君、もしかして俺のウンコ?
あれっくす
第1話「俺のウンコは美少女だった」
『ウンコ』とは人類の至宝である。
ウンコをしない人間はこの世に存在しない。薄汚れた爺さんだって、今をときめくイケイケギャルだって、生まれたばかりの赤ん坊だって、皆等しく茶色いうんこをひねり出す。うんこの前に、人類は平等なのだ。胡散臭いアイドルが「えー、わたしアイドルですからー、トイレとか行かないですぅー、女の子はトイレに行かないんですよー」とかほざいていても、その女は絶対にトイレに行っているし、日ごろから茶色い物体をひり出しているのは疑いようのない事実なのである。
俺はウンコが好きだ。
ウンコを愛し、ウンコに愛されている。
茶色いウンコは元気の証。
形の良いウンコは幸せの証。
俺がこのクソッタレな世の中(駄洒落じゃないよ)を生きていく理由は、それこそウンコに他ならない。
俺はウンコをするために生を受けたと言っても過言ではない。
それほどまでに、俺とウンコの絆は深いのだ。
と。
そんなわけで、今日も今日とて、俺は朝からトイレに入り、便器に腰かける。
朝からウンコをするのは俺のルーティンだ。
毎日ヨーグルトを食べているから腸内環境に問題なし。
野菜、肉、魚……健康なウンコをするためには、健康な食事が必要である。特に食物繊維は大事だ。レタスとかいいぞ、良いウンコが出る。
「くぬぬ……ふんっ!!」
ぐっとお腹に力を入れ、ゆっくりと息を吐きつつ、踏ん張る。
すると、ふわりと下腹部の辺りに何とも言えぬ快感が広がる。
ああ、サイコーだ……。
肛門括約筋が弛緩し、固体が直腸を通り抜けるこの感覚。
これを気持ちいいと感じない人類はいないのではないか、とすら思う。
『ウンコを出すのは気持ちいい』。
これは人類の共通認識だ。最近の俺は、ここに世界平和のヒントがあるのではないか、と睨んでいたりするのだが、まぁそれはおいておいて。
「あー……スッキリした……」
恍惚とした表情で、排泄後の余韻に浸る俺。なんと心地の良い瞬間だろう。天国は今この場所に存在するのだ。
「……ふぅ。さて、と」
ある程度余韻を堪能し終えた俺は、トイレットペーパーでおしりを拭き、便器の中に紙を捨てる――と、その前に。
立ち上がり、便器の中を覗き込む。
自分のウンコはしっかりと見て確認するのが、俺の日課なのだ。
「おおぉ……今日もいいウンコだ……」
便器の中に堂々と鎮座する、茶色い至宝。
さすが俺のウンコだ。思わずウットリである。
色、形、艶、香り……どれを取っても素晴らしい。
これほど美しい物体がこの世に存在していいのだろうか。
この完ぺきなウンコの前では、モナリザもミロのヴィーナスも色あせて見えてしまう。(個人の感想です)
「……流すのが惜しいほど完ぺきなウンコだ。これほどのウンコは一か月ぶりじゃないか?」
せっかくだから写真も撮っておこう。パシャリ、と。
よしよし。なかなか綺麗に取れているじゃないか。最近のスマホは画質が良くて助かるな。
これで俺の『マイ・ウンコ・ライブラリ』もさらに潤うことだろう。
「……それじゃあ、写真も撮ったし。名残惜しいけれど……」
そろそろこのウンコを下水道へと送るとしようか。
そう思って水を流そうとした―――そのときだった。
驚くべきことが起こった。
「――っ!?」
なんと!!
俺のウンコが金色に輝き始めたのだ!!
「なんだ!? いったい何が起こってるんだ!?」
ウンコが光るなんて、さすがの俺でも初めての経験だぞ!?
あまりの光量に眼が眩む!!
もしかして爆発するのか!? 俺のウンコが爆発するのか!?
爆発性のある食べ物なんて食べてないぞ!!
「ッ!!!」
顔を腕でかばい、爆発に備える俺。
「……」
10秒経過。
「…………」
30秒経過。
「……あれ? 何も起きない?」
どうやら俺のウンコが爆発しなかったようだ。
薄く目を開けてみると、もうウンコは光を放っていないようだった。
ほっと一安心して、改めて自分のウンコを確認しようと目を開け、便器のほうを見る。
―――便器の上には、全裸の女の子が座っていた。
「……は?」
あまりの急展開に理解が追い付かない。
下半身を丸出しにしたまま、呆けた顔で女の子を見つめる。
とても可愛らしい女の子だ。
艶やかな長い茶髪に、クリっとしたまん丸の瞳。
歳は十代中ごろに見える。
まごうことなき美少女である。
「……君は、誰だ?」
下半身を隠すことも忘れ、俺は少女に問いかけた。
すると彼女はニコリと笑って言った。
「初めまして!! ようやく会えましたね、ご主人様!!」
「ご主人様??」
「はい!!」
「……ちょっと待ってくれ。なんで俺が君のご主人様なんだ?」
「だって、わたしは『あなたのウンコ』なんですから!!」
……悪い夢を見ているのかもしれない。
だって、普通あり得ないだろ?
『自分のウンコが美少女になった』だなんて。
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