あやめ

こたろうくん

第1話

 全ては贖罪の為である。

 ”あやめ”、こんな名前しか与えることが出来なかった自らがどれだけ酷い人間なのかと、こうして剣を握り、振るう度に思い知る。


 一人、二人。鉄を弾き、刃を躱し、緊張感の内に剣を躍らせ肉を裂く。一人は転がし、二人目に止めを刺す。高まった感情がここに来て天井に頭を付ける。慈悲を求めるその目を、淡い期待を裏切る罪悪よろこびが、自らに剣を振らせる。


 命乞いをする声が鼓膜を刺激する、その声が自らを突き動かす。

 止めてくれ、止めてくれ、その無様な声をそれ以上聴かせないでくれ。自分を止められなくなる、止めてくれ。自分が抑えきれなくなる。


「助けてくれ――!」


 殺したくて、殺したくて仕方が無くなるから。止めてくれ。

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