第103話 青葉、会長になる③~私、自信ないよお~

♪♪♪~


 俺は珍しく夜の9時過ぎまで机の前に座って色々とやっていたけど、そろそろ風呂に入ろうと思っていたら俺のスマホに着信が入った。電話の主は青葉あおばだった。

「もしもし」

『・・・たいせー、私、自信ないよお・・・』

「はあ?」

『私、やっぱり生徒会長なんて無理・・・』

「ちょ、ちょっと待てよ、何を言い出すんだ?」

『だって私、小学校でも中学校でもやった事ないんだよ・・・クラスの学級委員なら小学校の時にやった事はあるけど、それとは全然違うってのは分かるけど、どうすればいいのか分からない・・・』

「・・・・・」

『たいせいー、やっぱり私、明日登校したらすぐに中富なかとみ先生からん先生のところへ行って辞退するって言ってくる・・・』

「・・・青葉、お前、ホントにそれでいいのか?」

『だってー・・・』

「折角、史上初の1年生女子の生徒会長として清風山せいふうざん高校の歴史に名前を残せるチャンスを棒に振ってもいいのか?」

『チャンスも何も、やった事がないから自信ない・・・』

「やった事がない、自信がない、だから辞退します。それじゃあ、あまりにも短絡すぎないか?」

『・・・・・』

「青葉さあ、お前の校内での評判を知ってるか?」

『知ってるも何も、私は校内では完璧超人とまで呼ばれてるのは知ってるよ。でも、私は完璧超人じゃあないっていうのは大成たいせい自身が一番良く知ってるはずだよ』

「・・・学力テストでは他に追従を許さない。スポーツテストでも、その道のスペシャリストには敵わないけど総合ではトップ。バスケもソフトボールも水泳も周囲が感嘆する程の実力。その上、紅葉山もみじやま先輩と校内の人気を二分する美少女とも呼ばれていんだから、誰から見ても非の打ち所がない。まさに男子から見たら自分の彼女にしたくなる理想の女の子、女子から見たら自分たちの理想の鏡だ」

『その串内くしない青葉さんは、大成がいないと毎朝起きられないなんて恥ずかしくて言えないよ』

「そんなのは誰も知らないんだから、黙っていればいい!お前は清風山高校の中で完璧超人であればいいんだ!」

『そんな事を言ったら、大成の方が凄いよ。『駒里こまさと大成最強伝説』を知らない人は校内にはいないよ』

「あんなのは偶然の産物だ」

『どうして偶然だと言い切れるの?』

「野球部はともかく、サッカー部とやった時は本当のPK対決だったら負けたかもしれない。陸上部の時だって中距離、長距離だったから俺が圧勝したように見えるけど、短距離だったら俺は負けたし、やり投げとか400mハードル、砲丸投げとかだったら勝負にならん。水泳部の時だってバタフライや背泳ぎだったら絶対に負けた。テニス部とは勝負そのものが中止になったけど、俺は力一杯ラケットを振り回す事しか出来ないからコートに球を入れる事が出来なかったはずだ。それはバドミントンも同じだ。結果的に俺は全部勝ったから最強とか言われてるし、その後に野球部を始め、信じられないような出来事が続いたから誰も勝負を挑まなくなったけど、もし弓道部とかアーチェリー部、さらには体操部とかラグビー部が挑んできたら俺は素人だからぜーったいに勝てる訳がない。だから偶然が重なった結果が『駒里大成最強伝説』だ」

『でも、大成の最強伝説は実像だけど、私の完璧超人は虚像よ』

「青葉さあ、俺は将棋部相手に将棋をやると5回に1回勝てればいい方なんだぜ。だから将棋では最強伝説が通用しないって事は当麻とうまや将棋部の関係者なら誰もが分かってるんだぞ。しかも囲碁はルールすら知らないから勝負する以前の問題だ。その事は囲碁部の連中なら全員が知っている。だけど、俺を最強だとか言ってる奴らはみーんなそういう事実には見向きもしないで、ただ単に運動部の連中との勝負だけの事を言ってる。俺の方が虚像だ」

『それじゃあ逆に聞くけど、その最強伝説が途絶えたら大成はどうするの?』

「べっつにー。それならそれで構わない。俺としては『災いをもたらす男』などという迷惑この上ない伝説が無くなるから逆に好都合だ」

『・・・・・』

「・・・あおばー、お前さあ、ひょっとして?」

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