 「さすがにもうデスッてるよね」

 「かなり時間経ってるからな。それにまだ死に戻ってなかったら中で鉢合わ

  せるだろ」

 「もうこの時間から入る人いないと思うけど、この後に人来たらボス討伐入

  ってるって言ってね」

 「任せとけ。それじゃ今日も頑張ってこいよ」



 初心者ダンジョンのボスは巨大スライムと呼ばれている。名前の通りでかい。


 ボスのいる部屋はダンジョンルールにより入れる人数が決まっている。4人

が入ると扉が閉まり他の人は入れなくなる。

 中に入った人は入った瞬間からデスるかボスを倒さない限り部屋から出られ

なくなる。

 4人は巨大スライムにプチプチッと潰されてデスり、次のデスり待ちの人が

入るって感じ。


 この巨大スライムはもう研究がされつくされていていくつかの弱点がおおやけにな

っている。

 火に弱い、巨大な体を貫き核まで届く武器を使う、囮を使う。


 火魔法だと一瞬で溶けて倒せるらしいけどそんなものは無理なので、松明を

振り回し戦意と巨大な体を削ってこのヤリで核をブスッといく予定だよ。


 囮を使うっていうのは、この巨大スライムは複数の相手を認識できないらし

い。それを利用して一人を追い掛けてる間にボコボコにする。

 ジャックに誘われて討伐を1度だけ経験した事があるが、その時はこの方法

で巨大スライムの後ろからめった刺しにしてやったよ。はっはっは。

 今回はソロだから囮はなしだね。



 ボス狙いなので全てのスライムを無視して進む。スライムは無視してもほと

んど追い掛けてこない。来れないが正しいかな。

 3階層まで何事もなく進み巨大スライム部屋の前までやってきた。


 ここまで誰にも会わなかったので先に入った初心者はもう死に戻ったんだろ

うと思い部屋に入る。


 「あちゃー」


 手を顔につけ天井を見上げた。




 初心者が巨大スライム相手に戦闘してた。かなりガチで。

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