俺は会長の幼馴染兼秘書兼下僕兼ボディーガード兼・・・兄貴??

黒猫ポチ

俺は会長の幼馴染?

第1話 大成、青葉の家へ朝から押しかける

“おい起きろコラ、おい起きろコラ、おい起きろコラ・・・”


 うー、もう少し寝かせてくれ・・・じゃあない!俺は飛び起きた。

 時刻は午前6時ちょうど。俺は趣味の悪い目覚まし時計を止めて静かになったのを確認してため息をつくと、ベッドから起き上がった。

 まったく、なのだが、捨てられないのも事実だ。

 カーテンを開けると朝日が眩しい。俺は自分の部屋から出るとリビングへ行った。

「かあさーん、飯は出来てる?」

「あら?思ったより早かったわね。もう行くの?」

「ああ。どうせ俺がやる事になるからな」

「それって昨日の夕飯の時にも言ってたわよねえ。朝からアツアツですねえ」

「何がアツアツなんだ?」

「またー、とぼけちゃって」

「・・・・・」

 母さんったら、ニヤニヤしながら俺に話すのは勘弁してくれよお。完全に誤解しているぞ。それにテレビをの婆ちゃん、新聞をの爺ちゃんが明らかに聞き耳を立ててるんだからさあ。

大成たいせい、お昼はどうするの?」

「ん?うちで食べるぞ」

「その後に道場へは行くの?」

「そのつもりだけど」

「一緒に行くの?」

「そのつもりだけど」

「先週は行ってないからジイが『今日は来い』って言ってたわよ」

「先週は俺はいくつもりだったけど、んだから俺のせいじゃあないぞ。その前だってそうだったんだからさあ。今日は俺だって行きたいよ」

「まあ、あんたの性格じゃあ、頼まれたら断れないもんねー。母さんも仕方ないと思ってるけど、ジイはあんたが来るのを楽しみにしてるんだから、毎回行ってあげてね」

「はいはい、分かってますよ」


 俺はご飯を食べ終わると着替えるために一度自分の部屋へ戻った。

 明日は新1年生の入学式だ。でも、俺は生徒会役員として入学式では受付担当を行う事になっているし、生徒会三役は入学式そのものに出席する。今日は会場設営もあるし入学式の確認作業もあるので、みんなより1日早い登校なのだ。当然、学校へ行くのだから制服に着替えた。

 でも・・・着替え終わってから窓の外を見たけど

「・・・ったくー・・・まあ、いつもの事だが」

 俺は自分の机の上にあるパソコンからUSBを抜き取るとそれをブレザーのポケットに入れ部屋を出た。


「行ってきまーす」


 俺は玄関の扉を開けて外に出た。俺の家の玄関は道路から見たら建物の横にあり、目の前は塀だ。まあ、塀と言ってもブロック塀が2段ほど地上部に出ている程度だから、膝の少し下あたりまでしかない。建物の敷地境界線のような物だし、この辺りでは半分以上の家がそのような物がある事自体が珍しいのだから、これはこれでいい。でも、俺はこの塀を跨いで隣の家の敷地に足を踏み入れた。

 そう、俺は隣の家に用があった。正確には隣の家に住んでいる子の所へ行く用事があるのだ。


♪ピンポーン♪


 俺は玄関の呼び鈴を鳴らした。

 さすがにこの時間は早かったか?一瞬、俺は不安になったがそれは杞憂に終わった。呼び鈴を鳴らして5秒もしないうちに玄関が開いたからだ。

「あらー、大成君じゃあないの?早いわねえ」

「あー、おばさん、おはようございます。青葉あおばは?」

「うーん、まだ起きてこないのよねー。まあ、とりあえず上がりなさいよ」

「じゃあ、お邪魔します」

「なーに遠慮してるのよお!知らない家じゃあないんだから、もっと堂々と入ってきなさい、お・に・い・さ・ん」

「おばさーん、俺はあいつの兄貴じゃあないですよー」

「あらー、照れなくてもいいのよ。それともカ・レ・シ・サ・ンって呼んで欲しいのかな?」

「だーかーら、朝から茶化さないでくださいよお」

「まあ、それは冗談だから。それより遠慮しないで上がりなさい」

「別に遠慮しているつもりはないんですけど・・・」

 そう言いつつ、俺は隣の家の玄関に入り、扉を閉めた。おばさんはニコニコ顔で俺を家の中に入れると、そのまま俺を先導するような形で階段を上っていった。

「あのー、いくら何でもそろそろ青葉を起こした方がいいのかなあ」

「まあ、その辺りは君に任せる!おばさんは一切関与しません」

「ちょ、ちょっとおばさん!」

「か・ん・よ・し・ま・せ・ん」

「はー・・・分かりました」

 はああ・・・母さんは勘違いしてるし、おばさんは全部お任せだし、大人ってのは、どうしてこうも自分勝手なんだ!?ちょっと勘弁して欲しいぞ、ったくー。

「じゃあ、頼んだわよー」

 おばさんは青葉の部屋の前で俺にそう言ってニコッとしたかと思うと、一人リビングの方へ消えて行った。残された俺はため息をつくしかなかった。


『青葉の部屋』


 この部屋のドアには、部屋の主が誰なのかを示した小さな札が掲げられている。一見すると可愛い文字ではあるが、その主が字と比例して可愛いかどうか・・・いや、青葉を「可愛い」「普通」「それなり」の三択で答えろと言われたら、100人中100人が間違いなく「可愛い」と答えるのには自信があるけど、あいつのを知ったら幻滅する奴が連発だぞ。


“トントン”


 俺は扉をノックしたが、予想通りではあるが何の反応もない。


“トントン”


 俺はもう1回、同じように扉をノックしたが、やはり何の反応もなかった。

「・・・・・」

 俺はもう毎回のパターンになったが、無言のまま扉を開け、部屋の中に入ると扉を閉めた。

 そこにあったのは、いつもの見慣れた風景であった。一見すると非常に綺麗に掃除されていて整理整頓が行き届いた女の子の部屋・・・ではあったが、が、この部屋の主が使っているベッドなのだ!


「はーーーーー・・・」


 俺がこの部屋の主が使っているベッドの前で、こうやってながーいため息をつくのは何度目だ?十回では済まないぞ。百回?いや、何年目に突入したんだあ!?仮に登校日を毎年200日だと仮定して、そのうちこうやってため息をついた日を数えて行くと・・・やーめた、真面目に数える方が馬鹿馬鹿しい。

 相変わらずではあるが、物凄い寝相の悪さである。お気に入りのクマちゃんの人形を抱き枕にして抱えていて、ほぼ毎回の事ではあるが背中が出ていて・・・おい!勘弁してくれよお・・・見えてるぞ、そ、その、パ、パン・・・い、いや、固有名詞を言うのはやめておこう・・・水色か・・・わーーー!!!だ、男子たるもの、そんな事に興味を持ってはならぬぞ!だいたい、誰かが自分の部屋に入ってきて隣に立っているのに全然気付かないってどういう事だ?幼稚園児ならともかく高校2年生だろ!?少しは成長しろよ!

 成長かあ・・・まあ、たしかに女の子らしくなったのは認めるけど、どう見ても今のこいつの姿は幼稚園児か小学校低学年とたいして変わらんぞ!

 はああ・・・ボヤいても仕方ない。それより青葉のやつ、ちゃんと作ってあるのか?おそらく机の上にあった紙がそうだと思うけど・・・

 これだな・・・えーと・・・


『おはようございます。創立70周年という節目の年に伝統ある清風山せいふうざん高校に御入学された新入生のみなさん、おめでとうございます。


以上を持ちまして、在校生代表の挨拶とさせて頂きます。

学校法人桑園マルベリーガーデン私立清風山高校生徒会長 2年 串内くしない青葉』


 おい!お前、まさかとは思うが、これで終わりじゃあないよな!?それとも真ん中の文が思いつかなかったのかあ!?

 い、いや、違う・・・絶対に青葉は俺が挨拶文を作ってくると信じてるんだ。正しくはんだ。俺は会長の秘書か?それとも便利屋か?知恵袋か?

 あー、知恵袋という表現は撤回だ。あいつは主席入学者にして学年に10人しかいない成績優秀特待生、昨年1年間のテストでは年間を通して学年総合1位から滑落しなかった程の奴だ。それに引き換え俺は・・・だから知恵袋という表現はおかしい。


 でもなあ、いくら何でもおかしいぞ!?どうしてこの時間になっても目覚まし時計が鳴らないんだ?

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