第52話 奇跡の物質
~前回のあらすじ~
写真には写らない美しさがあるから
リンだ! リンだ! リンだ!
*
アノンは熟考した。必ず、かの暴飲暴食の長を満足させなければならぬと決意した。アノンには料理がわからぬ。アノンは、
……何があったか軽く説明しておこう。
ロッジで自分がサヨナキドリのフレンズと知ったアノン。
次は何かしたいことを探す為に図書館へと向かった。
そこに待ち受けていたのは数時間前にロッジで会った博士と助手。
2人きりの時間を邪魔された事に文句こそ言わないものの、若干ながら腹を立てた長達に料理を作るように命じられてしまう。
制限時間は「砂が落ち切るまで」と、砂時計を立てる博士に対し、アノンが取った行動とは――?
「どうしたのですか? 早く取りかかるのです」
サラサラと流れ落ちる砂時計の前で立ち竦むアノンに声をかける博士。
机の上には、カレーの材料と必要な調理道具が揃えられている。
時間内に完成するのであれば、それで良し。完成しないなら、料理を教えるという口実で専属の料理人に仕立てあげる算段だ。
ルールを決める側の優位性を生かした作戦っ……!
圧倒的っ……!圧倒的賢さっ……!
「えっと、砂が落ち切るまでは待ってくれるんですよね?」
何の疑いもなく砂時計を倒すアノン。
類を見ない天然である。
しかし、砂時計を動かしてはならないというルールは設けられていない。
砂は以降落ちる訳もなく、制限時間というルールは事実上、無に帰した。
悠久にも等しい制限時間。
厨房を統べるは一人の少女。
刻まれるは時か、野菜か――
「まだ慌てるような時間ではないのです」
「ええ、多少時間がかかっても完成度の高い料理なら我々に損はないのです」
調理という工作が、長の思惑と交錯する一瞬。
素人の思い付きで加えられるアレンジによって越えられる一線。
真に知ろうとすべきは何だったのか?
それは調理と呼べる物だったのか、はたまた超理とでも呼ぶべきだったのか、答えを知る者など何処にもいない。
殺伐とした図書館に絶品中華料理が!!
\苺と生クリームの絶妙な甘さ/
「「何ですかこれは!?」」
「一生懸命やったらこうなったんですぅ……」
何をどうやったかは不明であるが、机の上には『肉汁たっぷり!美味しいハンバーグの作り方』という本が開かれている。
安定と信頼の民味書房刊行ではあるが、書いてある内容は思ったより無茶苦茶ではない。
文字が読めないのに頑張りすぎたのが悪かったのか、見守るだけで手伝わなかった
なお、完成した料理(?)は博士と助手が仲良く半分にして完食し、結果としてダブルノックアウトが記録された。
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