世界のダンジョンから ~寿命以外で死なない世界では縛りプレイが最強だったようです~

さくら

第1章 初心者ダンジョン

第1話 俺の戦いはこれからだ!


 「スライムからレアゲット!」


 初めて霊廟れいびょうに来て、いきなりレアなんて今日はついてるなー。これを換金すれば数週間ぐらいは豪勢な食事に酒まで飲めそうだ。


 奇声をあげて喜んでいた俺は、後ろの通路からゆっくり迫ってきた片手剣を

装備したスケルトンに気づく事ができなかった。



 暗転していく視界。あーやっちゃった。




 「おー、いてて」


 視界が戻るとそこは見慣れた教会の礼拝堂。


 「ロックも今デスッたのか?」


 俺よりも少し背が高く年上のジャックが声を掛けてきた。


 「初霊廟に挑戦したんだけど後ろからバッサリやられちゃったよ」


 「はっはっは、まだ見習いのロックに霊廟のスケさんはきついだろ」


 「もう少し初心者ダンジョンで鍛える事にするよ。スライムからのレアで余

  裕もできたしね」


 「初霊廟でレアか!そりゃ目出度めでたい。酒場に来いよ。一杯おごって

  やる」


 「やったー!早速行こう」




 ここは酒場兼冒険者ギルド。

 ギルドではダンジョンで手に入る物を買い取ってくれたり、高価な物はオー

クションに出してくれたりする。もちろん手数料は掛かる。


 「見習いのロックが初霊廟でレアゲットしてきたぞー!」


 ジャックが酒場で叫ぶと酒場で飲んでた皆が次々にお祝いしてくれた。


 「やるじゃねぇか、坊主」「うぉおおおおおおおお」「いい気になるなよロ

  ック。だが、おめでとう」「うふふ、わたしが見込んだだけあるわね」


 バンバンッと肩とか背中とか叩かれて痛いが悪い気分じゃない。その後すご

い飲まされた。



 気づいたら死に戻りしてた。



 うわぁ酔っ払い過ぎたみたい。飲み過ぎでデスるとかちょっと恥ずかしい。


 「まーいっか。レアでしばらく余裕ができたし」


 楽観的に考えながら既に見慣れた道を宿まで歩いた。死に戻りで酔いが完全

めちゃったからね。


 宿に入ると宿のおばちゃんが迎えてくれた。


 「さっき他の冒険者から聞いたよ!霊廟でレア手にいれたんだってね。ほら

  、これ持って行ってお食べ」

 「ありがとう。おばちゃん!」


 部屋の鍵を受け取り借りっ放しのいつもの部屋へと向かう。後ろから「おば

ちゃんじゃなくお姉さんだよ!」と聞こえるがいつもの事だ。

 今日はもう寝て明日からまた初心者ダンジョン行こっと。



 ここは始まりの街セレン。初心者ダンジョンが近くにある事から始まりの街

と呼ばれている。

 しかしこの街の側にはアルメイダの霊廟、通称霊廟と呼ばれているダンジョ

ンもあるため初心者から上級者までが集まる街として栄えていた。


 その霊廟に挑戦し返り討ちにあったのが俺。名前はロック、13才で家を出

てこの街へやってきた。

 この街へ来てから1年少し経ち最近やっと街に馴染み始めたと感じている。


 「おやっさん、朝食頼むよ」


 こちらを見て無言でうなずく。宿のおやっさんは無口だが良い人だ。し

ばらくして出来上がった朝食を持ってきてくれた。


 「サービスだ」


 あの!滅多に口を開かないおやっさんがしゃべったああああ!


 「あ、あの!ありがとうございます!」


 おやっさんは手を上げそれに応え厨房へ戻って行った。


 「渋いなぁ。俺もあんな大人になれたらいいな」


 サービスで大盛りになった朝食を胃の中に片付けながらそんな事を考えてい

た。



 「それじゃ初心者ダンジョンに行きますかー。その前にっと」


 俺はいつもの如く彼女を呼び出す。


 「神様神様ー! 起きてますか?」

 「はーい、起きてますよー」


 目の前にはこの世界の神様ことクロエ様が現れる。神様というだけあって非

常に素晴らしいプロポーションをしていて目のやり場に困る。


 「神様!昨日、霊廟でレアゲットできました!」

 「あら、それは良かったわね。ご褒美になでなでしてあげましょう」


 なでなーでと言いながら俺の頭を優しく撫でてきた。は、恥ずかしい。


 「あっ!あと前から言ってるように、神様じゃなくクロエ様と呼ぶ事!」


 ぷんぷんしながら人差し指を立てて指摘してくる。


 「すみません!クロエ様」

 「わかればよろしい」


 ニッコリ笑いながらなでなでは止めない。

 このフレンドリーな方がこの世界を作り出した神様であらせられる。


 神様はどこにでもいる。困った時に呼べば手助けをしに現れてくれるし、昨

日は酒場でお酒を飲んでいた。

 あまり呼ばずにいると突然現れて、


 「な゛ん゛で゛よ゛ん゛で゛く゛れ゛な゛い゛の゛おおおおお」


 と驚かせてくる。とても寂しがりやさんなのだ。



 「霊廟は俺にはまだ早かったみたいです。なのでもう少し初心者ダンジョン

  に戻ろうと思います」

 「うんうん、自分の実力をしっかり把握する事も大事よ」


 初心者ダンジョンに通ってるだけでも生活は困らないどころか貯金すらでき

てるからね。


 「クロエ様、強くなるための良い方法ってありますか?」


 クロエ様はうなりながら考えている。


 「強くなるためってあまり聞かれないのよね。ロック君だから特別にヒント

  を出すけど誰にも教えちゃダメよ。絶対だからね!」


 念を押すクロエ様の言葉を、一言一句いちごんいっく聞き逃さないようゴクリと唾を飲み込む。



 「汝、死ぬ事なかれ」



 「それじゃまったねー」


 その言葉と共にクロエ様は消えていった。


 「汝、死ぬ事なかれ……か」


 この日から俺にとって急激に難易度の上がった生活が始まったのだ。

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